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第2話 メアリに家を案内する
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「では、お邪魔しまーす」
「はい、どうぞ」
とりあえず彼女をリビングに連れていき座ってもらった。お茶を出して少し休憩してもらう。
「おおお、ご主人様にお茶をお出ししてもらうなんて! 申し訳ありません!」
「これぐらい構わないよ。それよりこれからの事を話そうよ」
「はい、ご主人様がお望みなら」
そうして僕達はこれからの事を話し合うことにした。
「えっと、メアリちゃんは家事とか得意なのかな?」
「はい。大抵の家事ならできますよ」
「じゃあさ、食事を作ってくれないかな? 僕も少しなら出来るけど分担してくれると助かるよ」
「お安い御用です! 任せてください! 腕によりをかけて作りますからね」
メアリは自信ありげに胸を張った。
「それとさっきの話だけど、メアリちゃんは学園の生徒にもなるんだよね? 年は僕と同じぐらいかな。同じ学年になるのかな? それと名前は本名?」
「そうですね。メイドは仕事ですが、そのお給金で学園に通うつもりでいます。学年は一年生です。ご主人様と同じですね。名前については……今は秘密にしておきましょう」
「本名を明かせない理由があるの? もしかして訳有りだったりするのかな」
「おおお、名前なんてどうでもいいじゃないですか。わたしの事はメアリと呼んでいただければそれで結構です」
「分かったよ。メアリ」
気になるけど本人がそう言うのであれば仕方がない。深く詮索するのは止めよう。女の子の秘密は無理に聞き出す物ではないのだ。親にそう教わった。
話が終わってメアリは元気よく立ち上がった。
「それではさっそくお仕事を開始いたしますね」
「えっ、もう? まだ来たばかりだしゆっくりしていてもいいよ」
「こういうことは早い方がいいんです。それに善は急げともいいますしね」
「じゃあ、お願いするよ」
「はい、行ってきます」
そう言って彼女はエプロンドレスを揺らしながら部屋を出て行こうとして、廊下を見て引き返してきた。
「どこへ行けばいいんでしょう。この家の事はよく分からなくて」
「ええ!?」
「前の家はこうじゃなかったんですよ。部屋を出ればすぐに壁とドアで行き止まりでしたから」
「分かった分かった案内するよ。まずは家の中を覚えてもらわないとね」
「は~い、よろしくお願いします」
僕は彼女を連れて玄関へと向かった。
「まずはここは玄関。来たところだから覚えてるよね?」
「はい、それはもちろんです!」
「次にここがトイレ。そしてここがキッチン」
「な~るほど。分かりました!」
メアリに家の間取りを説明しながら二人で歩いていく。話しているうちにだんだんと彼女と一緒にいる緊張も抜けてきた。
話してみるとどこにでもいる同年代の女の子なのだ。
「どこにでもある普通の家でしょ?」
「いえいえ、綺麗なんでびっくりしました。それにまさかキッチンなんて言葉をリアルで聞くとは思いませんでした」
「そんなに驚くこと?」
「だってわたしの住んでいたところはもっと汚かったですよ。まさかゴミが溜まっていないなんて」
「まあ、掃除はしてるからね。メアリは前はどんなところに住んでいたの?」
「思いださせないでください。でも、本当にここは綺麗なお家ですよ。ご主人様は掃除も上手なのですね」
「まあ、慣れているからね」
一人暮らしをしているとこうした事も習慣になってしまう。
「でも、こんな広いお家だと掃除も大変そうですけど」
「そうでもないよ。一日あれば終わるから」
「ご、ご冗談ですよね」
「本当だけど」
「…………」
メアリは信じられないという顔をしていた。
「こ、こんなに部屋が多くて……?」
「普通だよ」
「普通ですか?」
「うん」
「これが普通……」
そんな話をしているうちにリビングへと戻ってきた。
「ここがリビング。そしてここが浴室。最後にここが僕の寝室」
「なるほど、とても良くわかりました」
メアリは満足げに微笑んでいた。これでひと通りの説明は終わったかな。
「他に聞きたい事はある?」
「はい、あります」
「何だい?」
「あの、ここに来る途中に気が付いたのですが、あれは何でしょうか?」
「ん?」
彼女が指差したのは庭の方だった。そこには小さな家庭菜園がある。
「ああ、あれはただの趣味で作っている物なんだけどね。家庭菜園だよ」
「趣味で家庭菜園!?」
メアリは驚いているみたいだ。まあ、確かに珍しいかもしれない。
「男の趣味としては変だったかな?」
「いえ、そんな事はありませんが……驚きです。ご主人様も食べる物に苦労されているんですか? それで野菜作りを始めたとか……」
「う~ん、ちょっと違うかな。自分で育てた野菜を食べるのが好きなんだよね。あと、野菜を見ていると落ち着くんだ。子供みたいで可愛いでしょ?」
「え……!?」
メアリが凄く不審そうな目をしていたので僕は慌ててしまった。
「あれ? 何か変な事言ったかな? 忘れて」
「いえ、食べ物に食べる以外の見え方があるなんて驚いただけです。そう言われてみると可愛いのかもしれませんね」
「そ、そうだよ。可愛いよね」
何とか誤魔化せたようだ。良かった。
「それじゃあ、案内するところはこれでだいたい全部かな」
「はい、ありがとうございました」
「後は自由にしてね。僕は自室にいるから用があったら呼んでくれればいいよ」
「分かりました。わたし、頑張ります!」
「ほどほどにね。期待しているよ」
そうして僕達は別れた。
「はい、どうぞ」
とりあえず彼女をリビングに連れていき座ってもらった。お茶を出して少し休憩してもらう。
「おおお、ご主人様にお茶をお出ししてもらうなんて! 申し訳ありません!」
「これぐらい構わないよ。それよりこれからの事を話そうよ」
「はい、ご主人様がお望みなら」
そうして僕達はこれからの事を話し合うことにした。
「えっと、メアリちゃんは家事とか得意なのかな?」
「はい。大抵の家事ならできますよ」
「じゃあさ、食事を作ってくれないかな? 僕も少しなら出来るけど分担してくれると助かるよ」
「お安い御用です! 任せてください! 腕によりをかけて作りますからね」
メアリは自信ありげに胸を張った。
「それとさっきの話だけど、メアリちゃんは学園の生徒にもなるんだよね? 年は僕と同じぐらいかな。同じ学年になるのかな? それと名前は本名?」
「そうですね。メイドは仕事ですが、そのお給金で学園に通うつもりでいます。学年は一年生です。ご主人様と同じですね。名前については……今は秘密にしておきましょう」
「本名を明かせない理由があるの? もしかして訳有りだったりするのかな」
「おおお、名前なんてどうでもいいじゃないですか。わたしの事はメアリと呼んでいただければそれで結構です」
「分かったよ。メアリ」
気になるけど本人がそう言うのであれば仕方がない。深く詮索するのは止めよう。女の子の秘密は無理に聞き出す物ではないのだ。親にそう教わった。
話が終わってメアリは元気よく立ち上がった。
「それではさっそくお仕事を開始いたしますね」
「えっ、もう? まだ来たばかりだしゆっくりしていてもいいよ」
「こういうことは早い方がいいんです。それに善は急げともいいますしね」
「じゃあ、お願いするよ」
「はい、行ってきます」
そう言って彼女はエプロンドレスを揺らしながら部屋を出て行こうとして、廊下を見て引き返してきた。
「どこへ行けばいいんでしょう。この家の事はよく分からなくて」
「ええ!?」
「前の家はこうじゃなかったんですよ。部屋を出ればすぐに壁とドアで行き止まりでしたから」
「分かった分かった案内するよ。まずは家の中を覚えてもらわないとね」
「は~い、よろしくお願いします」
僕は彼女を連れて玄関へと向かった。
「まずはここは玄関。来たところだから覚えてるよね?」
「はい、それはもちろんです!」
「次にここがトイレ。そしてここがキッチン」
「な~るほど。分かりました!」
メアリに家の間取りを説明しながら二人で歩いていく。話しているうちにだんだんと彼女と一緒にいる緊張も抜けてきた。
話してみるとどこにでもいる同年代の女の子なのだ。
「どこにでもある普通の家でしょ?」
「いえいえ、綺麗なんでびっくりしました。それにまさかキッチンなんて言葉をリアルで聞くとは思いませんでした」
「そんなに驚くこと?」
「だってわたしの住んでいたところはもっと汚かったですよ。まさかゴミが溜まっていないなんて」
「まあ、掃除はしてるからね。メアリは前はどんなところに住んでいたの?」
「思いださせないでください。でも、本当にここは綺麗なお家ですよ。ご主人様は掃除も上手なのですね」
「まあ、慣れているからね」
一人暮らしをしているとこうした事も習慣になってしまう。
「でも、こんな広いお家だと掃除も大変そうですけど」
「そうでもないよ。一日あれば終わるから」
「ご、ご冗談ですよね」
「本当だけど」
「…………」
メアリは信じられないという顔をしていた。
「こ、こんなに部屋が多くて……?」
「普通だよ」
「普通ですか?」
「うん」
「これが普通……」
そんな話をしているうちにリビングへと戻ってきた。
「ここがリビング。そしてここが浴室。最後にここが僕の寝室」
「なるほど、とても良くわかりました」
メアリは満足げに微笑んでいた。これでひと通りの説明は終わったかな。
「他に聞きたい事はある?」
「はい、あります」
「何だい?」
「あの、ここに来る途中に気が付いたのですが、あれは何でしょうか?」
「ん?」
彼女が指差したのは庭の方だった。そこには小さな家庭菜園がある。
「ああ、あれはただの趣味で作っている物なんだけどね。家庭菜園だよ」
「趣味で家庭菜園!?」
メアリは驚いているみたいだ。まあ、確かに珍しいかもしれない。
「男の趣味としては変だったかな?」
「いえ、そんな事はありませんが……驚きです。ご主人様も食べる物に苦労されているんですか? それで野菜作りを始めたとか……」
「う~ん、ちょっと違うかな。自分で育てた野菜を食べるのが好きなんだよね。あと、野菜を見ていると落ち着くんだ。子供みたいで可愛いでしょ?」
「え……!?」
メアリが凄く不審そうな目をしていたので僕は慌ててしまった。
「あれ? 何か変な事言ったかな? 忘れて」
「いえ、食べ物に食べる以外の見え方があるなんて驚いただけです。そう言われてみると可愛いのかもしれませんね」
「そ、そうだよ。可愛いよね」
何とか誤魔化せたようだ。良かった。
「それじゃあ、案内するところはこれでだいたい全部かな」
「はい、ありがとうございました」
「後は自由にしてね。僕は自室にいるから用があったら呼んでくれればいいよ」
「分かりました。わたし、頑張ります!」
「ほどほどにね。期待しているよ」
そうして僕達は別れた。
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