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第8話 狙われた学校

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 僕達がそうして学校の廊下を歩いていた時だった。いきなり外からヘリコプターの音が近づいてきたかと思うと、メアリに飛びつかれて押し倒されてしまった。

「ご主人様! 伏せてください! 早く!!」
「へ!?」

 僕が訳が分からずにいると、次の瞬間には凄まじい爆発音が響き渡った。
 僕はメアリに押し倒されたおかげで無事だったが、いったいなにが起こったのか。
 周りを見ると生徒達も突然の事態にパニックになっていた。悲鳴を上げながら逃げ惑う者、腰を抜かす者、泣き出す者と様々だった。
 そして、僕達の目の前に武装したロボットが現れた。

「なんだあれ!?」

 まるで特撮映画かアニメに出てくるようなロボットがそこに居た。しかも一体だけではない。次々と現れては生徒達に襲いかかる。

「私のせいなんです。私が学校の警備システムのスイッチを切ったから……」
「何でそんな事を……」

 のんびり話している時間はない。逃げないと。僕達ではあれと戦えない。
 敵も捕まえようとするだけで殺す意思は無いようだ。残念だけど助ける事はできない。

「行くよ!」
「でも……」
「いいから来るんだ!」

 僕はメアリの手を取って立ち上がらせると、彼女と一緒に走った。とにかく今は逃げるしかない。
 だが、敵はそれだけではなかった。校舎の窓を破って大量の機械の人形が飛び込んできたのだ。それも人間大の二足歩行のやつが。
 それらは銃のような武器を持っていて僕たちを狙って撃ってきた。

「きゃあ!」
「危ない!」

 僕は咄嵯の判断でメアリを抱きかかえると近くの教室に飛び込んだ。
 間一髪だった。僕たちが隠れるとすぐに銃弾が撃ち込まれる音が響いてくる。
 攻撃されないと思った僕の判断は甘かったようだ。

「大丈夫?」
「はい、ありがとうございます」

 メアリは頬を染めている。どうやら怪我は無さそうだ。僕は安堵すると教室の中を見回す。何か武器になる物はないだろうか。
 僕が探しているとメアリが話しかけてきた。

「ご主人様は知っていたんですね」
「何を?」
「私がスパ……」
「話は後で聞くよ。今はこの状況を打破する方法を考えよう」
「はい」

 ここは空き教室になっているようで誰もいない。みんなはどうしたのだろうか。避難したのか敵に捕まったのかもしれない。
 この学園には優秀な生徒達が集まっているからきっとテロリスト達の狙いは人質なのだろう。
 僕たちは息を殺して様子を伺うしかなかった。
 しばらくして銃撃の音が止むと扉を開けて敵のロボットが入ってきた。僕たちに狙いを定めてゆっくりと近づいてくる。

「ご主人様、安心してください。私が止めます」
「え? 止めるってどうやって」
「こうやってです」

 メアリは堂々と敵ロボットの前に立った。僕は慌てるが彼女は平然としていた。

「ご主人様、私の後ろに」
「う、うん」

 僕が後ろに下がるとメアリはロボットのカメラを正面から見つめ返した。ロボットは何かを伺うようにレンズを回していたが、やがて足を回して教室を出ていった。
 僕達は安心の息を吐く。

「ふう、まだ私の事を味方だと認識してくれたようです」
「メアリ、どういう事なんだ?」
「ご主人様はとっくにご存知なんでしょう? 私はスパイなんです」
「やっぱり、そうだったのか」
「どうして気づいたんですか? ちゃんとメイドしてたつもりだったんですけど」
「そりゃあ、何か不自然だったし」
「ああ、やっぱりそうなんですか」

 メアリはがっくりと肩を落とした。僕は慌ててフォローする。

「でも、メアリはちゃんとメイドしてたよ。変だと感じたのはそれ以外の事でだったし」
「やっぱりご主人様は優しいですね。だから私もこれは何か違うと思ったんです。それにこんな実力行使に出るなんて。平和のための作戦が鼻で笑っちゃいますよね」

 メアリは寂しそうに笑う。彼女にはきっと頼れる者が必要なんだ。そして、それは僕以外にはありえない。
 だって僕はメアリのご主人様なのだから。

「じゃあさ、この学校から奴らを追い払う手助けをしてくれないか。今度こそ信じる平和の為に活動しようよ」
「でも、相手は武装した組織ですよ。私達では敵いません」
「そんなのやってみなくちゃ分からないさ。それに、僕はこの学校でこれからも君と暮らしたいんだ。その為なら何だってやるさ」

 僕はメアリに手を合わせる。彼女はしばらく悩んでいたが、やがて仕方ないという風にため息をついた。

「分かりました。そこまで言うならお手伝いします。ただ、一つお願いがあるのです」
「お願い?」
「はい、この作戦の間は私の事はメアリと呼んで欲しいんです」
「ああ、分かった。仕事とプライベートは別だもんね」

 僕にはよく分からないけどそれがきっと彼女が日常に戻るには必要な事なのだろう。

「よし、行こうかメアリ!」
「はい、ご主人様」

 こうして僕らの戦いが始まった。
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