10 / 10
第10話 屋上の戦い
しおりを挟む
屋上には静かに風が吹いていた。
ひとまずは敵はいないようで僕達は一息ついた。
「ご主人様、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だけど、ここからどうすればいいんだろう? 助けを待つしかないのかな」
僕には戦う力も何も無い。ヒーローのようにテロリストを倒したりはできないのだ。
するとメアリがポケットから携帯端末を取り出した。
「ひとまずこの学校のセキュリティを元に戻しておきますね」
「え? できるの?」
「はい、私が止めた物ですから、いざという時はすぐに戻せるようにしておいたんです」
やはりメアリは完全に僕を裏切ったわけじゃなかったんだ。最初からこの作戦に疑問を持っていた。
そして、彼女が端末を操作すると校内のあちこちで爆発音が響いて、煙が上がった。
警備システムがテロリストを排除しようと動き出したんだ。
「これでしばらくは時間が稼げるはずです」
「ありがとう。このまま終わってくれると助かるんだけど」
「そんな甘い人達じゃありませんよ」
「その通りだ」
「「!!」」
その時、バアンと大きな音を立てて屋上の扉が開かれ三人の男達が姿を見せた。一人は銃を構えて、もう一人はロケットランチャーのようなものを背負っている。
そして、中央にいたリーダーと思われる男が歩みを進めてきた。メアリが僕を庇うように前に立つ。
「ご主人様、私の後ろに」
「でも……」
「大丈夫です。あの人達に私は撃てません」
「……分かった」
情けないけど僕には彼女の言う通りにするしかなかった。リーダーの男が通信機で聞こえたのと同じ声で話しかけてくる。
「メアリ、我儘はよしなさい。セキュリティをもう一度止めるんだ」
「嫌です」
「ならば仕方ないな。痛めつけてでも言うことを聞かせよう」
「やってみて下さい」
手を動かす男にメアリも挑発するように両手を広げる。部下の男達は無言のまま武器を構えた。
僕は何もできないまま見ている事しかできないのだろうか。
「ご主人様だけは傷つけさせません」
「ふん、減らず口だけは教えた通りだな。私は育て方を誤ったようだ。やれ!」
男の号令とともに二人の部下が動いた。メアリが身構える。僕は思わず飛び出した。
「やああああ!」
メアリを守るんだ。この僕の手で。見ているだけなんてやはり僕には出来なかった。
僕が拳を構えると、男達は驚いた顔をして慌てて下がった。
「馬鹿な、武器を持っている相手になぜ向かってくるんだ? ただの学生じゃないのか!?」
「舐めるなよ! 僕は少林寺拳法を習っていた時期があるんだ。アチョ―!」
「くそっ!」
男達は銃とロケットランチャーを発射しようとしてくるが、リーダーの男が止めた。
「よせ! 奴は大事な人質だ。殺すんじゃない!」
「「くっ!」」
男達は武器を下ろす。格闘でも勝ち目はないかもしれないけどやるしかない。
この隙に僕が倒せれば良かったんだけど、彼らを横から攻撃して倒して武器を奪ったのはメアリだった。
「ありがとうございます、ご主人様。隙を作ってくれて」
「ああ、お役に立てたようで何よりだよ」
「さあ、後はあなただけです」
メアリがリーダーの男に銃を向ける。だが、男は観念したりはせずに不気味に言うのだった。
「メアリ、本当に我々を裏切るつもりなのだな」
「はい、わたしはもうご主人様のメイドなんです」
「よかろう。ならば我々も手段に打って出る」
男が手を振り上げると武装ヘリが屋上に姿を現した。男が乗り込むと猛烈な風を吹きおろしながらミサイルの照準が僕達を狙ってくる。
「さよならだ、メアリ!」
「どうすれば……」
「ご主人様、伏せてください!」
「え? うわああああ!」
僕はメアリに押し倒される。その直後、激しい爆風が僕達の体を包み込んだ。
ミサイルにやられたのだろうか。いや、爆発して墜落していくのは武装ヘリの方だった。
「大丈夫か、二人とも!?」
「ああ!!」
駆けつけたのは先生とクラスメイト達だった。みんなが僕達を助けてくれた。戦っていたのは僕達だけではなかったのだ。
安心する僕達だったが、僕の耳は敵の迫る音を聞き逃さなかった。
「許さんぞ、メアリ! お前は連れ帰って再教育だ!」
「僕のメイドに汚い手で触るんじゃねえ!!」
僕の少林寺拳法は見事に敵のリーダーにクリーンヒットした。子供の頃にちょっと習っていただけの事を意外と体は覚えていた。
男は目を回して気絶した。後は警察の仕事だ。こうして、僕達は無事に学校を守りきったのだった。
事件が解決してから数日後の家で。
「はい、ご主人様めしあがれ」
「あ、うん」
僕達はいつものようにテーブルを挟んで向かい合って食事をとっていた。あれからもメアリは僕の家でメイドとして暮らしている。
テロリストとの関係は不問とされたようだ。僕が願っていた事が叶って良かったと思う。
「今日は腕によりをかけて作ったんですよ。ほら、ハンバーグとか」
「美味しいね。メアリは料理上手だなあ」
僕が褒めると彼女は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「ご主人様に喜んで頂けて嬉しいです」
「うん、これからもよろしくね」
「はい、ご主人様」
そう言って微笑む彼女はとても可愛くて、僕はこの笑顔がいつまでも続くようにと願いながら食事をするのだった。
ひとまずは敵はいないようで僕達は一息ついた。
「ご主人様、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だけど、ここからどうすればいいんだろう? 助けを待つしかないのかな」
僕には戦う力も何も無い。ヒーローのようにテロリストを倒したりはできないのだ。
するとメアリがポケットから携帯端末を取り出した。
「ひとまずこの学校のセキュリティを元に戻しておきますね」
「え? できるの?」
「はい、私が止めた物ですから、いざという時はすぐに戻せるようにしておいたんです」
やはりメアリは完全に僕を裏切ったわけじゃなかったんだ。最初からこの作戦に疑問を持っていた。
そして、彼女が端末を操作すると校内のあちこちで爆発音が響いて、煙が上がった。
警備システムがテロリストを排除しようと動き出したんだ。
「これでしばらくは時間が稼げるはずです」
「ありがとう。このまま終わってくれると助かるんだけど」
「そんな甘い人達じゃありませんよ」
「その通りだ」
「「!!」」
その時、バアンと大きな音を立てて屋上の扉が開かれ三人の男達が姿を見せた。一人は銃を構えて、もう一人はロケットランチャーのようなものを背負っている。
そして、中央にいたリーダーと思われる男が歩みを進めてきた。メアリが僕を庇うように前に立つ。
「ご主人様、私の後ろに」
「でも……」
「大丈夫です。あの人達に私は撃てません」
「……分かった」
情けないけど僕には彼女の言う通りにするしかなかった。リーダーの男が通信機で聞こえたのと同じ声で話しかけてくる。
「メアリ、我儘はよしなさい。セキュリティをもう一度止めるんだ」
「嫌です」
「ならば仕方ないな。痛めつけてでも言うことを聞かせよう」
「やってみて下さい」
手を動かす男にメアリも挑発するように両手を広げる。部下の男達は無言のまま武器を構えた。
僕は何もできないまま見ている事しかできないのだろうか。
「ご主人様だけは傷つけさせません」
「ふん、減らず口だけは教えた通りだな。私は育て方を誤ったようだ。やれ!」
男の号令とともに二人の部下が動いた。メアリが身構える。僕は思わず飛び出した。
「やああああ!」
メアリを守るんだ。この僕の手で。見ているだけなんてやはり僕には出来なかった。
僕が拳を構えると、男達は驚いた顔をして慌てて下がった。
「馬鹿な、武器を持っている相手になぜ向かってくるんだ? ただの学生じゃないのか!?」
「舐めるなよ! 僕は少林寺拳法を習っていた時期があるんだ。アチョ―!」
「くそっ!」
男達は銃とロケットランチャーを発射しようとしてくるが、リーダーの男が止めた。
「よせ! 奴は大事な人質だ。殺すんじゃない!」
「「くっ!」」
男達は武器を下ろす。格闘でも勝ち目はないかもしれないけどやるしかない。
この隙に僕が倒せれば良かったんだけど、彼らを横から攻撃して倒して武器を奪ったのはメアリだった。
「ありがとうございます、ご主人様。隙を作ってくれて」
「ああ、お役に立てたようで何よりだよ」
「さあ、後はあなただけです」
メアリがリーダーの男に銃を向ける。だが、男は観念したりはせずに不気味に言うのだった。
「メアリ、本当に我々を裏切るつもりなのだな」
「はい、わたしはもうご主人様のメイドなんです」
「よかろう。ならば我々も手段に打って出る」
男が手を振り上げると武装ヘリが屋上に姿を現した。男が乗り込むと猛烈な風を吹きおろしながらミサイルの照準が僕達を狙ってくる。
「さよならだ、メアリ!」
「どうすれば……」
「ご主人様、伏せてください!」
「え? うわああああ!」
僕はメアリに押し倒される。その直後、激しい爆風が僕達の体を包み込んだ。
ミサイルにやられたのだろうか。いや、爆発して墜落していくのは武装ヘリの方だった。
「大丈夫か、二人とも!?」
「ああ!!」
駆けつけたのは先生とクラスメイト達だった。みんなが僕達を助けてくれた。戦っていたのは僕達だけではなかったのだ。
安心する僕達だったが、僕の耳は敵の迫る音を聞き逃さなかった。
「許さんぞ、メアリ! お前は連れ帰って再教育だ!」
「僕のメイドに汚い手で触るんじゃねえ!!」
僕の少林寺拳法は見事に敵のリーダーにクリーンヒットした。子供の頃にちょっと習っていただけの事を意外と体は覚えていた。
男は目を回して気絶した。後は警察の仕事だ。こうして、僕達は無事に学校を守りきったのだった。
事件が解決してから数日後の家で。
「はい、ご主人様めしあがれ」
「あ、うん」
僕達はいつものようにテーブルを挟んで向かい合って食事をとっていた。あれからもメアリは僕の家でメイドとして暮らしている。
テロリストとの関係は不問とされたようだ。僕が願っていた事が叶って良かったと思う。
「今日は腕によりをかけて作ったんですよ。ほら、ハンバーグとか」
「美味しいね。メアリは料理上手だなあ」
僕が褒めると彼女は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「ご主人様に喜んで頂けて嬉しいです」
「うん、これからもよろしくね」
「はい、ご主人様」
そう言って微笑む彼女はとても可愛くて、僕はこの笑顔がいつまでも続くようにと願いながら食事をするのだった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる