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第4話 兄、光一の行動
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「ちくしょう! ちくしょうー!」
廊下ですれ違う誰ともあいさつを交わすことなくまっすぐに自分の部屋へと戻った光一はやり場のない怒りをベッドの枕へとぶつけた。
大好きな音羽、笑っている音羽、ずっと僕のそばにいてくれると思っていたのに。
「ぐおおおおおおおおう!!」
幼い日に交わした約束。
『あたし、大きくなったらお兄様のお嫁さんになるの』
『そうか、じゃあ、ぼくは音羽のお婿さんだね。いつまでも待ってるから。約束だよ』
『うん、約束』
あの日交わした指きりの感触を……
「僕はまだ忘れていないというのにいいいいいい!!!」
力任せに枕を壁に叩きつける。
「はあはあ……」
だが、まだ遅くはない。いくら音羽がその気でも相手が断ればそれで済む話だ。
だが、その相手は……誰だ?
光一は無造作にテーブルの上の受話器を手に取った。
この家の連中に調べさせるわけにはいかない。音羽は出来るだけ内緒にしたがっている。自分もこんなことを屋敷の連中に知られたくない。
だから、光一はこの事を個人的な信頼出来る知り合いに任せることにした。
『はい、真壁です』
しばらくして、耳になじんだ少女の声が電話に出る。
「千砂か。僕だ。光一だ。今から会えるか?」
『ん、無理。もうすぐバレンタインでしょ。それに合わせてバレンタイン特集を出すつもりだから今手が離せないのよ』
「お前もバレンタインかよ! くそ、今すぐそっちへ行く。部屋で待ってろ!」
『あ、ちょ』
相手の言葉を待つことなく、光一は受話器を叩きつけて部屋を出た。
光一の向かった先は同級生である真壁千砂(まかべちさご)の家だった。
国際的なジャーナリストを目指す彼女は小学校の頃から抜群の視野とネットワークを持っていて、光一は折りに触れてはそれを利用させてもらっていた。
「いらっしゃい、光一君。さっきの電話なんだったの?」
光一が部屋に上がると、千砂は部屋一面に広げた模造紙の上で記事を書いていた。今時アナログはどうかと光一は彼女に尋ねたことがあったが、彼女にとっては手作りなのがこだわりなのだそうだ。
「どうもこうもあるか!」
座る場所が見つからず、光一は立ち尽くしたまま叫んだ。
その様子に特ダネの匂いでも嗅ぎ付けたのだろう。千砂は立ち上がって眼鏡を光らせマスコミの目で光一に詰め寄った。
「面白そうね。話してみて」
「妹が悪いムシにつきまとわれているんだ」
光一は千砂に促されるままに全てのことを洗いざらいぶちまけた。
「なるほど、それでその相手をつきとめろというのね」
「バレンタインまでにだぞ。出来るか?」
「わたしを誰だと思ってんの。ただし、一つ条件があるわ」
「なんだ? 昼飯でも何でもおごってやるぞ」
「わたしのバレンタイン特集の記事作りを手伝ってくれること」
「僕に出来る範囲でやってやる」
「よし」
そして、商談がまとまった。
廊下ですれ違う誰ともあいさつを交わすことなくまっすぐに自分の部屋へと戻った光一はやり場のない怒りをベッドの枕へとぶつけた。
大好きな音羽、笑っている音羽、ずっと僕のそばにいてくれると思っていたのに。
「ぐおおおおおおおおう!!」
幼い日に交わした約束。
『あたし、大きくなったらお兄様のお嫁さんになるの』
『そうか、じゃあ、ぼくは音羽のお婿さんだね。いつまでも待ってるから。約束だよ』
『うん、約束』
あの日交わした指きりの感触を……
「僕はまだ忘れていないというのにいいいいいい!!!」
力任せに枕を壁に叩きつける。
「はあはあ……」
だが、まだ遅くはない。いくら音羽がその気でも相手が断ればそれで済む話だ。
だが、その相手は……誰だ?
光一は無造作にテーブルの上の受話器を手に取った。
この家の連中に調べさせるわけにはいかない。音羽は出来るだけ内緒にしたがっている。自分もこんなことを屋敷の連中に知られたくない。
だから、光一はこの事を個人的な信頼出来る知り合いに任せることにした。
『はい、真壁です』
しばらくして、耳になじんだ少女の声が電話に出る。
「千砂か。僕だ。光一だ。今から会えるか?」
『ん、無理。もうすぐバレンタインでしょ。それに合わせてバレンタイン特集を出すつもりだから今手が離せないのよ』
「お前もバレンタインかよ! くそ、今すぐそっちへ行く。部屋で待ってろ!」
『あ、ちょ』
相手の言葉を待つことなく、光一は受話器を叩きつけて部屋を出た。
光一の向かった先は同級生である真壁千砂(まかべちさご)の家だった。
国際的なジャーナリストを目指す彼女は小学校の頃から抜群の視野とネットワークを持っていて、光一は折りに触れてはそれを利用させてもらっていた。
「いらっしゃい、光一君。さっきの電話なんだったの?」
光一が部屋に上がると、千砂は部屋一面に広げた模造紙の上で記事を書いていた。今時アナログはどうかと光一は彼女に尋ねたことがあったが、彼女にとっては手作りなのがこだわりなのだそうだ。
「どうもこうもあるか!」
座る場所が見つからず、光一は立ち尽くしたまま叫んだ。
その様子に特ダネの匂いでも嗅ぎ付けたのだろう。千砂は立ち上がって眼鏡を光らせマスコミの目で光一に詰め寄った。
「面白そうね。話してみて」
「妹が悪いムシにつきまとわれているんだ」
光一は千砂に促されるままに全てのことを洗いざらいぶちまけた。
「なるほど、それでその相手をつきとめろというのね」
「バレンタインまでにだぞ。出来るか?」
「わたしを誰だと思ってんの。ただし、一つ条件があるわ」
「なんだ? 昼飯でも何でもおごってやるぞ」
「わたしのバレンタイン特集の記事作りを手伝ってくれること」
「僕に出来る範囲でやってやる」
「よし」
そして、商談がまとまった。
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