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第一章 発明家と選ばれたパイロット
第2話 パイロットに選ばれた少女
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青空の澄み渡る良い日和だった。
町の小学校ではいつもの平凡な授業が行われていた。
世間では怪獣が現れたりしているが、そんな自然災害が発生しても国防軍のロボット達がきっちり活躍して守ってくれているので世界は平和だ。
小学生の出来ることと言ったら、近くで災害が起きたら誘導に従って避難することぐらいだ。それは起きるのが火災でも怪獣でも変わらない。
博士の造った最高のロボットのコンピューターから、最高のパイロットだと選ばれた小学三年生の少女、桜田桃乃は自分が選ばれたことも知らず、いつもの緩んだ日常をのほほんと気楽に送っていた。
教壇に立つ先生は、怪しい人に声を掛けられてもついていかないようにとかお決まりの注意をしているが、そんなうかつな子供はいないと桃乃は思う。
そんなことよりも今日は良い出会いがあるでしょうと朝の占いが言っていたことの方が気になっていた。
もう今日が終わりそうなんだけど、そんな良い出会いがどこにあるというのだろうか。
考えている間にも時間が経つ。
授業の終わるチャイムが鳴って、起立して礼をする。先生が教室を出て行って、辺りがクラスメイト達の雑談で賑やかになる。放課後だ。
「もーちゃん、帰ろう」
「うん、りっちゃん」
友達の青井律香が誘ってきて、桃乃は彼女と一緒に帰ることにした。
もしかしたら友達と会って一緒に帰る、これが良い出会いなのだろうか。桃乃にはよく分からない。
放課後の喧騒で賑わう廊下を進みながら、隣を歩く律香が言ってくる。
「最近怪しい人が出るみたいだけど、もーちゃんはついて行っちゃ駄目だよ」
「もう、そんなことしないよ」
「どうかな。もーちゃんは抜けてるところがあるからなあ」
「もー、あたしは抜けてないって。ちゃんとしてるって」
子供同士でそんな他愛のないことを話しながら昇降口を出て歩いていくと、門のところで知らないお兄さんが立っているのが見えて、桃乃は少し驚いて目を丸くしてしまった。
一目見てかっこいいと思った。ツンツンとした髪とすらりとした長身の目付きの鋭い青年だ。運命の出会いかと思った。
「良い出会いがあるってこういうこと?」
「もーちゃん、何か言った?」
「ううん、何でもない」
桃乃は上気しそうな顔を我慢して伏せて、律香と一緒に彼の横を通り過ぎようとした。
子供ながら年頃の憧れと夢を持つ桃乃でも現実が少女漫画のように甘くないことは知っていた。彼はきっと漫画のヒロインのようなキラキラとした女の子を待っているのだと思った。
彼と会えただけで満足しておこう。そう自分に言い聞かせる桃乃だったが、その足を止めることになった。
「あんたが桜田桃乃か?」
彼が声を掛けてきたからだ。顔を上げて振り返って見ると彼と目が合った。男の強い意思を感じさせるロックな瞳が自分を見ていた。
桃乃は心臓を跳ね上がらせながら答えた。
「はい」
「そうか、俺は君に会いに来たんだ。ここで会えて良かった」
「あたしもです!」
隣で怪訝そうな顔をしている律香などどちらの意識にも無かった。世界には彼と自分しかいないように桃乃には思えた。
また隼人にとっても用があるのはパイロットに選ばれた彼女だけだった。律香のことを気にせず、彼の手が桃乃にだけ差し伸べられる。
「俺は空崎隼人って言うんだ。あんたに用があって迎えに来たんだ。俺と一緒に来てくれないか?」
「はい! 喜んで!」
「おいいい!」
律香が止める間も無かった。
桃乃の体はお姫様のように抱き上げられて、すぐ傍に止めてあったバイクの後部座席に乗せられた。そして、
「被ってろ」
頭にヘルメットを被せられて、二人はあっという間に走り去っていってしまった。
「あ……あ……人さらいーーーー!」
律香はいつまでも呆然としているわけにはいかなかった。いたずらに騒いで事件を大きくするわけにもいかなかった。
あわあわと考え、今はとにかく急いで走ってバイクの後を追いかけることにした。
町の小学校ではいつもの平凡な授業が行われていた。
世間では怪獣が現れたりしているが、そんな自然災害が発生しても国防軍のロボット達がきっちり活躍して守ってくれているので世界は平和だ。
小学生の出来ることと言ったら、近くで災害が起きたら誘導に従って避難することぐらいだ。それは起きるのが火災でも怪獣でも変わらない。
博士の造った最高のロボットのコンピューターから、最高のパイロットだと選ばれた小学三年生の少女、桜田桃乃は自分が選ばれたことも知らず、いつもの緩んだ日常をのほほんと気楽に送っていた。
教壇に立つ先生は、怪しい人に声を掛けられてもついていかないようにとかお決まりの注意をしているが、そんなうかつな子供はいないと桃乃は思う。
そんなことよりも今日は良い出会いがあるでしょうと朝の占いが言っていたことの方が気になっていた。
もう今日が終わりそうなんだけど、そんな良い出会いがどこにあるというのだろうか。
考えている間にも時間が経つ。
授業の終わるチャイムが鳴って、起立して礼をする。先生が教室を出て行って、辺りがクラスメイト達の雑談で賑やかになる。放課後だ。
「もーちゃん、帰ろう」
「うん、りっちゃん」
友達の青井律香が誘ってきて、桃乃は彼女と一緒に帰ることにした。
もしかしたら友達と会って一緒に帰る、これが良い出会いなのだろうか。桃乃にはよく分からない。
放課後の喧騒で賑わう廊下を進みながら、隣を歩く律香が言ってくる。
「最近怪しい人が出るみたいだけど、もーちゃんはついて行っちゃ駄目だよ」
「もう、そんなことしないよ」
「どうかな。もーちゃんは抜けてるところがあるからなあ」
「もー、あたしは抜けてないって。ちゃんとしてるって」
子供同士でそんな他愛のないことを話しながら昇降口を出て歩いていくと、門のところで知らないお兄さんが立っているのが見えて、桃乃は少し驚いて目を丸くしてしまった。
一目見てかっこいいと思った。ツンツンとした髪とすらりとした長身の目付きの鋭い青年だ。運命の出会いかと思った。
「良い出会いがあるってこういうこと?」
「もーちゃん、何か言った?」
「ううん、何でもない」
桃乃は上気しそうな顔を我慢して伏せて、律香と一緒に彼の横を通り過ぎようとした。
子供ながら年頃の憧れと夢を持つ桃乃でも現実が少女漫画のように甘くないことは知っていた。彼はきっと漫画のヒロインのようなキラキラとした女の子を待っているのだと思った。
彼と会えただけで満足しておこう。そう自分に言い聞かせる桃乃だったが、その足を止めることになった。
「あんたが桜田桃乃か?」
彼が声を掛けてきたからだ。顔を上げて振り返って見ると彼と目が合った。男の強い意思を感じさせるロックな瞳が自分を見ていた。
桃乃は心臓を跳ね上がらせながら答えた。
「はい」
「そうか、俺は君に会いに来たんだ。ここで会えて良かった」
「あたしもです!」
隣で怪訝そうな顔をしている律香などどちらの意識にも無かった。世界には彼と自分しかいないように桃乃には思えた。
また隼人にとっても用があるのはパイロットに選ばれた彼女だけだった。律香のことを気にせず、彼の手が桃乃にだけ差し伸べられる。
「俺は空崎隼人って言うんだ。あんたに用があって迎えに来たんだ。俺と一緒に来てくれないか?」
「はい! 喜んで!」
「おいいい!」
律香が止める間も無かった。
桃乃の体はお姫様のように抱き上げられて、すぐ傍に止めてあったバイクの後部座席に乗せられた。そして、
「被ってろ」
頭にヘルメットを被せられて、二人はあっという間に走り去っていってしまった。
「あ……あ……人さらいーーーー!」
律香はいつまでも呆然としているわけにはいかなかった。いたずらに騒いで事件を大きくするわけにもいかなかった。
あわあわと考え、今はとにかく急いで走ってバイクの後を追いかけることにした。
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