俺がロボットに乗って活躍するぜ!

けろよん

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第一章 発明家と選ばれたパイロット

第5話 律香の予感

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 放送とニュースが災獣の危機が去ったことを告げ、律香のいる避難所にも安心の緩んだ空気が戻ってきた。

「国防軍が倒してくれたようだな」
「はあ、仕事の続きをやらなくちゃ」
「いっそもっと壊してくれた方がいいのになあ」

 などと話し合いながら人々はすっかり危機が去った気分でいたが、律香にとってはまだ問題が終わったわけでは無かった。

「もーちゃんを探しに行かなくちゃ」

 のんびり歩いている人混みを掻き分け、急いで避難所を出ることにする。
 何となくだが、あのロボットが発射された現場に連れて行かれたのではないか。
 そんな予感がした。



 ロボットが空を飛んでいく。かっこいいヒーローとしての威厳を見せながら。
 避難命令が解けたばかりで慌ただしい地上の人々はあまり空の事には感づいていない様子だった。
 見上げても何かが飛んでいるとしか思わなかったかもしれないが。
 行く時は着地をどうするかで慌ててしまったが、飛べるならそんな心配は無用だったのかもしれない。
 隼人は桃乃の運転を邪魔しないように黙ってモニター画面の景色を見つめていた。湾岸地区から飛び立ったロボットは町の上空を越えて真っ直ぐに町はずれの博士の工場に向かっている。
 寄り道をせずに帰るなんて偉い小学生だった。そんな桃乃が訊いてくる。

「隼人さん、あたしの活躍どうでした?」
「初めてとは思えないぐらい上出来だったよ」

 誤魔化してもしょうがない。正直に答えると桃乃は素直に笑った。

「隼人さんに褒めてもらえるなんて頑張ったかいがありました」
「明日からもこの調子で頼むぜ」
「明日も来ていいんですか?」

 桃乃は驚いている。隼人にとってはその方が都合が良い。

「ああ、このロボットはあんたの物だからな。て言うか来てくれないと俺が迎えにいかないといけなくなる」
「じゃあ、迎えに来てください」
「めんどくせえ」

 桃乃は機嫌良さそうにニコニコしている。ロボットに乗って活躍できたのだ。当然だろうと隼人は思った。
 自分が出来なかった不満を小学生に見せることもない。隼人は桃乃には穏やかな顔を見せておいた。
 そうこうしているうちに目的地に着いた。発射した時に開いた出入口が再び開いて二人を出迎えた。

「じゃあ、着陸しますね」
「ああ、安全運転で頼む」

 戦っている時は驚いたが、隼人はもう桃乃の運転技術を見くびってはいなかった。彼女が操縦桿を前に倒すと、ロボットは実に上手く広大な地下室に着地した。ロボットの足が接地したのに合わせて頭上で入り口が閉まっていく。
 桃乃は操縦桿から手を離して、背後の隼人を振り返った。

「着きました」
「お疲れさん」

 桃乃がコクピットから出て、隼人も後に続いた。一緒に昇降機に乗って下へ降りていく。
 博士は実に上機嫌な様子で俺達を……と言うか桃乃を出迎えた。
 彼は機嫌よく桃乃の両手を手に取った。

「実に見事な戦いだったぞ。さすがわしの見込んだエースパイロットじゃ!」
「あたしエースだったんですか……お役に立てて光栄です」
「選んだのはコンピューターだろ……」
「疲れたじゃろう。茶でも飲んでいけ」
「はい」

 桃乃は博士に促されて、傍にあったテーブルの席に付いた。博士はその対面に座って隼人を見上げて言った。

「何をしておる。早く茶を入れてこんか」
「俺はあんたのウエイトレスじゃねえ」
「あ、お茶ならあたしが」
「いや、あんたはいいよ。俺が入れてくる」

 この工場のことを何も知らない桃乃に任せるわけにもいかないだろう。
 隼人は仕方なく部屋にある冷蔵庫へと向かった。



 その頃、避難所を後にした律香は再び桃乃が連れていかれたであろう場所を目指して早足で急いでいた。
 町を外れて山に入ってから道は一本道になっていた。
 途中で何か空から音が近づいてきたので見上げると、空をロボットが横切って飛んでいくのが見えた。
 行った用事が終わって帰ってきたのだろうか。試運転か訓練が終わったのかもしれない。着陸地点が近いのか高度は低めだ。
 ロボットは律香の目指している方向へ飛んでいき、着陸していくのが遠くに見えた。
 目指す場所はあそこだ。その確信を強くして律香が足を踏みだそうとした時、不意に後ろで車のクラクションが鳴った。

「すみません」

 ロボットの行く場所が見えやすいように道の中央に移動してしまっていた。律香は慌てて謝って道の横にどいた。
 運転手が片手を上げて挨拶して、車を走らせていく。
 その車を見て、律香は驚いて息を呑んだ。

「国防軍の車? 何の用なんだろう」

 律香の知るところでは国防軍の基地がこの山にあるとは聞いたことがない。
 もしかして桃乃は軍の関係するような事件に巻き込まれているのだろうか。それは警察よりやばいのではないだろうか。逮捕されたらどうしよう。

「もーちゃんに限ってそんなことはない……はず」

 律香は嫌な予感を抑えながら先を急ぐことにした。
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