俺がロボットに乗って活躍するぜ!

けろよん

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第五章 災獣を崇める者達

第17話 災獣を崇める教団

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 街中に立つ高層ビルの最上階の会議室。薄暗いその部屋で不気味な人々が集まって会議をしていた。
 その光景が異様に見えてしまうのも仕方が無いかもしれない。彼らはそれぞれにローブを纏って災獣を象った仮面を顔に付けていたからだ。
 怪しげなオカルトの集まりのようにしか思えない。
 彼らこそ人々の平和な暮らしを脅かす災獣を神の使いだと信じて崇めている集団、災獣教団のメンバー達だった。
 彼らの見る会議室のプロジェクター画面には災獣と戦うロボット達の姿が映し出されていた。
 事態に当たるために国が結成した国防軍よりも目覚ましい活躍を見せる、桃乃と律香の乗るロボット達。
 剣と銃で災獣達を撃破する。そこで映像が終わり、会議室の電灯に光が灯った。
 明るくなった部屋で、メンバー達はそれぞれに重々しく息を吐いた。

「けしからんな。この星に救いをもたらす災獣をあのような輩が手玉に取るとは」
「あのロボットは一体何なのでしょう。国防軍も戸惑っているようですが」
「噂では博士の造ったロボットらしいですよ」
「空崎博士か。あの天才と言われている。国防軍からの誘いを断っていると聞いていたが、あのようなロボットを独自で開発していたとはな」
「なんでも操縦士はまだ小学生の子供らしいぞ」
「なんと」
「その操縦士をわたしのところに連れてきてくれませんか?」

 上座に座る小柄な人物が発言する。その涼やかで落ち着いた声音に会議の席を同じくするメンバー達の間にざわめきが広がった。

「まさか、お会いになるのですか? 教主様」
「はい、災獣を物ともせず戦うあのロボットを操縦する者達にわたしは興味を抱きました」

 災獣の教えを説き、教団のリーダーとなった教主の発言を、メンバー達はそれぞれに重く受け止めながら頷いた。

「分かりました。このロボットのパイロットを突き留め連れて参りましょう」
「教主様のお望みのままに」
「任せましたよ」

 こうして会議の場は解散となり、教主の命を受けた彼らは密かに行動を開始した。



 朝はいつものように平和にやってきた。
 災獣が現れても町はロボット達が守ってくれている。
 あれからも次々と災獣が出現したが、桃乃と律香は順調に敵を倒していった。もう隼人の助けも必要無さそうだった。
 隼人が起きて工場の地下の片隅にある部屋にやってくると、博士がコーヒーを飲んでニュースを見ていた。
 隼人も同じく席についてパンを焼きながらニュースを見ることにする。ニュースはロボットが現れて災獣を倒したことを報道していた。

「凄いもんだな。知っている奴がテレビに出るってのは」

 昨日の戦いの映像を見ながら隼人は少し感心してしまう。
 見ていると報道のヘリに気が付いた桃乃がコクピットのハッチを開いて手を振っていた。律香が止めようとするが時すでに遅しだった。
 二人の姿はばっちりとカメラに撮られていた。

「何やってるんだか……」

 二人のところに取材が殺到しなければいいけどな。隼人は他人事ながら気になってしまうのだった。
 映像はスタジオに切り替わる。コメンテーターの中に変な奴がいて、隼人は気を引かれて番組の続きを見ることにした。
 その人物は災獣の仮面を付けていた。前に国防軍のロボットを奪った奴とは仮面の災獣の種類が違っていた。彼は語る。

「これはいけませんね。災獣はこの星を救うために神の遣わした使者なのです。あのロボットは明らかに過ぎた力を持っています。いずれ天罰が下るでしょう」

 それからも議論は続けられていく。反対する者もいれば賛成する者もいる。ほとんどはどうでもいい意見で隼人は適当に聞き流していった。

「町に被害を出している災獣が神の使者だなんて、世の中には変なことを考える奴がいるもんだな」

 隼人が率直な感想を呟くと、同じく人々から変な奴認定されている博士が話しかけてきた。

「あれは災獣教団のメンバーじゃな」
「災獣教団?」

 聞き覚えの無い言葉に隼人は訊ね返す。前にも災獣を崇めている奴は見たことがあったが、そんな名前の集団がいたのか。
 災獣に関わる者とあって博士はその知識を知っているようだった。

「災獣を神の使いと説く九遠輪廻(くおん りんね)という人物を教主と仰ぐ者達の集まりじゃ。わしの研究の方も一息付いたことじゃし、その九遠輪廻という人物にも会ってみたいのう。何か災獣のことが分かるかもしれん」
「俺にそいつを連れてこいとか言うなよ」

 隼人としてはそんな妙なことを吹聴する人物には会いたくないし、博士と変人同士で気が合ってしまってはたまったものでは無いと思うのだが、幸いにもその危険性は博士の方から断ってくれた。

「必要ないわい。会いたくなったら向こうから会いに来るじゃろうしな。わっはっはっ」
「まったく……」

 どうやら博士は自分のロボットが活躍を見せ続ければ、向こうから折れて訪問してくると考えているようだった。
 国防軍の長官のようにその九遠輪廻とかいう教主もこの博士に困らされるのだろうか。そう思うと相手に同情してしまう隼人だった。
 博士が何でもないことのように呟いて立ち上がる。

「さて、そうと決まったら三号機の開発も考えねばならんの」
「まだ造る気でいたのかよ!?」

 最近は博士に動きが無かったし二人の戦いも順調だったのですっかり満足したのかと思っていた。
 だが、博士のやる気はまだ燃えていたようだ。

「ああ、新しいデータもいろいろ揃ってきたし、九遠輪廻が来た時にびっくりさせてやりたいからのう。わっはっはっ」

 博士はそう言い残し部屋を出ていった。隼人は考える。

「最近はあまり考えなくなってきたけどよ。俺、ロボットに乗りたいんだったよな……よし」

 そして、決めた。

「今度こそ俺がパイロットに選ばれて活躍してやるぜ!」

 そのためにはどうすればいいか。パイロットについて分からないことはパイロットになった人物を見て知るのが一番だろう。

「放課後になったら桃乃と律香に会いにいくか」

 彼女達から何かパイロットに選ばれる才能の手掛かりを見つけることが出来れば。
 自分もパイロットになれるはずだ。
 そう考えを纏め、隼人は外に出ることにした。
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