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第五章 災獣を崇める者達
第22話 エピローグ
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隼人は輪廻から災獣のシステムについて聞きだして被害を抑えるよう対処するつもりだった。
ところが朝目覚めてみると、災獣がなぜか武装を施されてパワーアップして暴れていた。
ニュースでは騒ぎになっていた。メカディザスターが現れたと。
災獣が環境に対応したのだとテレビではまことしやかに語られていた。
テレビではついでに良子の親が国防のスポンサーに乗り出したと言われていたが、そっちのニュースは隼人にとってはどうでもよかった。
隼人は息せき切って駆けつけ、我が家のように博士と一緒に朝食を取っている輪廻に問いただした。
「どういうことなんだよ! 九遠輪廻! なんで災獣がパワーアップしているんだよ!」
「こちらの博士が力を貸してくださったのです」
「はああああ!?」
隼人は呆れた顔をして、輪廻と一緒に飯を食っている博士に詰め寄った。
「どういうことなんだよ! 爺さん!」
「輪廻ちゃんが困っておったからのう。話を聞いて災獣のシステムに干渉してパワーを施したのじゃ」
「施すなよ! 敵だろ!? 被害増えてるだろ! ここは敵の情報を聞き出して被害を下げる場面じゃないのかよ!」
「だって、敵がいなくなるとわしは張り合いが無くなって困るからのう」
「困っているのはみんなだろ!」
テレビの向こうでは国防軍とメカディザスターが戦っている。いつもより町の被害が増えていた。手毬の苦労が偲ばれる。
災獣の味方の輪廻は始めて会った時のように落ち着いた態度を見せながら、パンを食べていた。
「お陰で計画を続行する目途が立ちました。わたしはこれからも自分に与えられた役割を務め、観察と記録を続けていきます」
「敵と味方の大将がいるなんて、ここはとんでもない席だぜ!」
あるいは両方とも敵かもしれない。隼人は立ち上がる。
「どこへ行くのじゃ?」
「決まってるだろ。ロボットに乗って活躍してくるんだよ」
「隼人」
「なんだ?」
「お前、ちょっと嬉しいと思っているじゃろ」
「思ってねえよ!」
自分まで変人だと思われてはたまったものではない。祖父と血は繋がっていても同類ではないのだ。
隼人は誤魔化すように目を逸らし、部屋を出ようとする。
その前に輪廻が席を立ち、隼人の傍にやってきた。
目の前で行儀よく立つ少女。何をするのかと身構えつつ見ていると、輪廻は礼儀正しく頭を下げて、はにかんだような笑みを見せた。
「助けてくれてありがとうございました」
「ああもう、お前はそこで座って見てろよ!」
聖女のような笑みに隼人は照れくさくなってしまう。彼女には何の悪意も無かった。ただ自分の使命を果たそうと一生懸命なだけで。
輪廻の知識と使命感に心打たれた者達によって、彼女が教団のボスに祀り上げられたのももしかしたら自然なことだったのかもしれない。
今日も輪廻を崇める人達が、ニュースで災獣は神の使いだとか勝手なことを言っていた。
隼人はロボットの格納庫へ向かう。着いた時、ちょうどエレベーターから桃乃と律香が降りてきた。
「隼人さん!」
「外は大変なことになってますよ!」
「分かってる!」
その大変なことが身内のやったことだと言う必要は無いだろう。小学生にはショックが強いかもしれない。
今はただロボットに乗り込もう。敵を倒すために。
「行こうぜ、桃乃、律香!」
「はい!」
「もちろんです!」
心強い仲間達とともに隼人は出撃する。
「俺達がロボットに乗って活躍するぜ!」
平和を守るために。三機のロボット達が飛び立っていった。
ところが朝目覚めてみると、災獣がなぜか武装を施されてパワーアップして暴れていた。
ニュースでは騒ぎになっていた。メカディザスターが現れたと。
災獣が環境に対応したのだとテレビではまことしやかに語られていた。
テレビではついでに良子の親が国防のスポンサーに乗り出したと言われていたが、そっちのニュースは隼人にとってはどうでもよかった。
隼人は息せき切って駆けつけ、我が家のように博士と一緒に朝食を取っている輪廻に問いただした。
「どういうことなんだよ! 九遠輪廻! なんで災獣がパワーアップしているんだよ!」
「こちらの博士が力を貸してくださったのです」
「はああああ!?」
隼人は呆れた顔をして、輪廻と一緒に飯を食っている博士に詰め寄った。
「どういうことなんだよ! 爺さん!」
「輪廻ちゃんが困っておったからのう。話を聞いて災獣のシステムに干渉してパワーを施したのじゃ」
「施すなよ! 敵だろ!? 被害増えてるだろ! ここは敵の情報を聞き出して被害を下げる場面じゃないのかよ!」
「だって、敵がいなくなるとわしは張り合いが無くなって困るからのう」
「困っているのはみんなだろ!」
テレビの向こうでは国防軍とメカディザスターが戦っている。いつもより町の被害が増えていた。手毬の苦労が偲ばれる。
災獣の味方の輪廻は始めて会った時のように落ち着いた態度を見せながら、パンを食べていた。
「お陰で計画を続行する目途が立ちました。わたしはこれからも自分に与えられた役割を務め、観察と記録を続けていきます」
「敵と味方の大将がいるなんて、ここはとんでもない席だぜ!」
あるいは両方とも敵かもしれない。隼人は立ち上がる。
「どこへ行くのじゃ?」
「決まってるだろ。ロボットに乗って活躍してくるんだよ」
「隼人」
「なんだ?」
「お前、ちょっと嬉しいと思っているじゃろ」
「思ってねえよ!」
自分まで変人だと思われてはたまったものではない。祖父と血は繋がっていても同類ではないのだ。
隼人は誤魔化すように目を逸らし、部屋を出ようとする。
その前に輪廻が席を立ち、隼人の傍にやってきた。
目の前で行儀よく立つ少女。何をするのかと身構えつつ見ていると、輪廻は礼儀正しく頭を下げて、はにかんだような笑みを見せた。
「助けてくれてありがとうございました」
「ああもう、お前はそこで座って見てろよ!」
聖女のような笑みに隼人は照れくさくなってしまう。彼女には何の悪意も無かった。ただ自分の使命を果たそうと一生懸命なだけで。
輪廻の知識と使命感に心打たれた者達によって、彼女が教団のボスに祀り上げられたのももしかしたら自然なことだったのかもしれない。
今日も輪廻を崇める人達が、ニュースで災獣は神の使いだとか勝手なことを言っていた。
隼人はロボットの格納庫へ向かう。着いた時、ちょうどエレベーターから桃乃と律香が降りてきた。
「隼人さん!」
「外は大変なことになってますよ!」
「分かってる!」
その大変なことが身内のやったことだと言う必要は無いだろう。小学生にはショックが強いかもしれない。
今はただロボットに乗り込もう。敵を倒すために。
「行こうぜ、桃乃、律香!」
「はい!」
「もちろんです!」
心強い仲間達とともに隼人は出撃する。
「俺達がロボットに乗って活躍するぜ!」
平和を守るために。三機のロボット達が飛び立っていった。
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