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出会いは突然に…
ため息の正体。 リュシアン視点。
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夜会から帰ってきてあっという間に1ヶ月が過ぎた。
自分の気持ちを自覚してからというもの、日に日にリディアーヌ嬢に会いたいという気持ちが強くなっていく。
と言っても、相手は俺の事をきっと知りもしないのだろうが…
「はぁ…」
「どうしたんだ?そんなため息をついて…」
どうやら自分でも気づかないうちにため息をついていた事に驚く。
実はこの1ヶ月、何度かオデール公爵領に手紙を送っていた。しかし一向に手紙の返事が来ることはなく、いつも宛先不明で戻ってくるばかり…
以前、父上も行っていたがオデール公爵領には中々手紙が届かないと言っていた。
恐らくこういうことなのだろう。
この間に他に婚約者が決まってしまったらどうしようか…。
はぁ…
「リディアーヌ嬢にひと目でいいから会いたいものだ…って感じか?」
書類に目を通しているともう一度横から声が聞こえてくる。
まるで俺の心の声を代弁していているような話し方をしてくるのは…
「なんだ。サミュか…。」
「なんだとはなんだ!借りにもこの国の王太子だぞ。さっきから話しかけているというのに…お前がため息ばかりついて、仕事に手が付いていないから声をかけているんだ。」
書類に目を通しているし、そんなつもりは無かったんだが…
「はぁ…本当に気づいていないのか?周りを見て見ろ。書類の山は減るどころか増えているし、それにその書類…何回みているんだ。」
サミュに言われた通り周りを見渡すと、書類の山が3つほど出来上がっていた。いつもだったらこの時間にはほとんど片付いているというのに、大失態である…
「すまない。リディアーヌ嬢に手紙を送ってみてるんだが…なかなか届かなくてな…」
そんな俺の言葉に反応したのは、サミュエルの二つ下の弟で第2王子殿下のガブリエルだ。
「あぁ…それは恐らく…こちらが原因じゃないでしょうか?」
書類の山から1枚の紙を持って近寄ってくる。
ガブリエルから書類を受け取り読んでいくと、セリエール国の実状が書かれていた…。
現在、セリエール国は色々と大変なことになっているようだ。
「オデール公爵家がセリエール国から独立か…」
「えぇ…セリエール国はオデール公爵領があってこそ何とか保っていた国ですからね。今頃その皺寄せが起きているんじゃないでしょうか?」
セリエール国が小さいながらも無くならず耐え続けてこれたのはセリエール国の半分以上を占めている樹海の存在が大きい。
そしてこの樹海に生きる者たちこそが、オデール公爵領の民たちで、元アルデール国民である。
オデール公爵領と名前を変えた今でもこの樹海はアルデール樹海と言われ続けているほど、昔からアルデール国の存在は大きい。
「アルデール国か…リディアーヌ・アルデール。とてもいい響きだ。オデールよりあっている…。」
「いや、今はそこじゃないだろ。リュシー…それよりもここを読んでくれ…」
サミュが別の書類を持ってきたので読んでみると…
そこにはセリエール国は今まで以上の財政難に陥っていると書かれていた。
今までオデール公爵が出資していたものが全て止まるのだ。同じ生活をしていたのでは底を尽きるのも時間の問題だろう。
「フッ…財政難か…そもそも経った1ヶ月…公爵家が一つ無くなったくらいで財政難に陥るって相当だな。」
「今まで贅沢三昧してきたんだろうな。下手したら王族だけでなくほかの貴族も私腹を肥やしていたのかもしれない…」
確かにそれはと大きそうだ。
そう言えば、アルデール国はセリエール国に吸収されたんだったか…
アルデール国はアルデール国として存続し続けることも出来ただろう。
「サミュ。ガブ。お前達は何故アルデール国がセリエール国になったのか。アルデール国の歴日は知っているか…?」
「そう言えば…あまりアルデール国のことを知る者はいないですね。アルデール国についての文献はほとんど残っておらず、父上たちに聞いても殆ど教えてはくれませんでした。」
「俺もそうだな…あぁ、でも一つだけ。先日の夜会で思ったことがある。セリエールの貴族たちはリディアーヌ嬢の事をよく思っていないと言うのはわかったぞ。」
それはあのクズ王太子と、その隣で泣き喚いていたキャロットとかいう女のせいでは無いだろうか…
「恐らく、あの騒動のせいだけじゃない。あそこにいた貴族たちはあの騒動をまるでいつもの事というような感じで見ていたし、誰も助けようとしていなかっただろ?」
「…確かに…」
それにあの時、どこからどう見てもキャロットが自分でわざと転んで、わざと飲み物を自分にかけていた。
普通転んだら持っているグラスの中身も転んだ方向に飛ぶことがほとんど…なのに全て自分にかかっていたし、リディアーヌ嬢は壁によりかかっていてキャロットの位置から離れていた。
「あの状態で味方をするものは誰もいなかった…それが答え…という事か…」
「そういう事だ。これ以上は父上達に聞いても教えてくれるかどうか…寧ろ先代たちしか知らないということも多そうだがな。」
先代たちか…この平和協定を作り、国に安寧をもたらせた一人。
今は亡きもの達に話を聞くのは無理がありそうだな…。
「そうか…セリエール国の現状は何となくわかった。それで今のアルデール国はどうなっているんだ?」
「それが…今の現状を知るものがいません。もともと閉鎖的な国だったというのもあるのだと思いますが…」
今後のアルデール国の動き次第ではセリエール国の動きも変わってくるかもしれない…
下手したらアルデール樹海に手を出すなんてこともしそうだ…。最悪、戦になる可能性もあるか…。
「アルデール国とセリエール国が戦になるのだけは避けたい所だな…」
どうやらサミュも同じ事を考えていたようだ。サミュの言葉に俺は頷いた。
「…そうだな。」
自分の気持ちを自覚してからというもの、日に日にリディアーヌ嬢に会いたいという気持ちが強くなっていく。
と言っても、相手は俺の事をきっと知りもしないのだろうが…
「はぁ…」
「どうしたんだ?そんなため息をついて…」
どうやら自分でも気づかないうちにため息をついていた事に驚く。
実はこの1ヶ月、何度かオデール公爵領に手紙を送っていた。しかし一向に手紙の返事が来ることはなく、いつも宛先不明で戻ってくるばかり…
以前、父上も行っていたがオデール公爵領には中々手紙が届かないと言っていた。
恐らくこういうことなのだろう。
この間に他に婚約者が決まってしまったらどうしようか…。
はぁ…
「リディアーヌ嬢にひと目でいいから会いたいものだ…って感じか?」
書類に目を通しているともう一度横から声が聞こえてくる。
まるで俺の心の声を代弁していているような話し方をしてくるのは…
「なんだ。サミュか…。」
「なんだとはなんだ!借りにもこの国の王太子だぞ。さっきから話しかけているというのに…お前がため息ばかりついて、仕事に手が付いていないから声をかけているんだ。」
書類に目を通しているし、そんなつもりは無かったんだが…
「はぁ…本当に気づいていないのか?周りを見て見ろ。書類の山は減るどころか増えているし、それにその書類…何回みているんだ。」
サミュに言われた通り周りを見渡すと、書類の山が3つほど出来上がっていた。いつもだったらこの時間にはほとんど片付いているというのに、大失態である…
「すまない。リディアーヌ嬢に手紙を送ってみてるんだが…なかなか届かなくてな…」
そんな俺の言葉に反応したのは、サミュエルの二つ下の弟で第2王子殿下のガブリエルだ。
「あぁ…それは恐らく…こちらが原因じゃないでしょうか?」
書類の山から1枚の紙を持って近寄ってくる。
ガブリエルから書類を受け取り読んでいくと、セリエール国の実状が書かれていた…。
現在、セリエール国は色々と大変なことになっているようだ。
「オデール公爵家がセリエール国から独立か…」
「えぇ…セリエール国はオデール公爵領があってこそ何とか保っていた国ですからね。今頃その皺寄せが起きているんじゃないでしょうか?」
セリエール国が小さいながらも無くならず耐え続けてこれたのはセリエール国の半分以上を占めている樹海の存在が大きい。
そしてこの樹海に生きる者たちこそが、オデール公爵領の民たちで、元アルデール国民である。
オデール公爵領と名前を変えた今でもこの樹海はアルデール樹海と言われ続けているほど、昔からアルデール国の存在は大きい。
「アルデール国か…リディアーヌ・アルデール。とてもいい響きだ。オデールよりあっている…。」
「いや、今はそこじゃないだろ。リュシー…それよりもここを読んでくれ…」
サミュが別の書類を持ってきたので読んでみると…
そこにはセリエール国は今まで以上の財政難に陥っていると書かれていた。
今までオデール公爵が出資していたものが全て止まるのだ。同じ生活をしていたのでは底を尽きるのも時間の問題だろう。
「フッ…財政難か…そもそも経った1ヶ月…公爵家が一つ無くなったくらいで財政難に陥るって相当だな。」
「今まで贅沢三昧してきたんだろうな。下手したら王族だけでなくほかの貴族も私腹を肥やしていたのかもしれない…」
確かにそれはと大きそうだ。
そう言えば、アルデール国はセリエール国に吸収されたんだったか…
アルデール国はアルデール国として存続し続けることも出来ただろう。
「サミュ。ガブ。お前達は何故アルデール国がセリエール国になったのか。アルデール国の歴日は知っているか…?」
「そう言えば…あまりアルデール国のことを知る者はいないですね。アルデール国についての文献はほとんど残っておらず、父上たちに聞いても殆ど教えてはくれませんでした。」
「俺もそうだな…あぁ、でも一つだけ。先日の夜会で思ったことがある。セリエールの貴族たちはリディアーヌ嬢の事をよく思っていないと言うのはわかったぞ。」
それはあのクズ王太子と、その隣で泣き喚いていたキャロットとかいう女のせいでは無いだろうか…
「恐らく、あの騒動のせいだけじゃない。あそこにいた貴族たちはあの騒動をまるでいつもの事というような感じで見ていたし、誰も助けようとしていなかっただろ?」
「…確かに…」
それにあの時、どこからどう見てもキャロットが自分でわざと転んで、わざと飲み物を自分にかけていた。
普通転んだら持っているグラスの中身も転んだ方向に飛ぶことがほとんど…なのに全て自分にかかっていたし、リディアーヌ嬢は壁によりかかっていてキャロットの位置から離れていた。
「あの状態で味方をするものは誰もいなかった…それが答え…という事か…」
「そういう事だ。これ以上は父上達に聞いても教えてくれるかどうか…寧ろ先代たちしか知らないということも多そうだがな。」
先代たちか…この平和協定を作り、国に安寧をもたらせた一人。
今は亡きもの達に話を聞くのは無理がありそうだな…。
「そうか…セリエール国の現状は何となくわかった。それで今のアルデール国はどうなっているんだ?」
「それが…今の現状を知るものがいません。もともと閉鎖的な国だったというのもあるのだと思いますが…」
今後のアルデール国の動き次第ではセリエール国の動きも変わってくるかもしれない…
下手したらアルデール樹海に手を出すなんてこともしそうだ…。最悪、戦になる可能性もあるか…。
「アルデール国とセリエール国が戦になるのだけは避けたい所だな…」
どうやらサミュも同じ事を考えていたようだ。サミュの言葉に俺は頷いた。
「…そうだな。」
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