氷の貴公子は隣国の仮面令嬢に恋をする。

ゆずこしょう

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告白。

アルデールの過去。 リュシアン視点。

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アルデール国に着いてから数日。

あの後すぐに、サミュエルも目を覚まし、今ではアルデール国を満喫している。
ここに来て思ったが、アルデール国の人たちは優しい人がおおい。見るからによそ者だという俺たちに対しても快く話しかけてくれる。

ここに来てすぐの頃、普通だったら余所者がきたら警戒でもするところだろうが、邸の人たちが誰一人としてそんな素振りを見せなかったことには驚いたものだ。

一度そのことについてリディアーヌ嬢に聞いたことがある。

「何故、ここの人たちは俺たちのような者にも普通に接してくれるんだろうか。」


「それは、アルデール樹海を抜けてきたからですね。アルデール樹海を抜けてこの国にただりつく人は心根の優しい人だけ。昔からそう言い伝えられています。それに一度外の国を経験している人たちは知っているんですよ。迫害される辛さを…だからだと思います。」


それからリディアーヌ嬢はこの国の人たちが今までどのような扱いを受けてきたか教えてくれた。

耳の先端が長く尖っていることから耳長族と言われ蔑まれてきたこと。
それなのに見目は美しいという理由から愛玩奴隷にされたり、普通の人よりも頑丈という理由から戦奴隷として戦に参加させたらていたこと。


聞けば聞くほど気持ちのいいものではなかった。サミュも同じことを思ったのだろう…苦虫をかんだような顔をしている。


「そうか…」


「それと…私たちが外の国で気持ち悪がられ理由がもう一つあるんです。この国に来てから何か感じることはありませんでしたか…?」


何か、感じること…?


そう言われてみると一つ思ったことがあった。


「あまり、年の取った方がいないように感じる。リディーの父君や母君もとてもお若い。40歳を超えていると聞いたときは驚いた。初めはお二人のことを兄妹なのではないかと思ったほどだ…」


そう、俺たちが目覚めてすぐリディーはアルデール国王陛下と、王妃様に紹介してくれた。

俺たちが自己紹介すると、
「ここでは王族も民も関係ないんだ。気楽にしてほしい。王族なんて名前だけのものだからね。アルデール国はいいところだから満喫していってくれ」と笑いながら言っていたのを思い出す。


「そういうことです…私たちアルデール国民は他の国の方々と比べて長命なんです。他の国の方々の平均寿命が70歳前後としたら、私たちはその倍の150歳くらいとなります…。そして不思議なんですけど…20歳から100歳まではほとんど見た目が変わりません。100歳を過ぎたあたりから少しずつ見た目に変化が出てくるんです。」


「そうか…」


「君はいくつなんだい?リディアーヌ嬢。」
この話をきいて、サミュはもしかしたら年上なのではないかと思ったのかもしれない。


「私は…16歳です。もうすぐ17歳になりますね。」

この際、リディーがいくつでも好きなことに変わりはないからめげずに求婚する気でいたが、自分より年下と聞いて少しばかり安心した。

「不思議ですね。このお話をすると大抵の人は驚くんですよ。昔はそのことを知った他国の王族たちが私たちを食せば長生きできるのではないか…と考えた者もいるようで…」

昔というのは恐らく数十年以上前のことだろうか。平和協定ができる前のことだろう。
この辺りは領地争いが絶えずずっと戦をしていた。今でこそ奴隷制度は廃止されているが、その頃だろうな…戦奴隷や、愛玩奴隷にされていたのは…


「それからですね。どこかの国に属するのが一番自分たちの安寧を守れるのではないかとその時の先代は思ったようです。」


「昔のセリエール国は平和主義だったからな。それに他国の中央に位置するからか移民してくる人も多かったと聞く。差別思考も他の国より少なかっただろう。まぁ…今の王族はクズばかりだが…」


サミュの言葉に頷いてからリディーは話を続けた。


「そういうことです。セリエール国はがあのようになってしまったのは先代が亡くなって先代の弟があの地を治めるようになってからです。先代にはお子さんがいらっしゃらなかったと聞いています。それが何かしらのきっかけだたのかもしれませんね。」

リディーの話を聞きながら、色々なことを考えていると、リディーが顔を近づけて、「どうかなさいましたか?」と聞いてきた。
急に顔を近づけるのはやめてほしい…心の準備というものが…


「いや…今日もリディーは美しいなと思っていたんだ。私と婚約してくれ。」


「あ、あの…今の話を聞いてもそのようなこと仰るのですね…?私たちのことが気持ち悪くはないのですか?」

ほのかに頬が赤くなっているところを見ると少し恥ずかしいみたいだ。

気持ち悪い?そんなこと思うはずがないだろう…


「俺より長生きしてくれるということだろう?愛しいリディーを残して先に逝くことには変わりないが、俺は君に看取ってもらえるんだ。それ以上に幸せなことはない。あぁ…でも寂しい思いをさせるのは気が引けるな。俺がいなくなった後もできれば俺だけを想っていてほしい…」


茹でたタコのように真っ赤になっていくリディー。何か変なこと言っただろうか…サミュの方を見ると、サミュは声を抑えて笑っている。

俺は思っていたことを言っただけなのだが…。リディーの方に顔を戻すと、恥ずかしそうにしながら外に出て行った。

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