16 / 23
告白。
セリエール国の今。ガブリエル視点。
しおりを挟む
サミュエル兄上がいなくなって1ヶ月は経っただろうか…
家臣たちは大慌てでサミュエル兄上を探していたが、父上に母上、そして私はのほほんとその様子を眺めていた。
「サミュエル王太子殿下がいなくなったんですよ!?何故そんなに悠長にしていられるのですか!?」
兄上の従者であるジークもいつものことだという感じでその言葉を聞いても慌てる様子はない。
事の発端は、リュシアンの一言。
「アルデール国に行ってくる。」
この言葉を聞いた時の兄上の顔ときたら、目をキラキラと光らせながら話を聞いていた。
私はその時に悟った…。兄上は着いていく気満々だと…
そしてリュシアンは全ての引継ぎを私と、エミールにした次の日アルデール樹海へと旅立っていったのである。
そして案の定、リュシアンが旅立った同日から兄上も姿を消した…。
「だってなぁ…サミュエルだし…なぁマリエルよ…」
「そうですね…あの子は王太子殿下ですが自由奔放ですし…ねぇ…ガブリエル?」
「そうですね。父上、母上。」
「「「今頃アルデール樹海にいるはずだ(よ)。」」」
皆同じことを考えていたようで、言葉がきれいに合わさった。
もう少し王太子としての仕事をしてほしいところだが、こればかりは仕方がない…。それに兄上には兄上のいいところがある。
国民を大切に思っていること。
誰よりも国を豊かにしようと思っていること。
そして平和を願っていることだ…。
だからこそ私は兄上のやることを邪魔したくはない。
補えるところはお互いで補えばいい。それが兄上の言葉でもあるしね。
きっと今だって国のことを思って動いてくれていると信じている…
いや…今回は好奇心の方が大きそうだけど…。
そんなことを思っていると1通の手紙が兄上から届いた。
「至急、セリエール国の実状を調べてくれ。」と一言だけ書かれている手紙が…
「はぁ…本当に人使いが荒いですね…兄上は…」
私はため息をついてからジークにセリエール国について調査してきてほしいと伝えるとそのままこの場を去っていく。
兄上は一体何をするつもりなのか…
それよりも、私も一度は美しい国と言われるアルデール国に行ってみたいものだ。
ジーク視点。
ガブリエル様にセリエール国の調査を任されたためセリエール国まで来てみましたが、
そこは本当にセリエール国か…と思うほどに荒れていました。
確か以前来たのは従者としてサミュエル王太子殿下について行った時ですから、平和協定会議の時でしょうか。
今からもう3か月くらい前になりますか…。
その時は国全体に活気があり小さい国ながらも栄えていたという記憶がございます。
もしかしたら表の部分だけなのかもしれませんが…
しかし、今はどうでしょうか。
町の中は人が全然おらず、いるのはいわゆる浮浪者と呼ばれるような人たちばかり…。
お店というお店は開いておらず閑散としています。
宿屋に入ってみると、酒瓶を片手に持った主人が出てきました。
「すみません。ここに宿泊をしたいのですが…」
「あぁ~…できなくはないが、今のセリエール国に長くいるころはおすすめしないぜ。」
普通であれば宿屋に泊ってくれるお客様を嬉しがるものだと思いますが、そんな素振りは一切見せません。寧ろ早く国を出たほうがいいという始末…
一体何が起きているのでしょうか。
「そうですか…知っている範囲でいいので教えていただきたいのですが今何が起きているのですか?」
「あぁ~…オデール公爵が独立したことが発端だろうな。この国に未来はないと言って皆出て行っちまったんだ。」
やはり…そういうことでしたか。
それにしてもアルデール国に行くことは無理なはず…皆さんどこに流れて行ったのかが気になりますね。
この辺りだと平和協定を結んでいる国のどこかだと思いますが…
平和協定を結んでいる国々であれば移国も難しくはありません。まだセリエール国も協定国でありますし…。
「そうでしたか…あなたはどうしてこちらに残っているのですか?」
「残っているってわけでもねぇよ。ただ妻が妊婦でね。今は動けないからもう少ししてからと思っているだけさ…と言ってもその前に税金払うのが精一杯になりそうだがな…」
なるほど…そういうことでしたか…確かに身重の方がいるとここから徒歩での移動はかなり大変ですよね。
馬車など出せればいいですが、それなりの金額になりますし難しいことでしょう。
でもこのまま置いて行くのもなんだか気が引けますね…。
サミュエル王太子殿下だったらどうするでしょうか…
きっとこのまま見捨てるなんてことはしませんね。
「もしよければルノアール国に一緒に行きませんか。馬車なので奥様も一緒に移動できますし…できればもう少しお話伺いたいのですが…」
宿屋の仕事をしているということはそれなりに情報が入って来るでしょう。
それにルノアール国であれば仕事も見つけやすいですし、色々補助を受けることができます。
その辺りはサミュエル王太子殿下とリュシアン様が頑張って取り組まれてきたとこですからね…。
「え…いいのかい…?」
「勿論です。このままここにいてもあまりよくはないでしょう。他にも似たような方がいれば声をかけておいてください。その前に1通手紙を送りたいので、あちらの席をお借りしますね。」
私はここで知りえた情報と、これから何人かをルノアール国にお連れする手紙をガブリエル殿下宛に送りました。
そのあと私は急いで馬車を手配し、皆を乗せるとこの場を離れました。
「セリエール国がなくなるのも時間の問題かもしれませんね…」
家臣たちは大慌てでサミュエル兄上を探していたが、父上に母上、そして私はのほほんとその様子を眺めていた。
「サミュエル王太子殿下がいなくなったんですよ!?何故そんなに悠長にしていられるのですか!?」
兄上の従者であるジークもいつものことだという感じでその言葉を聞いても慌てる様子はない。
事の発端は、リュシアンの一言。
「アルデール国に行ってくる。」
この言葉を聞いた時の兄上の顔ときたら、目をキラキラと光らせながら話を聞いていた。
私はその時に悟った…。兄上は着いていく気満々だと…
そしてリュシアンは全ての引継ぎを私と、エミールにした次の日アルデール樹海へと旅立っていったのである。
そして案の定、リュシアンが旅立った同日から兄上も姿を消した…。
「だってなぁ…サミュエルだし…なぁマリエルよ…」
「そうですね…あの子は王太子殿下ですが自由奔放ですし…ねぇ…ガブリエル?」
「そうですね。父上、母上。」
「「「今頃アルデール樹海にいるはずだ(よ)。」」」
皆同じことを考えていたようで、言葉がきれいに合わさった。
もう少し王太子としての仕事をしてほしいところだが、こればかりは仕方がない…。それに兄上には兄上のいいところがある。
国民を大切に思っていること。
誰よりも国を豊かにしようと思っていること。
そして平和を願っていることだ…。
だからこそ私は兄上のやることを邪魔したくはない。
補えるところはお互いで補えばいい。それが兄上の言葉でもあるしね。
きっと今だって国のことを思って動いてくれていると信じている…
いや…今回は好奇心の方が大きそうだけど…。
そんなことを思っていると1通の手紙が兄上から届いた。
「至急、セリエール国の実状を調べてくれ。」と一言だけ書かれている手紙が…
「はぁ…本当に人使いが荒いですね…兄上は…」
私はため息をついてからジークにセリエール国について調査してきてほしいと伝えるとそのままこの場を去っていく。
兄上は一体何をするつもりなのか…
それよりも、私も一度は美しい国と言われるアルデール国に行ってみたいものだ。
ジーク視点。
ガブリエル様にセリエール国の調査を任されたためセリエール国まで来てみましたが、
そこは本当にセリエール国か…と思うほどに荒れていました。
確か以前来たのは従者としてサミュエル王太子殿下について行った時ですから、平和協定会議の時でしょうか。
今からもう3か月くらい前になりますか…。
その時は国全体に活気があり小さい国ながらも栄えていたという記憶がございます。
もしかしたら表の部分だけなのかもしれませんが…
しかし、今はどうでしょうか。
町の中は人が全然おらず、いるのはいわゆる浮浪者と呼ばれるような人たちばかり…。
お店というお店は開いておらず閑散としています。
宿屋に入ってみると、酒瓶を片手に持った主人が出てきました。
「すみません。ここに宿泊をしたいのですが…」
「あぁ~…できなくはないが、今のセリエール国に長くいるころはおすすめしないぜ。」
普通であれば宿屋に泊ってくれるお客様を嬉しがるものだと思いますが、そんな素振りは一切見せません。寧ろ早く国を出たほうがいいという始末…
一体何が起きているのでしょうか。
「そうですか…知っている範囲でいいので教えていただきたいのですが今何が起きているのですか?」
「あぁ~…オデール公爵が独立したことが発端だろうな。この国に未来はないと言って皆出て行っちまったんだ。」
やはり…そういうことでしたか。
それにしてもアルデール国に行くことは無理なはず…皆さんどこに流れて行ったのかが気になりますね。
この辺りだと平和協定を結んでいる国のどこかだと思いますが…
平和協定を結んでいる国々であれば移国も難しくはありません。まだセリエール国も協定国でありますし…。
「そうでしたか…あなたはどうしてこちらに残っているのですか?」
「残っているってわけでもねぇよ。ただ妻が妊婦でね。今は動けないからもう少ししてからと思っているだけさ…と言ってもその前に税金払うのが精一杯になりそうだがな…」
なるほど…そういうことでしたか…確かに身重の方がいるとここから徒歩での移動はかなり大変ですよね。
馬車など出せればいいですが、それなりの金額になりますし難しいことでしょう。
でもこのまま置いて行くのもなんだか気が引けますね…。
サミュエル王太子殿下だったらどうするでしょうか…
きっとこのまま見捨てるなんてことはしませんね。
「もしよければルノアール国に一緒に行きませんか。馬車なので奥様も一緒に移動できますし…できればもう少しお話伺いたいのですが…」
宿屋の仕事をしているということはそれなりに情報が入って来るでしょう。
それにルノアール国であれば仕事も見つけやすいですし、色々補助を受けることができます。
その辺りはサミュエル王太子殿下とリュシアン様が頑張って取り組まれてきたとこですからね…。
「え…いいのかい…?」
「勿論です。このままここにいてもあまりよくはないでしょう。他にも似たような方がいれば声をかけておいてください。その前に1通手紙を送りたいので、あちらの席をお借りしますね。」
私はここで知りえた情報と、これから何人かをルノアール国にお連れする手紙をガブリエル殿下宛に送りました。
そのあと私は急いで馬車を手配し、皆を乗せるとこの場を離れました。
「セリエール国がなくなるのも時間の問題かもしれませんね…」
103
あなたにおすすめの小説
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる