氷の貴公子は隣国の仮面令嬢に恋をする。

ゆずこしょう

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告白。

セリエール国の今。ガブリエル視点。

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サミュエル兄上がいなくなって1ヶ月は経っただろうか…


家臣たちは大慌てでサミュエル兄上を探していたが、父上に母上、そして私はのほほんとその様子を眺めていた。


「サミュエル王太子殿下がいなくなったんですよ!?何故そんなに悠長にしていられるのですか!?」

兄上の従者であるジークもいつものことだという感じでその言葉を聞いても慌てる様子はない。

事の発端は、リュシアンの一言。

「アルデール国に行ってくる。」

この言葉を聞いた時の兄上の顔ときたら、目をキラキラと光らせながら話を聞いていた。


私はその時に悟った…。兄上は着いていく気満々だと…

そしてリュシアンは全ての引継ぎを私と、エミールにした次の日アルデール樹海へと旅立っていったのである。

そして案の定、リュシアンが旅立った同日から兄上も姿を消した…。


「だってなぁ…サミュエルだし…なぁマリエルよ…」


「そうですね…あの子は王太子殿下ですが自由奔放ですし…ねぇ…ガブリエル?」


「そうですね。父上、母上。」


「「「今頃アルデール樹海にいるはずだ(よ)。」」」

皆同じことを考えていたようで、言葉がきれいに合わさった。
もう少し王太子としての仕事をしてほしいところだが、こればかりは仕方がない…。それに兄上には兄上のいいところがある。

国民を大切に思っていること。

誰よりも国を豊かにしようと思っていること。

そして平和を願っていることだ…。

だからこそ私は兄上のやることを邪魔したくはない。
補えるところはお互いで補えばいい。それが兄上の言葉でもあるしね。


きっと今だって国のことを思って動いてくれていると信じている…


いや…今回は好奇心の方が大きそうだけど…。


そんなことを思っていると1通の手紙が兄上から届いた。


「至急、セリエール国の実状を調べてくれ。」と一言だけ書かれている手紙が…


「はぁ…本当に人使いが荒いですね…兄上は…」

私はため息をついてからジークにセリエール国について調査してきてほしいと伝えるとそのままこの場を去っていく。

兄上は一体何をするつもりなのか…
それよりも、私も一度は美しい国と言われるアルデール国に行ってみたいものだ。



ジーク視点。

ガブリエル様にセリエール国の調査を任されたためセリエール国まで来てみましたが、
そこは本当にセリエール国か…と思うほどに荒れていました。

確か以前来たのは従者としてサミュエル王太子殿下について行った時ですから、平和協定会議の時でしょうか。

今からもう3か月くらい前になりますか…。

その時は国全体に活気があり小さい国ながらも栄えていたという記憶がございます。
もしかしたら表の部分だけなのかもしれませんが…

しかし、今はどうでしょうか。
町の中は人が全然おらず、いるのはいわゆる浮浪者と呼ばれるような人たちばかり…。
お店というお店は開いておらず閑散としています。

宿屋に入ってみると、酒瓶を片手に持った主人が出てきました。

「すみません。ここに宿泊をしたいのですが…」


「あぁ~…できなくはないが、今のセリエール国に長くいるころはおすすめしないぜ。」

普通であれば宿屋に泊ってくれるお客様を嬉しがるものだと思いますが、そんな素振りは一切見せません。寧ろ早く国を出たほうがいいという始末…

一体何が起きているのでしょうか。

「そうですか…知っている範囲でいいので教えていただきたいのですが今何が起きているのですか?」


「あぁ~…オデール公爵が独立したことが発端だろうな。この国に未来はないと言って皆出て行っちまったんだ。」


やはり…そういうことでしたか。


それにしてもアルデール国に行くことは無理なはず…皆さんどこに流れて行ったのかが気になりますね。



この辺りだと平和協定を結んでいる国のどこかだと思いますが…
平和協定を結んでいる国々であれば移国も難しくはありません。まだセリエール国も協定国でありますし…。


「そうでしたか…あなたはどうしてこちらに残っているのですか?」

「残っているってわけでもねぇよ。ただ妻が妊婦でね。今は動けないからもう少ししてからと思っているだけさ…と言ってもその前に税金払うのが精一杯になりそうだがな…」

なるほど…そういうことでしたか…確かに身重の方がいるとここから徒歩での移動はかなり大変ですよね。
馬車など出せればいいですが、それなりの金額になりますし難しいことでしょう。
でもこのまま置いて行くのもなんだか気が引けますね…。

サミュエル王太子殿下だったらどうするでしょうか…

きっとこのまま見捨てるなんてことはしませんね。

「もしよければルノアール国に一緒に行きませんか。馬車なので奥様も一緒に移動できますし…できればもう少しお話伺いたいのですが…」

宿屋の仕事をしているということはそれなりに情報が入って来るでしょう。
それにルノアール国であれば仕事も見つけやすいですし、色々補助を受けることができます。
その辺りはサミュエル王太子殿下とリュシアン様が頑張って取り組まれてきたとこですからね…。

「え…いいのかい…?」


「勿論です。このままここにいてもあまりよくはないでしょう。他にも似たような方がいれば声をかけておいてください。その前に1通手紙を送りたいので、あちらの席をお借りしますね。」


私はここで知りえた情報と、これから何人かをルノアール国にお連れする手紙をガブリエル殿下宛に送りました。

そのあと私は急いで馬車を手配し、皆を乗せるとこの場を離れました。


「セリエール国がなくなるのも時間の問題かもしれませんね…」




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