氷の貴公子は隣国の仮面令嬢に恋をする。

ゆずこしょう

文字の大きさ
22 / 23
婚約式

セリエール国の最後。リディアーヌ視点。

しおりを挟む
来て早々、思っていた通りの動きをするエピナールと、セリエール国の国王。

恐らく次は…顔を真っ赤にして怒り始めるはず…

セリエール国王の顔を見ていると思っていた通りに顔が少しずつ赤くなっていく。まるでやかんが少しずつ沸騰していくようだ。


「なんだと!?この私が直々に許すといっておるのだ!!それに私は認めていないぞ!セリエール国から独立することも、エピナールとの婚約破棄もだ。婚約破棄するのであれば…そうだな金貨1億枚を用意すれば破棄してやってもいいだろう。そもそもリディアーヌが全て悪いのだ。エピナールという婚約者がいながら別の男と婚約など断じて許せん!」


「い、い、いちおくぅぅぅ!?」


思わず金貨の金額にお父様も目を回している。そもそも今までだってかなりの金貨を出していたというのに…
そもそも何故私がすべて悪いというのだ。段々聞いていて腹が立っていた私はついに口を開いた。


「セリエール国王陛下。今まで我慢してきましたが…いい加減我慢の限界です!金貨を一億枚用意しろって…それはこちらのセリフですわ。今までオデール領で支払ってきた夜会やお茶会の金額、それとあなたたちが購入した高級品、ドレスすべて合わせたら金貨1億枚を軽く超えております!こちら今までオデール領で肩代わりしてきましただ金額の書類です!そ・れ・と…こちらは今までエピナール王太子殿下がキャロット様に使ってきたお金の金額です。キャロット様とエピナール王太子殿下が一緒に居られるようになってからですから約5年分ほどでしょうか。」


両手に書類を持って2人の前に突き出す。
2人は私から勢いよく紙を取ると紙を破いて証拠隠滅しようとする。

「こんなもん…こうしてやる!」


「全く、キャロットに嫉妬しているからってこんなものまで用意して、そこまで王妃になりたいのか!!」

どうしてそうなるんだ…誰も王妃になりたいなんて思っていないのに…


「あの、全く王妃になりたいなんて思っておりません。私は貴方のことをこれっぽっちも好きだと思ったことがないのです。それに、紙を破かれたところでこちらに控えもありますので…」

もう一枚別の書類を手に取るとずかずかと私に近寄ってきた瞬間、隠していたナイフを大きく振り上げた。
何となく何かを隠し持っているだろうなとは思っていたけどまさかナイフだったとは…。

これは防御が間に合わないなとボーっと眺めていると、リュシアン様が持っていた剣でナイフを防いだ。


「リュシアン様…すみません。」

「大丈夫か…?リディアーヌ…まったく気が強いのも君のいいところだが、君がいなくなったら私は生きていけない。わかってくれ…」

普段あまり表情が動かないリュシアン様が悲しそうな顔をして私を抱きしめてくる。

「申し訳ございません…。」


「いや、いいんだ。君が無事ならそれで…。あとはサミュエルたちに任せよう。」

リュシアン様の後ろを見ると、こちらにサミュエル王太子殿下と、国王陛下、そして平和協定を結んでいる国々の重鎮たちが歩いてくる。


「話は全て聞かせてもらった。君たちは今私の大事な側近の婚約者に手を上げようとしたね。平和協定を結ぶ約束の一つとして、お互いの国の者には手を出さないというルールがある。もし手を出せば…その時は平和協定から抜けてもらうことになるが…それを分かっていて手を出したということでいいだろうか?」

まだ結婚はしていないからアルデール国の民ではあるけれど、リュシアン様と婚約をしているという時点でルノアール国の準国民であることは変わらない。そういうことだろう…


「うっ…私は手を出してはおらん。手を出したのは…エピナールだ!」


「父上!なんてことを言うんですか!?今ナイフを持っているのは父上ではございませんか!!」


罪の擦り付け合いをする2人…擦り付け合いをしたところで何も変わらないというのに…


「見苦しいぞ。セリエール国は今後平和協定から外す事となった。これは平和協定に参加する国々全ての総意である。それだけでは無いぞ。セリエール国に住んでいた半分以上の民たちは現在他の国へ移動している。理由はお前達が一番わかっているだろう。そこでだセリエール国の領地はアルデール国の領地とする。」



「そ、そ、そそんな横暴な!それに勝手に他の国に領地を渡すなど出来るわけないでしょう。」

確かにセリエール国の中の事を他国がホイホイ口に出していいことでは無い…出来るとしたら領地を全て制圧する他ないのだが…


「ま、まさか…」


私の言葉にサミュエル王太子殿下がウインクをしながら口に手を当ててきた。話すなと言うことだろう。


「ふん。お前の国などもう既に私たち平和協定に参加する国が制圧しておる。」
ルノアール国王陛下が、見下すように伝える。


「セリエール国の騎士達は私たちが周りを囲んだだけで白旗を降っているそうだぞ。お前たちを信頼する家臣などもうセリエール国にはいないようだ。」


セリエール国の中で中枢を担っていた貴族たちは全員捕まえたと報告も入っているらしい。

そこまで伝えると、全てが無くなったことを理解した国王陛下は床に膝をついた。

「まさか、そんなまさか…」


信じきれないのかブツブツと何かを言っているが誰も聞く耳を持つものは居なく、この場を去っていった。


こうしてセリエール国はアルデール国と名前を変え、差別のない国を作っていくことになったのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ 学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。 お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。 お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。 レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。 でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。 お相手は隣国の王女アレキサンドラ。 アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。 バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。 バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。 せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

処理中です...