氷の貴公子は隣国の仮面令嬢に恋をする。

ゆずこしょう

文字の大きさ
21 / 23
婚約式

仮の婚約式。

しおりを挟む
⟡.·*.··············································⟡.·*.


リディアーヌ視点。


婚約してからというもの毎日が慌ただしくすぎている。

ドレスを選ぶところから、宝飾品を選ぶところまで…今までだったら1度しか着ないドレスだし、そこにお金をかけるのも…と思っていたこともあって、中古品などを購入していることが多かった。

エピナールはキャロットばかりにお金を使うのでこちらに使える予算がなかったとも言える。


「こんなに色々いいのでしょうか…?」


お義母様がお店の方にどんどん注文をしていくので、私は何もすることが出来ない。ここにリュシアン様がいたら止めてくれるかもしれないけど…スピードが早すぎる…


「いいのよー!リュシアンは、殆どお金を使うことがなかったから、こういう時くらい甘えちゃいなさい。それにリュシアンからも頼まれてるのよ。リディーちゃんに似合うドレスを買ってくれって。」


私の独り言が聞こえていたようで、ドレスのデザインを色々選びながら話しかけてくる。


「そ、そ、そうですか…。」


「そうよ!それに私娘が欲しかったのよぉ。男の子って可愛い服装とかしないでしょぉ?それにリュシーもリュークも仕事人間だから、一緒にお買い物してくれる人いなくて。」

お義母様…きっと寂しかったのね。でも、私も基本仕事ばかりしていたから、こういう時間どうしていいかわかりません。ごめんなさいお義母様…。


「リディーちゃん。リュシアンと婚約してくれてありがとう。あの子はあまり表情が動かないでしょ?そのせいか周りの女の子からは氷の貴公子なんて呼ばれて恐れられてしまってね。なかなか婚約者が出来なかったの。あの子が一目惚れしたと聞いた時は嬉しかったわ。本当にありがとう。あの子を変えてくれて…」


リュシアン様の話は噂だけは聞いていた。とても美しい顔をしているのに全く笑わない…
笑わないどころか表情が動かないから、まるで人形のようだと…

その言葉を聞いて、私と似たような事を言われている人がいるのだなと思ったのを覚えている。

「とんでもないです。私もリュシアン様と出会えてよかったと思っています。好きだからとアルデール樹海を抜けてまで会いに来てくれる人、初めて見ました。それに表情はあまり動かないですが、嘘をつかない人だと言うのは話していて分かります。」


出会ってから、早数ヶ月。


少しづつリュシアン様を好きになっている自覚はある。きっとこの人に愛してもらえれば幸せになれるだろう。


「そう言って貰えて嬉しいわ。リュシアンのこと、これからもよろしくね。」


「はい。こちらこそよろしくお願いいたします。お義母様。」



こうして、話している間にドレスは決まり、あっという間に婚約式の日を迎えることになった。


⟡.·*.··············································⟡.·*.

リュシアン視点。


婚約式の前日、リディーの家族がアルデール国からやってきた。今回の婚約式を2回行うことは前もって伝えてある。1度目は明日、セリエール国から招いて行うこと。その一週間後に本当の婚約式を行うことになっている。


そして、婚約式当日。


「リュシアン様…」


リディアーヌが赤いドレスを着て現れた。


赤いドレスに黄色の装飾。マーメイドドレスといっただろうか。体の線がみえ、足先に行くほど広がっていくドレスの形。

髪をアップにしていてちらりと見えるうなじがとても美しい。


「あの…リュシアン様…?いかがでしょうか?」

あまり体の線が見えるドレスは着たことがないのだろう。少し頬を染めながら話しかけてくるリディーはとてもかわいらしい。


「リディー。とてもよく似合っているよ。すごく美しい。誰にも見せたくないくらいだ…。」


「あ、ありがとうございます。リュシアン様もとても、かっこいいです。」

今回は白貴重のスーツに、裏地は赤色にしてもらった。裏地が見える部分にはシルバーの刺繍が見えるようにしている。

リディーは私のものだというちょっとした独占欲だ。

この位は許して欲しい。


「ありがとう。さぁ、時間だし行こうか。」

二人で並んで会場に向かうと、そこにはルノアール国国王陛下とアルデール国王陛下は勿論のこと他国の重鎮たちも集まっている。

「セリエール国の王族を呼んだと聞いていましたが…それ以外の国の方々もいらしているようですね。」

リディーには伝えていなかったが、セリエール国に対する恨みを持っている国々が今回集まっていたりする。まさかこんなに集まるとは思っていなかったが…


「そうだな…俺たち婚約式を行うだけだ。他は父上たちに任せよう。」


婚約式の会場に入り、本日来てくださった方々に挨拶をしていると、扉の方がやけに騒がしくなった。



「ハハハ。リディアーヌよ。お前を迎えに来たぞ!俺のことが好きで忘れられないと聞いておる。一番には出来ないが…愛人くらいにはしてやろう!!!」


その言葉に皆開いた口が塞がらなかった。


「そうだな。仕方がないリディアーヌだけでは無いぞ!オデール公爵の件についても今回は不問とする。」

エピナールの後ろからセリエール国の国王が現れたのである。すると、アルデール国王陛下がセリエール国王の前にでた。

「私たちがあなたの言う事を聞くことは一切ございません。そもそも今日はリディアーヌとリュシアンの婚約式の場。邪魔をすることは許しません。お引取りを…」

元々何を言ってくるかわかっていた俺たちはシナリオを準備していた。まさかここまではシナリオ通りに行くとは思っていなかったが…


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ 学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。 お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。 お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。 レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。 でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。 お相手は隣国の王女アレキサンドラ。 アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。 バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。 バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。 せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

処理中です...