夫に家を追い出された女騎士は、全てを返してもらうために動き出す。

ゆずこしょう

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再び戦場に!

任期満了。

グラスドラゴンを岩に打ち付け、氷が割れた瞬間を狙って私はレイピアで上から切りつけた。


そして、切りつけると同時にグラスドラゴンは咆哮をあげて暴れ出す。


「お、おい、そんな暴れるなよ。」
グラスドラゴンに落ち着くように話すものの落ち着く気配は無い。
このままでは振り落とされてしまうと感じた私は急いでグラスドラゴンから降りた。

つもりだった…


まさかの地面に着地しようとしたら勢いよく滑って気絶してしまったのである…


「団長、俺が隊長持ちますよ。」

「いや、いい。」

「でも…」

「エル触れるな。バカ。」

意識が浮かび上がる途中、ヘッディーと団長が言い合っている声が聞こえる。

「だ、団長…。」

「え、える!しっかりしろ…える!」

「お、お腹がすきました…」

ここ数日何も食べていないようなそんな気がする。
「全く、3日も寝ていたのに、起きて早々その言葉はなんだ。何か持ってくるから待っていろ。」
少し悪態をつきながらもご飯を持ってきてくれるのは優しい。

というか、ドラゴンを倒す前、死ぬかもしれないと思いながら出ていったにもかかわらず、まさか自分がここまだピンピンしているとは思わなかった。

「まっ、みんな無事ならそれはそれで良かったか…」
誰かがかけるというのだけは避けたかったから本当にいい結果になってよかったと思う。


そして、空から数日後、私はベッドから起き上がりいつもと変わらぬ毎日を送れるまで回復していた。


そしてそこからまた数日後…あっという間にここに来て5年が経っていた


⟡.·*.··············································⟡.·*.


「エルヴィール。前へ!」

「はっ!!」

名前を呼ばれ前へ出ると、騎士団長に向かって1度敬礼をする。

「エルヴィールよ。よく5年間耐え抜いたな。お前の功績には目を見張るものがあった。騎士爵を与えると陛下よりお言葉を賜っている。」

「多大なるお言葉ありがたく存じます。今後も精神誠意ジェリノット国にお仕えいたします。」

片膝をつき叙勲した剣を両手で高く掲げてから口上を述べる。
旦那と言えるか分からない奴から家を追い出された挙句、代わりに魔物討伐に行けと言われた時は何事かと思ったけど、ここまで頑張って来たかいがあったと言うものだ。

剣をしまい、敬礼をしてから列に戻る。

5年間。長かったようであっという間だった。
始めは舐められない様に必死だったが、いつの間にか小隊を任されるようになり、どんどん信頼される部下が増えていったのは素直に嬉しかったものだ。

魔物も減ってきたということで、国への帰還が許された私は野営地に戻り荷物をまとめている。

「隊長!!明日帰ってしまわれるんですよね…折角なんで、今日は呑みましょう!!」

お酒を片手にテントを開けるのは副隊長のルエルだ。

「お前だって任期満了まであと半年だろ。あと勝手にテントを開けるなと言っているだろ。」


「つれないこと言わないでくださいよー。僕と隊長の仲じゃないっすかぁ!」

ルエルは私の半年後に入隊して、何故かその時から懐かれているひとりだ。何度女だと言っても「隊長は隊長っすから~」と返されるばかりで話にならない所がある。

「はぁ。とりあえず皆で酒でも飲むか。」

テントから出るとそこには沢山の隊員たちが集まっていた。

そこかしこから

「隊長おさきー」

「隊長待ってましたよー!」

「隊長先に始めてますよー。」

なんて声が聞こえる。


昔から待つのが苦手な奴らだ。
初めは強面の人ばかりで、私も借りてきた猫の状態になっていたが話してみると気さくな奴らかりですぐに馴染めた。


皆が楽しんでいる姿を片目に少しずつお酒を飲んでいると、どかりと目の前に誰かが座った。

「エル。」

「なんですか。団長…」

「いや…何でもない。」

団長にはこの騎士団に所属してから色々とお世話になってきた。
騎士団はいくつか種類がある。私達のように前線へ赴く騎士団、王族お守りする騎士団、町を護る騎士団など様々だ。その他にも領地ごとに騎士団があると聞いた。


ちなみにこの騎士団の名前はダックワーズ騎士団だ。
簡単な話団長の名前がオディロン・ダックワーズと言う名前だからである。

「団長は帰らないんですか?私が来てから5年間全く帰ってる感じしないですけど…奥さんとか待ってるんじゃないですか?」

「大きなお世話だ…」
そうお酒を豪快に飲んでいく。ダックワーズ家は確か辺境伯だったと記憶している。
お貴族様の話を今考えても仕方ないか…爵位は賜ったがあくまでも騎士爵なだけだ。

「エル隊長!!こっち来て一緒に飲みましょう!」

「わかった。今行くから待ってくれ。」

最近入ったばかりのサジェが呼ぶので、団長に軽く挨拶してからそちらに向かう。

団長はこのままここで飲み続けるようだ。

「隊長がいなくなるの僕寂しいですよ。お兄ちゃんのように思っていたのに…」


「あぁ、私だって寂しいよ。っていうかお兄ちゃんってなんだ?私は女だぞ?」
酔っ払っているサジェの頭を優しく撫でてやる。
というかそんなに男っぽいだろうか。

私たちの会話が聞こえたのか、みんな笑っている。
副隊長なんかはいつものごとく「隊長は隊長っすから、女という括りには入ってないっすよー」と言っている始末だ。

あとで殴りにこうと心に決めた。

そして少し離れたところで呑んでいる団長も肩が揺れているところをみると笑いをこらえているんだろう。

「ったく…本当に酷いやつらだよ。お前らは…」
でも5年間家のことを忘れて楽しく過ごせたのはお前らのおかげだ。
口には出さないけどね。

泣き疲れてないてしまったサジェの隣で皆のことを目に焼き付けようとぐるりと辺りを見渡した。

明日の朝にはここを出るのかと思うとなんだか少し寂しく感じる。
団長は少し無愛想な面もあるが、仲間に対してはとても優しい団長だ。窮地に陥った時も自ら助けに来てくれた。

ここは第2の我が家だな。

「どうしたんすか!隊長!隊長に湿気た面なんて似合わないすよ!」
ガハハハと笑いながら話す男たち。
どうやら最後までしんみりとはさせてくれないようだ。

そしてそれがとてもありがたい。

「すまないね。さぁ、今夜は飲むぞー!」
声を大にして皆に言うと、野太い声で「おー」と返ってきた。
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