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プロローグ
幸せからの絶望。
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「エルヴィール。結婚おめでとう。」
「ありがとう。」
父さんが泣きながら私のウエディングレス姿を見ている。
「お前がスカートを履く日が来るとはな…」
「「えっ!?泣くのそこなの!?」」
そう返したのは兄のラウルと弟のマウロだ。
「別にスカートを履きたくなかった訳じゃない。ただ履くタイミングが無かっただけ。」
小さい頃は私も可愛い女の子に憧れていた…時期もあった。
綺麗なドレスに長い髪や可愛い髪飾りや、フリフリのワンピースにお人形も、周りにいた女の子が持っているものが欲しいなと思った時がある。
7歳くらいまでは…。
特に貧しい家庭という訳でもかったが、母さんがいつも「着れるものは着れるまで来なさい」というので、いつの間にか兄のお下がりばかりきていたのを覚えている。
周りにも男の子の幼馴染が多かったのもあるだろう。兄や弟の友達も合わさると男だらけの中に一人女みたいな感じだ。
おかげで毎日喧嘩に、騎士ごっこなど擦り傷が耐えない毎日だった。
母さんが豪快に笑いながら
「子供は元気なのが1番!」
と言っている隣でお父さんは涙をながしながら
「お、女の子が怪我なんて…跡が残ったらどうするんだよ…」と言っていた記憶が懐かしい。
「母さんにも見せたかったね。」
「きっと今頃、天国で笑ってみてるさ。」
マウロの言葉に私は空を見ながら返す。
男と間違えられるから、せめて髪だけは伸ばして欲しいと父さんに言われて伸ばし続けた。
「お前を貰ってくれる奴がいて良かったな。まぁ近所だしいつでも帰ってこいよ。」
兄が私の方を叩きながら「今日はちゃんと女の子に見えるぞ。」なんて言うものだから少しだけ嬉しかった。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
結婚式は恙無く終わり、夫の顔も小さい頃から知っているからか不思議と新鮮な気持ちは無かった。
きっと初夜も普通に迎えるんだろうなと思って少しドキドキしていると夫からはまさかの言葉が帰ってきた。
「ま、まだ、早いと思うんだ。俺はもう少し二人の時間を大切にしたい。2年も会えなかったんだし…」
確かに、私は2年間騎士団に所属していた関係でなかなか会うことが出来なかった。
洋食屋を手伝うことも考えたけど、
「腕っ節が強いしお前に料理は向いてねぇ」
と兄に言われて、知らない間に騎士団に入っていたくらいだ。
「確かに、2年も会えなかったけど、私たちそんな柄か?小さい頃から知ってる仲だろ?あんたの身体なんかみなれてるって!」
「小さい頃と大人になってからは違うだろ?それにムードも大事だと思うんだ。だからまずは幼馴染から本当の夫婦になることから始めようよ。」
確かに、デートとかもしたことないし、カップルらしいことはしたことが無い。
「わかった。2人の時間もなかなか取れなかったしな。アドルフとの時間を大切にするよ。」
アドルフに笑顔を向けると、赤くなりながら
「こういう時ばかり素直になってずるいんだよ…」
なんて声が聞こえてくる。
「私いつも素直だけど?」
「そういう言葉は拾わなくていいから!」
今のは聞こえないフリをしたほうが良かったのか…と思いながら「ごめん」と一言謝った。
そして二人の時間を半年くらいすごしたあと、少しずつ夫婦の形もできてきたのでは無いかと感じていた。
そろそろ子供かな…なんて思っていた矢先…。
1枚の手紙が届く。
宛名はアドルフ宛だ。
私はアドルフに手紙を渡すと、青い顔をしながら急いで封を開ける。
そこに書かれていたのは
魔物討伐隊への徴集命令だった。
「これって…?」
「魔物討伐の徴集命令だね。」
私はアドルフへ冷静に言葉を返した。
「え!?」
「だから魔物討伐の徴集命令だよ。」
「お、おれに?」
どっこらどうみても宛名にそう書いてあるだろうに…信じられないんだろう。
「そうだね。」
「なんでなんでなんでなんでなんで…なんで俺なんかに…?」
魔物討伐の徴集命令はこの国の男であれば1度は徴集されるものだ。現に兄さんも、マウロも
一度は参加している。
他の幼馴染だって皆参加しているのに、知らなかったのか…?
「いや、この国の男は皆一度徴集されるんだけど。現に兄さんも、マウロも行っているよ。」
ブツブツ「無理無理無理…」なんて言葉が聞こえたけど、現実逃避をしていたところで変わるものでは無い。私は他の人たちも行っていることを伝えた。
「そうだ!」
バッとすごい勢いでこちらを向く。
「君が行けばいいんだ。俺の代わりに…」
「いや、無理だよ。バレるって…」
私は顔を横に振る。
「いいから行ってこいよ!お前の方が強いしガサツだし、男らしいだろ?」
後ろ鞄を投げて渡してくる。
「ほら、さっさと出ていけ。」
「ま、まって私の話を聞けよ!」
私が足を動かさないことに痺れを切らしたのか子供のようにイライラし出す。こんなわがままなやつだっただろうか…。
「聞くことなんてない!」
そう言ってすごい力で私の肩を押して扉まで向かわせる…
「こんな力が出るなら行けるだろ。」
「この結婚だって本当は嫌だったんだ。せいぜい頑張ってくれよ。男女野郎。」
私を無理やり家から追い出した挙句、扉に挟まった髪の毛をハサミで切った。
ここまで横暴なことをされたことよりも、頑張って伸ばしてきた髪を切られたことの方がよっぽど堪えた。
「ありがとう。」
父さんが泣きながら私のウエディングレス姿を見ている。
「お前がスカートを履く日が来るとはな…」
「「えっ!?泣くのそこなの!?」」
そう返したのは兄のラウルと弟のマウロだ。
「別にスカートを履きたくなかった訳じゃない。ただ履くタイミングが無かっただけ。」
小さい頃は私も可愛い女の子に憧れていた…時期もあった。
綺麗なドレスに長い髪や可愛い髪飾りや、フリフリのワンピースにお人形も、周りにいた女の子が持っているものが欲しいなと思った時がある。
7歳くらいまでは…。
特に貧しい家庭という訳でもかったが、母さんがいつも「着れるものは着れるまで来なさい」というので、いつの間にか兄のお下がりばかりきていたのを覚えている。
周りにも男の子の幼馴染が多かったのもあるだろう。兄や弟の友達も合わさると男だらけの中に一人女みたいな感じだ。
おかげで毎日喧嘩に、騎士ごっこなど擦り傷が耐えない毎日だった。
母さんが豪快に笑いながら
「子供は元気なのが1番!」
と言っている隣でお父さんは涙をながしながら
「お、女の子が怪我なんて…跡が残ったらどうするんだよ…」と言っていた記憶が懐かしい。
「母さんにも見せたかったね。」
「きっと今頃、天国で笑ってみてるさ。」
マウロの言葉に私は空を見ながら返す。
男と間違えられるから、せめて髪だけは伸ばして欲しいと父さんに言われて伸ばし続けた。
「お前を貰ってくれる奴がいて良かったな。まぁ近所だしいつでも帰ってこいよ。」
兄が私の方を叩きながら「今日はちゃんと女の子に見えるぞ。」なんて言うものだから少しだけ嬉しかった。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
結婚式は恙無く終わり、夫の顔も小さい頃から知っているからか不思議と新鮮な気持ちは無かった。
きっと初夜も普通に迎えるんだろうなと思って少しドキドキしていると夫からはまさかの言葉が帰ってきた。
「ま、まだ、早いと思うんだ。俺はもう少し二人の時間を大切にしたい。2年も会えなかったんだし…」
確かに、私は2年間騎士団に所属していた関係でなかなか会うことが出来なかった。
洋食屋を手伝うことも考えたけど、
「腕っ節が強いしお前に料理は向いてねぇ」
と兄に言われて、知らない間に騎士団に入っていたくらいだ。
「確かに、2年も会えなかったけど、私たちそんな柄か?小さい頃から知ってる仲だろ?あんたの身体なんかみなれてるって!」
「小さい頃と大人になってからは違うだろ?それにムードも大事だと思うんだ。だからまずは幼馴染から本当の夫婦になることから始めようよ。」
確かに、デートとかもしたことないし、カップルらしいことはしたことが無い。
「わかった。2人の時間もなかなか取れなかったしな。アドルフとの時間を大切にするよ。」
アドルフに笑顔を向けると、赤くなりながら
「こういう時ばかり素直になってずるいんだよ…」
なんて声が聞こえてくる。
「私いつも素直だけど?」
「そういう言葉は拾わなくていいから!」
今のは聞こえないフリをしたほうが良かったのか…と思いながら「ごめん」と一言謝った。
そして二人の時間を半年くらいすごしたあと、少しずつ夫婦の形もできてきたのでは無いかと感じていた。
そろそろ子供かな…なんて思っていた矢先…。
1枚の手紙が届く。
宛名はアドルフ宛だ。
私はアドルフに手紙を渡すと、青い顔をしながら急いで封を開ける。
そこに書かれていたのは
魔物討伐隊への徴集命令だった。
「これって…?」
「魔物討伐の徴集命令だね。」
私はアドルフへ冷静に言葉を返した。
「え!?」
「だから魔物討伐の徴集命令だよ。」
「お、おれに?」
どっこらどうみても宛名にそう書いてあるだろうに…信じられないんだろう。
「そうだね。」
「なんでなんでなんでなんでなんで…なんで俺なんかに…?」
魔物討伐の徴集命令はこの国の男であれば1度は徴集されるものだ。現に兄さんも、マウロも
一度は参加している。
他の幼馴染だって皆参加しているのに、知らなかったのか…?
「いや、この国の男は皆一度徴集されるんだけど。現に兄さんも、マウロも行っているよ。」
ブツブツ「無理無理無理…」なんて言葉が聞こえたけど、現実逃避をしていたところで変わるものでは無い。私は他の人たちも行っていることを伝えた。
「そうだ!」
バッとすごい勢いでこちらを向く。
「君が行けばいいんだ。俺の代わりに…」
「いや、無理だよ。バレるって…」
私は顔を横に振る。
「いいから行ってこいよ!お前の方が強いしガサツだし、男らしいだろ?」
後ろ鞄を投げて渡してくる。
「ほら、さっさと出ていけ。」
「ま、まって私の話を聞けよ!」
私が足を動かさないことに痺れを切らしたのか子供のようにイライラし出す。こんなわがままなやつだっただろうか…。
「聞くことなんてない!」
そう言ってすごい力で私の肩を押して扉まで向かわせる…
「こんな力が出るなら行けるだろ。」
「この結婚だって本当は嫌だったんだ。せいぜい頑張ってくれよ。男女野郎。」
私を無理やり家から追い出した挙句、扉に挟まった髪の毛をハサミで切った。
ここまで横暴なことをされたことよりも、頑張って伸ばしてきた髪を切られたことの方がよっぽど堪えた。
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