夫に家を追い出された女騎士は、全てを返してもらうために動き出す。

ゆずこしょう

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久しぶりの帰還。

戻る前に出来ることをする。

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実家に帰ってきてからあっという間に5日が過ぎた。

この5日は正直何もする気が起きず、家でゴロゴロして終わってしまった。
まるで今までのスイッチが急にオフになってしまったようなそんな感じだ。

「エル姉。そろそろ戻らないといけないんじゃないの?この先どうするか決まったの?」

マウロがお茶を出しながら話しかけてくる。

「んー…うーん…」

「はぁ、本当にいい加減にしないと…そろそろ父さんの雷落ちるからね…」

よく、母さんと父さんは性別が本当は逆なんじゃないかと言われることがある。父さんは几帳面で、涙脆く、すぐウジウジ考える。逆に母さんはガサツで、大変なことがあっても笑っていて、いつも前向きだった。

その分本気で怒ると怖いのは父さんだ。
因みにマウロは父さん似で、私と兄は母さんに似ていると思う…。

「それは…まずいな…。」

手を上に伸ばして軽く伸びをしてから私は動きだした。

「マウロ。私がいない間のアドルフの動きって何か知らないか?」

「んー…アドルフ君のお母さん、お父さんや妹さんはお店によく来てたけど…全くアドルフ君の話はしてなかったね。それに…」
アドルフがこの店に顔を出すことは全くなかったそうだ。だから他に女や子供がいることは知らなかったらしい。

「因みに私が騎士団に入っていた2年間は…知るわけないか。」
騎士団に入っている時は基本寮生活だから外の人と会うことが余りできなかった。可能性としてその時から関係があったのではないかと思ったのだが…

「そうだね。丁度その2年間は…僕もここを離れていたから分からないな。」
魔物討伐に呼ばれるのは15歳からで、私とマウロの年の差は1歳差だ。16歳で騎士団に入った私と同じくしてマウロも魔物討伐に行っている。

「兄さんなら、何かしら知っているかもね…もしかしたら…さ。」

確かに兄さんならその2年間、洋食屋の手伝いをしていたし、そこら辺に舎弟がいるくらいだ。


「確かに、そうだな。兄さんが帰ってきたら聞いてみる。ありがとう。」
マウロは少し話すとお店を開ける時間だと言って店先にむかった。

私はマウロが出してくれたお茶を飲みながらゆっくりこの先のことを考えることにした。

まず1番は浮気についてだ。
これについては立証は難しくないと思っている。ただ、失踪届を出している可能性が高い。

今回の場合はアドルフの名前で魔物討伐に行っているから5年以上連絡が取れなければ死亡扱いとなるはずだ。
因みに魔物討伐に行っている人と3年連絡が取れなければ死亡扱いとなる。

再婚については失踪してから2年以上連絡がなければ可能だが…恐らく再婚はしてないだろう。今再婚したら自分が魔物討伐に行っていないことがバレて給金が支給されなくなるからだ。

「まぁ、魔物討伐に戻ったら今後の給金のことも考えて団長に相談するか…」

あとはこっちの事だが…兄に任せて色々情報を集めてもらうのがいいかもしれない…。兄に頼むのは少し心配だがここぞと言う時は頼りになるはずだ。色々1人で考えていると、リビングに兄が入ってきた。

「エルー!お前俺に聞きたいことがあるんだって?」

「ラウル兄。聞きたいことと、頼み事があるんだけど!」

「げぇー。お前がラウル兄という時はろくな事がないんだけど…。」
舌を出しながら私の前に座る兄さん。本当に失礼な奴だ。

「妹に向かって本当に失礼な奴だな…まぁいいんだけどさ。私が騎士団にいた頃の2年間アドルフが何してたか知らないか?」

「あぁ、お前が寮に入っていた間か…。アドルフが何してたかなぁ……しらん!!まぁ、お前が戦場に行っていた間のことは聞いたけどな。」

やっぱり、この兄は魔物討伐に行っていたことを知っていたのか…
私がジロリと兄を睨むと「教えてやるからそんな顔するな…」と笑いながら言ってくる。

「はじめはお前から手紙が返ってこなかったことを不安に思ったんだよ…」

それに実家が近いのにもかかわらず全く帰ってこなかったらことも不思議だったそうだ。
それからラードンに私のことを調べてもらったら、

「お前が死んだという話を聞いたとか言うんだよ。」
そう言って話す兄さんはすごく辛そうな顔をしていた。額に手を当てながら

「母さんも死んだのが早かったのに、お前まで先立たれたら親父は立ち直れないと思ったんだ。だから死んだ話を聞いたあとラードンにアドルフの周りを調べてもらった。近所づきあいの多い地域だ。火葬したらすぐ話が広がるだろうからな…でも火葬の話は全くなかった…」

調べてもらったら、アドルフは別の女、子供と暮らしていたそうだ。子供は年齢から推測するにこの時2、3歳くらいだったらしい。この間みた5歳の子供だろう。それから最近生まれたのがもう一人の子か。

「だとすると、やっぱり私と結婚する前に子供が生まれていたことになるな。」

「なんだと?」


「だって見たのは2.3年前だろ?その時に、2.3歳だったということは、私が寮にいる間に出来た子という事になる。それに、アドルフと私は初夜を迎えてはいないんだ。」

あいつがまだ二人でいたいと言ったからな…。ただ、それがもし嘘で別に家庭がもうひとつあったとしたら…ずっと騙していたということなのだろう。

「そうなのか!?」
急に肩をガクガク揺さぶるので目が回ってくる。

「あ、あぁ。こんなこと、嘘つくわけないだろ。で、なんで魔物討伐に行っていること知ってたの?」


「それは、オディロンから手紙もらったからな。あいつとは昔からたまに連絡取り合ってんだよ。」

オディロンって誰だ?前に聞いたことがあるような気がするが…

「オディロンって誰だ?」

沈黙が数秒流れたあと、兄さんは大きな声で…

「お前、団長の名前くらい覚えておいてやれよ!」

とガハハハハと笑いだした。
兄さんの言葉に、ダックワーズ団長の名前が確かそんな名前だったなと思い出しのは言うまでもない。
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