25 / 35
全てを返してもらいます。
アドルフくんの最後。
しおりを挟む
兄がメージとロッテの相手をしてくれている間に、私はアドルフに書類を渡す。
「お前には慈悲というものがないのか…」
兄に対してはあまり反抗的な態度を取らないのにやたら私には突っかかってくる。
「その言葉そのままお前に返すよ。」
正直言って、アドルフだけじゃなくガーナからも返済してもらうのが1番早かったのだが、そうしなかった理由がひとつある。
ガーナのことはそこまで恨んでいなかったからだ。ぶっちゃけた話、アドルフとの結婚は親同士が決めたものだったし、好きかどうか聞かれたら普通と答えるくらいのものだった。
「私は無理に結婚する気はなかったんだ。騎士団に2年間行く時点でお前に好きなやつができてもおかしくは無いと思っていたからな。それにお前が私を好きじゃないことくらい分かってたし、私自身も好きか嫌いか聞かれたら普通と答えるくらいだったしな。」
それでも結婚しようと思ったのは、母さんが亡くなる直前に「エルには女の子として幸せになって欲しい」と言われたからだ。
騎士団に入ると言った時、父さんは「やっぱりお前もか…」と言っていた。母さんの昔話をあまり聞くことがなかったけど、父さんの話的に母さんも騎士団にいたのではないかと思う。
自分都合で騎士団に行くことにしたし、もしこの2年で、アドルフに別に好きな人ができたなら、その人と幸せになって欲しいなと思っていたくらいだ。だから正直に話してくれていれば、私は潔く身を引くつもりでいたし、そのまま騎士団にいてもいいと思っていた。
だが…アドルフは結婚しようと言ってきた…
「お前が金に目を眩ませなきゃこんなことにはなってなかった筈だ。全て自業自得だな。あと許せないのはさ。金もそうなんだけど私の伸ばしてきた髪を切ったことなんだよな。」
小さいころから母さんが
「やんちゃでもいいから髪だけは伸ばしなさい。立派なレディになれるわ!」
とよく言っていたから、髪だけは必死に伸ばしてきたんだ。
「髪なんか、切ったって伸びてくるじゃないか!」
「確かにそうだけど違うんだ。お前にとっては髪なんかくらいかもしれないが、私にとってはそれが母との大事な約束なんだ。」
だから、ガーナへの罰はあくまでも重婚という罪だけにしてもらった。
「好きな女の分、お前が頑張れよ。」
サインを貰った書類を手に持ち私はアドルフの前から立ち上がるとアドルフもよろよろと立ち上がった。
「じゃあ、お元気で!アドルフくん!」
全てが片付いて清々しい気持ちで踵を返すとマウロがなにか私に向かって騒いでいる。
「姉さん!危ない!!」
聞こえて後ろを振り向いた瞬間、花瓶を振り上げたアドルフと目が合った。
そして気づいた時には頭に花瓶が直撃していた。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
マウロ視点。
姉さんが書類を受け取り後ろに下がろうとしたら、ヨロヨロとアドルフも立ち上がり、近くにあった花瓶をもって姉さんに勢いよく振り上げていた。
思わず俺も「危ない」と声をかけたが姉さんには届いていないみたいで首を傾げるばかり…その間にもスローモーションのように花瓶が姉さんの頭に向かっていた…
「姉さん!危ない!!」
やっと声が届いたのか後ろを振り向いた瞬間、姉さんの頭に花瓶が直撃した。
はずだった。
俺と兄さんが急いで姉さんに駆け寄り声をかける。
「姉さん、大丈夫?」
「エル、大丈夫か!?」
外で待機していた衛兵も中に入ってきてアドルフを取り押さえて緊迫感が出ている中…
姉さんは何事も無かったかのように立ち上がり、「いってぇなぁー!このクソが!」とアドルフに右ストレートをお見舞した。
「さっき勢いよく、花瓶が…あれ?血すら出てないけど…」
「あ、あぁ。昔から頭は鉄よりも硬かったが…まさかここまでとはな…」
花瓶をみると花瓶は粉々になっていて、花瓶が可哀想なくらいだった…
そしてアドルフは姉さんの右ストレートが見事に決まり気絶したまま運び出されたのである。
姉さんはそんな姿を見ながら
「ずっと我慢してたからな。やっと殴れてせいせいしたぜ!」と清々しい顔をしていた。
兄さんもそんなエル姉をみながら
「は、ははは…やっぱ母さんもおこらせると怖かったが、アルデンテ家の女を怒らせるのはやめたほうがいいな。」
「そ、そうだね。」
苦笑いをしながら話しかけてきたので、俺も頷くくらいしか返事ができなかった。
そんなこんなで色々あったこの7年の出来事は終止符を迎えたのである。
まぁ、最後は…なんとも締りのない終わりだったが…。当人はすごく清々しい顔をしているので丸く納まったということにしておこう。
「アドルフくんの顔、骨折れてるだろうね。」
「そうだな…元には戻らないかもしれないな…」
少しばかりアドルフに同情するが、エル姉の嬉しそうな姿を見れば何も言う気は起きなかった。
「お前には慈悲というものがないのか…」
兄に対してはあまり反抗的な態度を取らないのにやたら私には突っかかってくる。
「その言葉そのままお前に返すよ。」
正直言って、アドルフだけじゃなくガーナからも返済してもらうのが1番早かったのだが、そうしなかった理由がひとつある。
ガーナのことはそこまで恨んでいなかったからだ。ぶっちゃけた話、アドルフとの結婚は親同士が決めたものだったし、好きかどうか聞かれたら普通と答えるくらいのものだった。
「私は無理に結婚する気はなかったんだ。騎士団に2年間行く時点でお前に好きなやつができてもおかしくは無いと思っていたからな。それにお前が私を好きじゃないことくらい分かってたし、私自身も好きか嫌いか聞かれたら普通と答えるくらいだったしな。」
それでも結婚しようと思ったのは、母さんが亡くなる直前に「エルには女の子として幸せになって欲しい」と言われたからだ。
騎士団に入ると言った時、父さんは「やっぱりお前もか…」と言っていた。母さんの昔話をあまり聞くことがなかったけど、父さんの話的に母さんも騎士団にいたのではないかと思う。
自分都合で騎士団に行くことにしたし、もしこの2年で、アドルフに別に好きな人ができたなら、その人と幸せになって欲しいなと思っていたくらいだ。だから正直に話してくれていれば、私は潔く身を引くつもりでいたし、そのまま騎士団にいてもいいと思っていた。
だが…アドルフは結婚しようと言ってきた…
「お前が金に目を眩ませなきゃこんなことにはなってなかった筈だ。全て自業自得だな。あと許せないのはさ。金もそうなんだけど私の伸ばしてきた髪を切ったことなんだよな。」
小さいころから母さんが
「やんちゃでもいいから髪だけは伸ばしなさい。立派なレディになれるわ!」
とよく言っていたから、髪だけは必死に伸ばしてきたんだ。
「髪なんか、切ったって伸びてくるじゃないか!」
「確かにそうだけど違うんだ。お前にとっては髪なんかくらいかもしれないが、私にとってはそれが母との大事な約束なんだ。」
だから、ガーナへの罰はあくまでも重婚という罪だけにしてもらった。
「好きな女の分、お前が頑張れよ。」
サインを貰った書類を手に持ち私はアドルフの前から立ち上がるとアドルフもよろよろと立ち上がった。
「じゃあ、お元気で!アドルフくん!」
全てが片付いて清々しい気持ちで踵を返すとマウロがなにか私に向かって騒いでいる。
「姉さん!危ない!!」
聞こえて後ろを振り向いた瞬間、花瓶を振り上げたアドルフと目が合った。
そして気づいた時には頭に花瓶が直撃していた。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
マウロ視点。
姉さんが書類を受け取り後ろに下がろうとしたら、ヨロヨロとアドルフも立ち上がり、近くにあった花瓶をもって姉さんに勢いよく振り上げていた。
思わず俺も「危ない」と声をかけたが姉さんには届いていないみたいで首を傾げるばかり…その間にもスローモーションのように花瓶が姉さんの頭に向かっていた…
「姉さん!危ない!!」
やっと声が届いたのか後ろを振り向いた瞬間、姉さんの頭に花瓶が直撃した。
はずだった。
俺と兄さんが急いで姉さんに駆け寄り声をかける。
「姉さん、大丈夫?」
「エル、大丈夫か!?」
外で待機していた衛兵も中に入ってきてアドルフを取り押さえて緊迫感が出ている中…
姉さんは何事も無かったかのように立ち上がり、「いってぇなぁー!このクソが!」とアドルフに右ストレートをお見舞した。
「さっき勢いよく、花瓶が…あれ?血すら出てないけど…」
「あ、あぁ。昔から頭は鉄よりも硬かったが…まさかここまでとはな…」
花瓶をみると花瓶は粉々になっていて、花瓶が可哀想なくらいだった…
そしてアドルフは姉さんの右ストレートが見事に決まり気絶したまま運び出されたのである。
姉さんはそんな姿を見ながら
「ずっと我慢してたからな。やっと殴れてせいせいしたぜ!」と清々しい顔をしていた。
兄さんもそんなエル姉をみながら
「は、ははは…やっぱ母さんもおこらせると怖かったが、アルデンテ家の女を怒らせるのはやめたほうがいいな。」
「そ、そうだね。」
苦笑いをしながら話しかけてきたので、俺も頷くくらいしか返事ができなかった。
そんなこんなで色々あったこの7年の出来事は終止符を迎えたのである。
まぁ、最後は…なんとも締りのない終わりだったが…。当人はすごく清々しい顔をしているので丸く納まったということにしておこう。
「アドルフくんの顔、骨折れてるだろうね。」
「そうだな…元には戻らないかもしれないな…」
少しばかりアドルフに同情するが、エル姉の嬉しそうな姿を見れば何も言う気は起きなかった。
874
あなたにおすすめの小説
石女を理由に離縁されましたが、実家に出戻って幸せになりました
お好み焼き
恋愛
ゼネラル侯爵家に嫁いで三年、私は子が出来ないことを理由に冷遇されていて、とうとう離縁されてしまいました。なのにその後、ゼネラル家に嫁として戻って来いと手紙と書類が届きました。息子は種無しだったと、だから石女として私に叩き付けた離縁状は無効だと。
その他にも色々ありましたが、今となっては心は落ち着いています。私には優しい弟がいて、頼れるお祖父様がいて、可愛い妹もいるのですから。
転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?
朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!
「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」
王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。
不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。
もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた?
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)
姑に嫁いびりされている姿を見た夫に、離縁を突きつけられました
碧井 汐桜香
ファンタジー
姑に嫁いびりされている姿を見た夫が、嬉しそうに便乗してきます。
学園進学と同時に婚約を公表し、卒業と同時に結婚したわたくしたち。
昔から憧れていた姑を「お義母様」と呼べる新生活に胸躍らせていると、いろいろと想定外ですわ。
前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!
お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。
……。
…………。
「レオくぅーん!いま会いに行きます!」
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!
水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。
ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。
しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。
★ファンタジー小説大賞エントリー中です。
※完結しました!
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる