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悪役令嬢になりましょう!
悪役令嬢になりましょう。
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「それでそれで、その格好どうしたの?」
お昼休み、いつも一緒にご飯を食べるメンバーで屋上へ向かっていると、友人の1人であるブランディーヌが声をかけてきた。授業中もチラチラとこちらを見ていたから気になっていたのだろう。
「私も気になるけど、今は他の人の目を考えましょう。皆が聞き耳立ててるし。その話はお昼ご飯を食べながら話しましょう。」
ブランディーヌを諭すように話しかけるのはもう1人の友人、アンネマリーだ。
大体ジャンリーネ、ブランディーヌ、アンネマリーと4人で行動していることが多い。
3人ともそれぞれ少し他の貴族女性とは違う趣味を持っていたり、性格が変わっているということもあってか、周りからは変人4人衆なんて言われている。
何故私がその中には入っているのかは未だに謎だ。3人に比べると普通の思考だと思うんだけど、絶対お姉様とお兄様の伝説的事件の所為もあると思う。
いつもの屋上に着くと3人の顔がキラキラしだした。これは早く話しなさい…という顔だ。
「どうせ、昨日の出来事は知っているんでしょう?それが発端なのよ。」
昨日アドルフ様が私を置いて他の女性と一緒に帰ってしまったこと、その相手の名前がとある恋愛小説に出てくる主人公と一緒だったこと。
「なんか、それでアドルフ様は運命を感じてしまったみたいなの。」
「「「へぇ~。」」」
話して欲しいと言うから話したというのに、なんでそんなに反応が薄いんだろうか…。
「というか、そこはどうでもいいのよ!私たちが聞きたいのはそこじゃなくて、何故ヴェロニカがそんな格好しているのかって事よ!!その縦巻きロールといい、化粧といい…いつもとは正反対じゃない。目立ちたくないと言っていた貴方がそんな目立つなんて…」
ジャンリーネの言葉に他の2人が「そうそう!」と言って相槌を打つ。
「こ、これは、色々事情がありまして…」
明後日の方向を見ながらモジモジしていると、ジャンリーネにスパーンと頭を叩かれた。
「いったぁぁぁい!!」
「ふふっ。いい音鳴ったわね!で?早くしないと休み時間終わっちゃうから続き話して?」
仕方なく、私はなぜこの格好をしているのか3人に話した。
「お姉様に、悪役令嬢になりなさいと今朝、渡されたのよ。さっき話した女の子の名前、エミーリエって言うんだけど、その物語には私と同じ名前の人も出てくるの。その人が2人の恋を邪魔する悪役令嬢なのよ。」
イザベラお姉様に会ったことのある3人はその時のことを想像したのだろう。3人とも笑いながら納得している。
「それで、その格好ね!わかったわ。私達もヴェロニカの力になってあげる。ほら早速噂をしたらなんとやら…学園の前にウロウロしている女の子がいるわよ。」
ブランディーヌは親指で学園の前を指している。
ブランディーヌの笑顔を見るに絶対裏があるとしか思えない…
今ボソッと「いい題材が見つかったわ!」って言っているのが聞こえたし…
ブランディーヌ・アルベンハイム。
アルベンハイム伯爵家の次女で、油絵を描くのが趣味の女の子だ。画廊まで持っていて、ブランディーヌの絵はとても人気があり、絵画はかなり高価な値段で取引されている。
そしてもう1人の友人。
アンネマリー・エッシェンバッハ。
エッシェンバッハ公爵家の三女で。音楽を嗜む。作曲をしたりピアノやヴァイオリンなどを小さい頃から習っている天才だ。今は音楽団を作っていて、貴族のパーティーなどでは引っ張りだこである。
そんなアンネマリーも私の方をニヤニヤ見ながら、
「悪役令嬢が登場するシーンに音楽は付き物よね。ヴェロニカたちを見ていると作曲が捗りそうだわ!」
とか言っているのが聞こえた。
「悪役令嬢をやるなら、やはり戦えないとな…」
そう言って剣を持ち出したのはジャンリーネだ…
これは後で特訓と称して剣の稽古に付き合わされるのだろう…ジャンリーネの相手をするのは結構大変なんだけど…。
そんな3人を横目に、私はのんびりと貴族院の前にいるエミーリエを見ながらご飯を食べる。
平民の子がこんなところに来るなんて…そもそも貴族院の近くに来るのだって衛兵が立っていて難しいはずだ。1体どうやって入ってきたのか…
ボーッと眺めているとエミーリエに近づいていく男の人が見える。
アドルフ様だ。
一緒にご飯を食べていた3人もそれに気づいたようだ。私の近くに来ると、無理やり両腕をもち立ち上がらせる。
「さぁ、悪役令嬢ヴェロニカ!出動よ!!」
ノリノリのブランディーヌが2人の方向を指さしながらズルズルと引き摺っていく…
「えっ!?私出動する気なんてサラサラないんだけどぉぉぉお!?」
「ほらさっさと行くよ…」
ジャンリーネに助けを求めると、全く助ける気は無いのか、ブランディーヌと一緒になって引き摺り始めた。
昨日の今日で心の準備ができていないというのに…最後の頼みの綱であるアンネマリーもシラーっと目線を逸らす…
「やだぁぁぁ!あんなところに行ったら目立っちゃうぅぅ!!」
アンネマリーが肩を軽くぽんぽんと叩くので止めてくれるのかと期待をすると、全く期待外れの言葉が帰ってきた。
「ヴェロニカ…貴方ならできるわ。信じているから。悪役令嬢ヴェロニカを…さぁ、行ってらっしゃい…」
そう言って2人の前に連れていかれたのである…
…
……
………
「あ、あ、アドルフ様!!昨日はよくも婚約者の私を置いて帰ってくれましたわね!それで?そちらの方はどなたですの?」
こうなったらやけだ…
私は扇子を口元に持っていきながら、少し顎を上にあげて見下ろすように2人を見た。本当にこれであっているのだろうか…
「ヴ、ヴ、ヴ、ヴェロニカ…昨日のことは誤解なんだ。あの後戻ったら君はもう居なくて…エミーリエは何も悪くない。今日だって、たまたま迷い込んでしまっただけなんだよ。ぼ、ぼぼくに逢いに来たわけじゃ…」
吃りすぎだろう…。
それに昨日はアドルフ様が居なくなってから少しの間待っていたけど帰ってこなかったのは知っている。
「そ、そ、そうなんですぅぅぅ。そんなにぃ怒らないで上げてくださぁい…昨日だってぇ、アドルフ様は私が1人だと心配だからってぇ送ってくれただけなんですよぅゥ……うぅ」
「一々語尾を伸ばすなぁ!」と喉元まで出かかったが飲み込む。ただ見下ろしただけで、怒ったことになるなんて…。
その言い方だと私は1人にしても大丈夫だろうってことだろうか。よっぽど貴族女性一人置いて帰る方が危ないも思うんだけど…。
世界ら自分中心に回っているとか言うならどれだけお花畑な頭なのか…
「そ、そう…ここは貴方の様な人が来る場所ではないわ。さっさと帰りなさい。アドルフ様は私の婚約者なんですから!」
私は全ての気持ちを飲み飲んでアドルフ様の腕に抱きついた。
お昼休み、いつも一緒にご飯を食べるメンバーで屋上へ向かっていると、友人の1人であるブランディーヌが声をかけてきた。授業中もチラチラとこちらを見ていたから気になっていたのだろう。
「私も気になるけど、今は他の人の目を考えましょう。皆が聞き耳立ててるし。その話はお昼ご飯を食べながら話しましょう。」
ブランディーヌを諭すように話しかけるのはもう1人の友人、アンネマリーだ。
大体ジャンリーネ、ブランディーヌ、アンネマリーと4人で行動していることが多い。
3人ともそれぞれ少し他の貴族女性とは違う趣味を持っていたり、性格が変わっているということもあってか、周りからは変人4人衆なんて言われている。
何故私がその中には入っているのかは未だに謎だ。3人に比べると普通の思考だと思うんだけど、絶対お姉様とお兄様の伝説的事件の所為もあると思う。
いつもの屋上に着くと3人の顔がキラキラしだした。これは早く話しなさい…という顔だ。
「どうせ、昨日の出来事は知っているんでしょう?それが発端なのよ。」
昨日アドルフ様が私を置いて他の女性と一緒に帰ってしまったこと、その相手の名前がとある恋愛小説に出てくる主人公と一緒だったこと。
「なんか、それでアドルフ様は運命を感じてしまったみたいなの。」
「「「へぇ~。」」」
話して欲しいと言うから話したというのに、なんでそんなに反応が薄いんだろうか…。
「というか、そこはどうでもいいのよ!私たちが聞きたいのはそこじゃなくて、何故ヴェロニカがそんな格好しているのかって事よ!!その縦巻きロールといい、化粧といい…いつもとは正反対じゃない。目立ちたくないと言っていた貴方がそんな目立つなんて…」
ジャンリーネの言葉に他の2人が「そうそう!」と言って相槌を打つ。
「こ、これは、色々事情がありまして…」
明後日の方向を見ながらモジモジしていると、ジャンリーネにスパーンと頭を叩かれた。
「いったぁぁぁい!!」
「ふふっ。いい音鳴ったわね!で?早くしないと休み時間終わっちゃうから続き話して?」
仕方なく、私はなぜこの格好をしているのか3人に話した。
「お姉様に、悪役令嬢になりなさいと今朝、渡されたのよ。さっき話した女の子の名前、エミーリエって言うんだけど、その物語には私と同じ名前の人も出てくるの。その人が2人の恋を邪魔する悪役令嬢なのよ。」
イザベラお姉様に会ったことのある3人はその時のことを想像したのだろう。3人とも笑いながら納得している。
「それで、その格好ね!わかったわ。私達もヴェロニカの力になってあげる。ほら早速噂をしたらなんとやら…学園の前にウロウロしている女の子がいるわよ。」
ブランディーヌは親指で学園の前を指している。
ブランディーヌの笑顔を見るに絶対裏があるとしか思えない…
今ボソッと「いい題材が見つかったわ!」って言っているのが聞こえたし…
ブランディーヌ・アルベンハイム。
アルベンハイム伯爵家の次女で、油絵を描くのが趣味の女の子だ。画廊まで持っていて、ブランディーヌの絵はとても人気があり、絵画はかなり高価な値段で取引されている。
そしてもう1人の友人。
アンネマリー・エッシェンバッハ。
エッシェンバッハ公爵家の三女で。音楽を嗜む。作曲をしたりピアノやヴァイオリンなどを小さい頃から習っている天才だ。今は音楽団を作っていて、貴族のパーティーなどでは引っ張りだこである。
そんなアンネマリーも私の方をニヤニヤ見ながら、
「悪役令嬢が登場するシーンに音楽は付き物よね。ヴェロニカたちを見ていると作曲が捗りそうだわ!」
とか言っているのが聞こえた。
「悪役令嬢をやるなら、やはり戦えないとな…」
そう言って剣を持ち出したのはジャンリーネだ…
これは後で特訓と称して剣の稽古に付き合わされるのだろう…ジャンリーネの相手をするのは結構大変なんだけど…。
そんな3人を横目に、私はのんびりと貴族院の前にいるエミーリエを見ながらご飯を食べる。
平民の子がこんなところに来るなんて…そもそも貴族院の近くに来るのだって衛兵が立っていて難しいはずだ。1体どうやって入ってきたのか…
ボーッと眺めているとエミーリエに近づいていく男の人が見える。
アドルフ様だ。
一緒にご飯を食べていた3人もそれに気づいたようだ。私の近くに来ると、無理やり両腕をもち立ち上がらせる。
「さぁ、悪役令嬢ヴェロニカ!出動よ!!」
ノリノリのブランディーヌが2人の方向を指さしながらズルズルと引き摺っていく…
「えっ!?私出動する気なんてサラサラないんだけどぉぉぉお!?」
「ほらさっさと行くよ…」
ジャンリーネに助けを求めると、全く助ける気は無いのか、ブランディーヌと一緒になって引き摺り始めた。
昨日の今日で心の準備ができていないというのに…最後の頼みの綱であるアンネマリーもシラーっと目線を逸らす…
「やだぁぁぁ!あんなところに行ったら目立っちゃうぅぅ!!」
アンネマリーが肩を軽くぽんぽんと叩くので止めてくれるのかと期待をすると、全く期待外れの言葉が帰ってきた。
「ヴェロニカ…貴方ならできるわ。信じているから。悪役令嬢ヴェロニカを…さぁ、行ってらっしゃい…」
そう言って2人の前に連れていかれたのである…
…
……
………
「あ、あ、アドルフ様!!昨日はよくも婚約者の私を置いて帰ってくれましたわね!それで?そちらの方はどなたですの?」
こうなったらやけだ…
私は扇子を口元に持っていきながら、少し顎を上にあげて見下ろすように2人を見た。本当にこれであっているのだろうか…
「ヴ、ヴ、ヴ、ヴェロニカ…昨日のことは誤解なんだ。あの後戻ったら君はもう居なくて…エミーリエは何も悪くない。今日だって、たまたま迷い込んでしまっただけなんだよ。ぼ、ぼぼくに逢いに来たわけじゃ…」
吃りすぎだろう…。
それに昨日はアドルフ様が居なくなってから少しの間待っていたけど帰ってこなかったのは知っている。
「そ、そ、そうなんですぅぅぅ。そんなにぃ怒らないで上げてくださぁい…昨日だってぇ、アドルフ様は私が1人だと心配だからってぇ送ってくれただけなんですよぅゥ……うぅ」
「一々語尾を伸ばすなぁ!」と喉元まで出かかったが飲み込む。ただ見下ろしただけで、怒ったことになるなんて…。
その言い方だと私は1人にしても大丈夫だろうってことだろうか。よっぽど貴族女性一人置いて帰る方が危ないも思うんだけど…。
世界ら自分中心に回っているとか言うならどれだけお花畑な頭なのか…
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