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三領地同盟。
また鉄の箱!?
「じゃあ、二人とも気をつけてね。」
明朝――
エヴァンジェリンとユリウスは、ヴィオラたちを見送るために、屋敷の外に出ていた。
「はい、お嬢様も……ちゃんと寝てくださいね?ご飯を食べずに仕事をしないように。チョコレートはご飯ではありませんからね?それと……規則正しい生活をしてくださいね。」
「はいはい、わかったから……って、クラウディウスの顔……真っ青じゃない。大丈夫なの?」
クラウディウスに声をかけると、元気なさそうにゆっくりと手を上げた。
「……って……大丈夫じゃなさそうね……」
その素振りを見てユリウスはエヴァンジェリンに耳打ちした
「どうやら、この鉄の箱が苦手らしいぞ」
その言葉に納得したのかエヴァンジェリンはクスッと笑うと、
「そう……それは気の毒ね……」
と一言つぶやいた。
どうやら、気の毒と言いながらも、鉄の箱以外の移動手段はないらしい。
二人は鉄の箱に乗り込むと窓を開ける。
ヴィオラもクラウディウスに視線を向けることなく、ユリウスを見た。
「それでは、ユリウス様。く・れ・ぐ・れ・もお嬢様のことをよろしくお願いしますね!」
ブォンブォン
鉄の箱は煙を吐きながら大きな音を立てる。
「(あ、圧が凄いな……)……あぁ…善処しよう」
ユリウスが鉄の箱の中を覗き込めば、クラウディウスはさらに青い顔をしながら震えながら、肩から腰に向かって伸びる紐をぎゅっと握り締めた。
しかし、ヴィオラは気にも留めていないのか――
「それではエヴァンジェリンお嬢様。ユリウス様……ご機嫌よう」
その言葉と共にペダルを一気に踏み込んだ。
キィィィィーーー!!
「うわぁぁぁぁ~俺はまだ死にたくないぞぉぉ~」
馬車とは違い、すでに小さくなってしまった鉄の箱。
ユリウスは、その中からクラウディウスの叫び声が聞こえた気がしたが……
聞こえない振りをして踵を返した。
(クラウディウスよ……達者でな……生きて帰れたらまた酒をかわそう……)
ユリウスの声は誰かに届くことなく、心の中のみで木霊した。
そして、ユリウスは今まで気になっていた事をエヴァンジェリンに聞いてみた。
「そういえば……王命書。どうやって準備したんだ?」
その言葉にエヴァンジェリンは振り返る。
「あぁ~……あれ?」
エヴァンジェリンは少し考えてから、人差し指を口元に持っていくとニコリと笑った。
その姿にユリウスは胸の鼓動が早くなるのを感じる。
「秘密よ……ひ・み・つ!」
「ひみつ?」
ユリウスが聞き返すと、エヴァンジェリンはコクリとうなずいた。
「えぇ……。今はまだ……ね?」
(今はまだ……?)
ユリウスは首を傾げてから、口を開こうとするが──
(いや、聞いても無駄か……)
これ以上話す気の無さそうなエヴァンジェリンを見て口を閉ざした。
それからしばらくして――
エヴァンジェリンは屋敷に入ることなく、素通りして別の場所へと足を向ける。
「おい……屋敷の入口が過ぎているぞ?」
「いいのいいの!」
(何がいいんだ……)
エヴァンジェリンの軽い返しに、嫌な汗が背中に流れるのを感じた。
「さっ、私たちも出かけるわよ~!」
エヴァンジェリンはユリウスの肩をポンポンと叩くと、そのまま腕をグイグイと引っ張る。
馬車の止まっているところを通り過ぎ、屋敷裏にある庭園を抜ける。
そして――
薮の中を抜けると、そこは、今まで来たことのない、開けた場所だった。
「ここは……?」
「ここは……ヴィオラにも内緒の秘密基地よ!」
(あいつのことだから……知ってるんじゃないか……?)
エヴァンジェリンは、広場の端にある小屋のようなところまでユリウスを連れていくと、目の前にある布をバサッと外した。
「ふふふ……今回はこれに乗るわ!!」
うっとりと目を細めながら、布の中から出てきたものを撫でるエヴァンジェリン。
そこにあったのは……
「……鳥……では無い……?鉄の箱……か?」
鳥のような形をした、またしても鉄の箱だった。
「そうよ!これは羽のついた鉄の箱をさらに改良したものなの。まだ試験的にしか使ったことはないのだけど……」
「試験的って大丈夫なのか!?」
「大丈夫、大丈夫!!安心してちょうだい。」
(……お前の安心してほど安心できないのは気のせいか……!?)
あまりにも軽い相づちに、ユリウスは言葉を失った。
「私たちにも止まってる暇は無いのよ。それとも、あなたはここで待ってる?」
「い、いや……俺も行く(これで行かなかったらあとでなんと言われるか……)」
「それで?どこに行くんだ……?」
ユリウスがエヴァンジェリンに尋ねると、彼女は少し考えてから上を指さした。
「ん~……空の上?」
ユリウスはエヴァンジェリンの言葉が理解できないのか……数秒間動きを止めてからゆっくりと息を吐いた。
「……空の上?」
「えぇ、初めてじゃないし、もう慣れたものでしょ?」
エヴァンジェリンはユリウスの話を聞く間もなく、そのまま鳥の形をした鉄の箱へと入っていく。
それに続くようにユリウスも中へと入れば、今までとはまるで違う造りをしていた。
「意外に狭いんだな……」
細長い通路の両脇に座席が並び、外の景色は小さな窓からしか見えない。
歩くたびに響く低い音と、閉じ込められたような空気に、ユリウスは思わず息を整える。
「そうね……でもこの形が一番飛びやすいのよ。」
エヴァンジェリンの言葉に思わず首を傾げる。
「飛びやすい……?」
「ええ……なんとなく……分からないんだけどね。そんな気がするの。」
(分からないのに……そんな気がする?)
ユリウスは彼女の言葉に違和感を覚えながらも、近くの椅子に腰を下ろした。
「じゃあ、しゅっぱーつ!!」
こうしてユリウスの気持ちは置き去りのまま……
鉄の鳥はどこかに飛び立った。
明朝――
エヴァンジェリンとユリウスは、ヴィオラたちを見送るために、屋敷の外に出ていた。
「はい、お嬢様も……ちゃんと寝てくださいね?ご飯を食べずに仕事をしないように。チョコレートはご飯ではありませんからね?それと……規則正しい生活をしてくださいね。」
「はいはい、わかったから……って、クラウディウスの顔……真っ青じゃない。大丈夫なの?」
クラウディウスに声をかけると、元気なさそうにゆっくりと手を上げた。
「……って……大丈夫じゃなさそうね……」
その素振りを見てユリウスはエヴァンジェリンに耳打ちした
「どうやら、この鉄の箱が苦手らしいぞ」
その言葉に納得したのかエヴァンジェリンはクスッと笑うと、
「そう……それは気の毒ね……」
と一言つぶやいた。
どうやら、気の毒と言いながらも、鉄の箱以外の移動手段はないらしい。
二人は鉄の箱に乗り込むと窓を開ける。
ヴィオラもクラウディウスに視線を向けることなく、ユリウスを見た。
「それでは、ユリウス様。く・れ・ぐ・れ・もお嬢様のことをよろしくお願いしますね!」
ブォンブォン
鉄の箱は煙を吐きながら大きな音を立てる。
「(あ、圧が凄いな……)……あぁ…善処しよう」
ユリウスが鉄の箱の中を覗き込めば、クラウディウスはさらに青い顔をしながら震えながら、肩から腰に向かって伸びる紐をぎゅっと握り締めた。
しかし、ヴィオラは気にも留めていないのか――
「それではエヴァンジェリンお嬢様。ユリウス様……ご機嫌よう」
その言葉と共にペダルを一気に踏み込んだ。
キィィィィーーー!!
「うわぁぁぁぁ~俺はまだ死にたくないぞぉぉ~」
馬車とは違い、すでに小さくなってしまった鉄の箱。
ユリウスは、その中からクラウディウスの叫び声が聞こえた気がしたが……
聞こえない振りをして踵を返した。
(クラウディウスよ……達者でな……生きて帰れたらまた酒をかわそう……)
ユリウスの声は誰かに届くことなく、心の中のみで木霊した。
そして、ユリウスは今まで気になっていた事をエヴァンジェリンに聞いてみた。
「そういえば……王命書。どうやって準備したんだ?」
その言葉にエヴァンジェリンは振り返る。
「あぁ~……あれ?」
エヴァンジェリンは少し考えてから、人差し指を口元に持っていくとニコリと笑った。
その姿にユリウスは胸の鼓動が早くなるのを感じる。
「秘密よ……ひ・み・つ!」
「ひみつ?」
ユリウスが聞き返すと、エヴァンジェリンはコクリとうなずいた。
「えぇ……。今はまだ……ね?」
(今はまだ……?)
ユリウスは首を傾げてから、口を開こうとするが──
(いや、聞いても無駄か……)
これ以上話す気の無さそうなエヴァンジェリンを見て口を閉ざした。
それからしばらくして――
エヴァンジェリンは屋敷に入ることなく、素通りして別の場所へと足を向ける。
「おい……屋敷の入口が過ぎているぞ?」
「いいのいいの!」
(何がいいんだ……)
エヴァンジェリンの軽い返しに、嫌な汗が背中に流れるのを感じた。
「さっ、私たちも出かけるわよ~!」
エヴァンジェリンはユリウスの肩をポンポンと叩くと、そのまま腕をグイグイと引っ張る。
馬車の止まっているところを通り過ぎ、屋敷裏にある庭園を抜ける。
そして――
薮の中を抜けると、そこは、今まで来たことのない、開けた場所だった。
「ここは……?」
「ここは……ヴィオラにも内緒の秘密基地よ!」
(あいつのことだから……知ってるんじゃないか……?)
エヴァンジェリンは、広場の端にある小屋のようなところまでユリウスを連れていくと、目の前にある布をバサッと外した。
「ふふふ……今回はこれに乗るわ!!」
うっとりと目を細めながら、布の中から出てきたものを撫でるエヴァンジェリン。
そこにあったのは……
「……鳥……では無い……?鉄の箱……か?」
鳥のような形をした、またしても鉄の箱だった。
「そうよ!これは羽のついた鉄の箱をさらに改良したものなの。まだ試験的にしか使ったことはないのだけど……」
「試験的って大丈夫なのか!?」
「大丈夫、大丈夫!!安心してちょうだい。」
(……お前の安心してほど安心できないのは気のせいか……!?)
あまりにも軽い相づちに、ユリウスは言葉を失った。
「私たちにも止まってる暇は無いのよ。それとも、あなたはここで待ってる?」
「い、いや……俺も行く(これで行かなかったらあとでなんと言われるか……)」
「それで?どこに行くんだ……?」
ユリウスがエヴァンジェリンに尋ねると、彼女は少し考えてから上を指さした。
「ん~……空の上?」
ユリウスはエヴァンジェリンの言葉が理解できないのか……数秒間動きを止めてからゆっくりと息を吐いた。
「……空の上?」
「えぇ、初めてじゃないし、もう慣れたものでしょ?」
エヴァンジェリンはユリウスの話を聞く間もなく、そのまま鳥の形をした鉄の箱へと入っていく。
それに続くようにユリウスも中へと入れば、今までとはまるで違う造りをしていた。
「意外に狭いんだな……」
細長い通路の両脇に座席が並び、外の景色は小さな窓からしか見えない。
歩くたびに響く低い音と、閉じ込められたような空気に、ユリウスは思わず息を整える。
「そうね……でもこの形が一番飛びやすいのよ。」
エヴァンジェリンの言葉に思わず首を傾げる。
「飛びやすい……?」
「ええ……なんとなく……分からないんだけどね。そんな気がするの。」
(分からないのに……そんな気がする?)
ユリウスは彼女の言葉に違和感を覚えながらも、近くの椅子に腰を下ろした。
「じゃあ、しゅっぱーつ!!」
こうしてユリウスの気持ちは置き去りのまま……
鉄の鳥はどこかに飛び立った。
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