異世界召喚の代償は三歳の身体と五千万円のローンでした! ~目指せ完済!スキル『我が家』で借金返済しながら成り上がります~

ゆずこしょう

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帰宅したら、人生が終わって異世界が始まりました。

勇者と聖女。そして、気付かれない私。

「おぉぉぉ~ついに成功したぞ!!」


「や、やっとだ……」


「しかも男と女……二人だ!」


聞いたことのない男たちの声が耳に届いた。


(……誰?)


瞼の奥で揺れていた光が、ゆっくりと弱まっていく。


私は、ゆっくりと目を開けた。


すると、そこは――


先ほどまでいたはずの自分の部屋ではなく、


ロウソクが数本灯された、薄暗い石造りの部屋だった。


辺りを見渡すが、ロウソクの灯りしかないためかよく見えない。


そんな中、聞き覚えのある声がした。


「きゃっ……なにぃ……?」


「……な、なんだ!?」


莉里香と勇太の声だ。


二人の声がする方へ視線を向けると、そこには莉里香と勇太が呆然と立ち尽くしていた。


(……ふっ……笑っちゃいけないのはわかるけど……)


「ひ、ひぃ……こ、こいつら裸だぞ!!」


知らぬ男の声が石造りの部屋の中に木霊する。


「いかがわしい……」


蔑むような声が続く。


(ふふっ……滑稽ね……)


どうやら、その言葉は勇太たちにも届いたらしい。


二人は自分たちの今の状態を確認した。


「きゃ、きゃぁぁぁ~」


「な、なんだこれぇぇ~」


慌てて莉里香はその場にしゃがみ込み、勇太は前を隠した。


(隠れてないけどね……いい気味ね)


先ほどまでの鬱々とした気持ちはなくなり、胸の中がすっとする。


目の前で起きているドラマのようなワンシーンを見ていると、暗闇に慣れてきた目が、部屋の中を捉える。


(見たところ、十人くらいはいるかな。)


真っ黒いローブを深く被っていることもあり、顔は見えない。


すると、


カン、カン


杖をついたローブの人物が近づいて来た。


「な、なに……!?」


「一応聖女と勇者じゃ……丁重に扱うのじゃぞ。」


少し高い、しゃがれた声。


(女性だったのね)


どうやら、この老婆が指揮権を持っているようだ。


「し、しかし……」


「いいから……とりあえずやることはやったのじゃ。文句は出まいよ。」


「わかりました……」


老婆の声に言い返すことができないのか、ローブを着た者たちは勇太たちに近づいていくとそのまま腕を掴んだ。


「な、なんだ!?は、離せよ!何するんだ!」


「きゃぁぁぁ~助けてぇぇ……」


(……これは最近流行りの転移……てきなやつなのかしら)


転移の割には二人に対する態度が少し気になるところだ。


それに……


(誰も私に気づいていない……よね)


今まで話している中に、自分の存在が一切入っていないことに気づく。


私は意を決して声を出した。


「あ、あにょ!!」


(……あれ?舌が上手く回らない?)


この場にいた人たちにも声が届いたのか……ふと私の方を見る。


「なんじゃ。もう一人おったのか……ってお前さん……」


老婆は私を見て目を見開き、じっと私を見つめた。


(それにしても……ここにいる人たち、やけに大きいわね)


首を傾げて目の前にいる老婆を見据える。


そして、次の瞬間――


「あの二人の……子供か……?」


「「えっ!?」」


「はぁ??」


子供という言葉に、私だけではなく勇太や莉里香も反応する。


「俺たちに子供はいねえよ。ってか離してくれよ。」


「そ、そうよ!こんな男の子供なんてこっちから願い下げだわ!それより……私あなたの方がぁ……タイプだわぁ……」


「はぁ?俺だってお前のような女願い下げだ。」


先ほどまで仲良さそうに話していたはずなのに、どうやら人は環境が変わると本性が出るらしい。


莉里香はローブの男に甘い声を出しながら媚びを売り、勇太はギャンギャン吠えている。


「うるしゃ……」


小さい声で呟くと、老婆に届いていたのか、老婆は「ブフッ」と笑った。


老婆と視線を合わせようと見上げれば、ローブの奥がひらりと見える。


(老婆かと思ったけど……違う……?)


ローブの下から見えたのは綺麗な琥珀の瞳を持つ若い女性だった。


女性はウインクすると、そのまま勇太たちをみる。


「よい……二人の子供でないと言うなら連れていく必要はないじゃろ。」


カーン


持っていた杖で床を叩く。


すると、床に陣が浮き上がり輝きを増し始めた。


「聖女の血も引いておらぬ子供などいらん。」


(いや、子供じゃないんですけど!?どう見ても大人なんですけど!?)


「この子供は儂が捨ててくる。お前さんらはそいつらを連れて適性検査を受けさせるのじゃ。」


「そ、そんな……」


「いいな?すぐ戻る。先に進めておくのじゃぞ。」


そして――


陣の上にいた私と老婆は、気がつくと森の中のような場所に立っていた。


先ほどまでの石畳の冷たさは消え、木々の匂いと草花がサワサワと揺れる静かな風の音が聞こえる。


しばらくすると、頭の上に手が置かれた。


その手が不器用に頭を撫でる。


「目を開けていいぞ。」


頭の上から聞こえるのは老婆の声とはかけ離れた少し高めの男の声だった。


「あ、ありぇ……?」


あまりの変わり様に目を大きく見開く。


「ははは……驚くのも無理はない。」


男は私に目線を合わせるようにその場に膝をついた。


(膝をつかないなんて……どんだけ大きいのよ。これでも百五十五センチはあるはずなんだけど!?)


「どうやら君は自分の状態に気づいていないようだな。」


「じょうきょ……?」


首を横に倒すといつもより頭が重い。


それに声が高く、話しにくいように感じる。


「ふむ……まぁいい。取り敢えず君はこの国にいてはならない。時期を見たら俺から会いに行く。それまでこれを持っていなさい」


そう言って手に持たされたのは男の目と同じ色をした琥珀色の丸い玉。


「びーだま?」


「びーだま?とは何か知らないが……これは俺にとって大切なものだ。これを持っていればどこにいるかすぐわかる。」


(とりあえず持っていればいいのね)


こくりとうなずく。


「この森を真っ直ぐ行きなさい。抜けると街があるから」



それだけ言うと、男の周りが光出した。


「ま、まぶし……」


咄嗟に目を閉じる。


そして光が落ち着いた時、目を開けると、男の姿はなく、私一人が森の中に佇んでいた。
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