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第二章・少女剣士たちとの出会い
戦いが終わって思い出す、そういえばあいつもここにいた
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燈の言葉を合図として、一斉に攻勢を仕掛ける四人。
そこからの戦いは一方的で、土蜘蛛たちにとっては悪夢のような時間が続いた。
そもそも、自分たちの頭脳とも呼べる絡新婦を倒され、更には最大戦力でもある巨大土蜘蛛までもが討たれた状態では、幾ら数が多かろうと一騎当千の実力を持つ燈たちに敵う道理はない。
だが、それ以上にここまでの大勝を燈にもたらしたものは、彼らの素晴らしい連携であった。
初めて肩を並べて戦う人間たちとは思えない、適材適所の配置。
一人一人が自分の役目を理解し、それを果たすために動きながらも、仲間のフォローがいつでも行えるようにもしている。
前衛を張るのは燈と栞桜。
高火力を誇り、接近戦に秀でた能力の武神刀を持つ彼らは、一刀の下に次々と土蜘蛛たちを屠っていく。
そんな二人を援護するように飛ぶ暗器とけん玉は、やよいが放っているものだ。
背後から迫る妖、不意打ちを決めようとする敵を目敏く見つけ出しては、それが行動を起こす前に妨害し、仕留めていく。
彼女の存在が燈と栞桜を全力で攻撃に集中させていることは、間違いないだろう。
そして、そんな両者の間に立つ蒼の動きもまた、素晴らしいものだ。
やよい同様、燈たちの援護をしながら、時に彼らと肩を並べて妖を斬り捨てる。
かと思えば、後衛を担うやよいを狙って攻撃を仕掛けてくる土蜘蛛たちから彼女を守り、安全を確保する動きまで見せていた。
「せやあぁっ!!」
今、やよいを仕留めようと彼女の背後を急襲した土蜘蛛が、『時雨』に斬り捨てられて倒れた。
続く第二波、第三波をやよいと共に撃退しつつ、彼女を安全圏に匿う蒼は、彼女が操る『青空』の巧みな動きに合わせ、妖を葬っていく。
数秒後、額の目をけん玉によって叩き潰されて大きな隙を見せた土蜘蛛を斬り捨てた蒼は、軽く息を吐いた後にやよいの安否を気遣って声をかけた。
「大丈夫、やよいさん?」
「平気、平気~! 蒼くんが助けてくれるから、あたしも安心安全だよ~! 後でお礼に良いことしてあげるね!」
「そういう冗談は戦いが終わってから言ってね、っと!!」
手裏剣を投げ、燈たちを援護しながら無邪気に笑うやよい。
そんな彼女に迫る土蜘蛛をまた倒しながら、真面目な返答を口にする蒼。
前に突っ込んでいく相棒を補佐することに慣れたこの二人組の連携は熟練しており、流石の一言だ。
逆に、相棒に尻拭いされながら爆発的な攻撃力を見せる燈と栞桜のペアの連携は粗削りさが目立つものの、それを補うほどの大活躍も見せている。
燈の『紅龍』が煌き、栞桜の『金剛』が大地を揺らせば、その度に最低でも一体の土蜘蛛が戦場から姿を消す。
目に付いた敵を倒す。同じく前衛を張る相手と息を合わせながら、単純なその行動を猛スピードで、粛々とこなしていく二人の暴れっぷりは鬼神の如し。
特に迷いから解放された栞桜は、素直に仲間に頼ることが出来る精神的な余裕も相まって、今までのぎこちない動きが嘘であるかのように軽やかに戦場を舞っていた。
「オラッ! 次行くぞっ! 遅れるなよ、栞桜!」
「お前こそ! 私の動きについてこれるか!?」
お互いに軽口を叩き、信頼関係を窺わせるような笑顔を浮かべながら武神刀を振るう二人。
燈が縦に、栞桜が横に、それぞれ赤と桜色の斬光を煌かせて土蜘蛛を屠ってみれば、それがこの場に残る最後の一匹であることに気が付く。
「お? もう終わりか? なんだよ、思ったより楽な相手じゃねえの!」
「お疲れさま~! あたしたち、初陣にしては良い連携だったんじゃない!? これは最強の武士団になれる日もそう遠くはないかな~!」
「二人とも、油断しない。まだここは敵地なんだから、警戒を緩めちゃ駄目でしょ? それに、捕まってる人たちを助ける仕事が残ってるんだから、お喋りはその後で!」
「「は~い!」」
刀を鞘に納め、ハイタッチ。
まだまだ余裕を残す燈と無邪気に勝利を喜ぶやよいは、まるで保護者のようにそのお気楽な態度を咎める蒼の言葉に元気よく返事をする。
そんな一同をもじもじと指を絡ませて躊躇いがちに見つめていた栞桜は、相棒であるやよいの一言にびくりと体を跳ね上がらせた。
「……で? あたしたちに何かを言わなきゃいけない人が、ここにいるんじゃないかな~?」
「うっ……!」
意地悪く、笑みを浮かべながら栞桜目掛けてそんな言葉を投げかけるやよい。
一応は思いやりの心からくる行動であったものの、仲間たちを置いて単独で勝負に臨んだ栞桜の行動を咎めているその言葉を受け、栞桜の表情が罪悪感に染まる。
燈も蒼も、やよいと同じような笑みを浮かべてこちらを見つめていた。
冷酷な表情ではなく、少し楽し気な笑みを浮かべている彼らが本気で怒っているわけではないことは判っているが、それでもやはり気まずさを感じてしまうことは確かだ。
「その……悪かった! お前たちを置いていったこと、本当に申し訳なく思っている! ごめんなさい! そ、それと……助けにきてくれて、ありがとぅ……」
前半の謝罪は大声で、後半の感謝の言葉は尻すぼみになって、仲間たちへと自らの想いを言葉にした栞桜。
三人はそんな彼女の姿に満足気に笑うと、代表として燈が頭を下げている栞桜の額を思い切り指で弾いた。
「あいだっ!? う、おぉぉぉ……!?」
「へへっ! とりあえず、俺たちからはそれで制裁完了ってことにしておいてやるよ。きっちり詫びも入れてもらったし、感謝の言葉も聞けたしな。ただ、帰ったら桔梗さんと椿の分が残ってるってことを忘れんなよ?」
「あ、ああ……その、何だ。お前たちには、大きな借りが出来てしまったな。特に燈は、その……」
「……はいはい。わかってるからみなまで言うなよ、泣き虫栞桜ちゃん!」
「なっ!? 貴様、流石にそれは言葉が過ぎるだろうが! 泣き虫とはなんだ、泣き虫とは!?」
「なんだって、事実だろうが。……おい、ちょっと待て! 武神刀を使うのは反則だろ!?」
「あ~……だから、まだ敵地なんだからはしゃがないでって言ってるのに、もう……」
顔を真っ赤にして照れ混じりの怒りを見せる栞桜と、彼女から逃げ回る燈。
楽しそうではあるが、先の自分の忠告をまるっと無視する二人の姿に、蒼がげんなりとした表情を浮かべる。
そんな一同を見守っていたやよいは、これまでの栞桜が見せることがなかった溌溂とした姿に、心の中で安堵と喜びを感じていた。
「ふふふっ! 本当によかった。栞桜ちゃん、燈くんのお陰で一皮剥けたみたい!」
抱えていたコンプレックスや苦悩を乗り越え、明るい姿を見せるようになった栞桜の成長を喜ぶやよいもまた、この事件を通して僅かながらも自分が良い方向に変わったことを感じ取っていた。
桔梗と同じ、天元三刀匠の一人である宗正が育てた弟子。燈と蒼。
その二人が運んでくれた風は、停滞していた自分たちの心を動かす追い風になってくれたようだ。
そのことに感謝しつつ、珍しく男性とはしゃぐ相棒の姿を見守っていたやよいであったが、流石にこれ以上は放置出来ないと咳払いした蒼によって、三人纏めて注意を受けることになってしまった。
「はい、そこまで! ……いい加減にしないと、僕も怒るよ? まずは捕らえられている人たちの救出を優先、いいね!?」
「お、おう!」
「りょ、了解した」
「ひえ~、蒼くん怖いよ~! そんなに怒らないでよ、気晴らしにあたしのおっぱい揉んでもいいか、むへっ!?」
「……そういう冗談は後にしてくれって、言ったよね? 流石にここまで緊張感がないのは駄目だと思うんだけど?」
「ふにゅ~! ごめんごめん! 悪ふざけしすぎちゃったのは認めるから~! 頬っぺた引っ張らないで~!」
目が全く笑っていない、見るからに恐ろしい笑顔を浮かべながらやよいの頬を抓る蒼。
その極寒の笑みを目の当たりにした燈と栞桜は、今後は蒼を絶対に怒らせないぞと硬く心に誓った。
なにはともあれ、これにて一件落着。
土蜘蛛たちの退治も終わり、妖たちに捕らえられていた人たちも大半は無事に助け出せそうだ。
ようやく蒼の折檻から解放され、赤くなった頬を擦りながら地面に転がっている繭を切り開いていくやよいが、仲間たちに向けて事態が収束に向かっていることを喜ぶ言葉を口にする。
「色々あったけど、これで沢山の物事に決着がついたね! 別府屋の奴らとの勝負は、あたしたちの勝ちだ!」
「正直、犠牲が出てる時点で素直に喜べない部分もあるけどよ……桔梗さんやお前たちを馬鹿にしてたあの狸オヤジが悔しがる顔を見れるってのは、スカッとするモンがあるよな」
「別府屋お抱えの武士たちも、この戦いで大きな被害を受けた。再起を図るのは難しいかもしれないね」
「そうだな。……少しはおばば様も喜んでくれるかな? 私たちがくちなわ兄弟をはじめとした武士たちや異世界の英雄に勝ったと知ったら、成長を褒めて……ん?」
しみじみと、仲間たちと掴み取った勝利の尊さを噛み締めていた栞桜の表情が、何か違和感を覚えて歪む。
自分が口にした言葉の中に、何か大切な情報が紛れていたような気がした彼女は、戦いに臨むまでの流れを頭の中で思い返して――
「あーーーーっっ!!」
――この戦いに、異世界から召喚された英雄こと、竹元順平が参加していることを思い出した。
「うおおおっっ!? なんだ、どうしたっ!? 藪から棒に大声出すんじゃねえ! びっくりするだろうが!!」
「す、すまん! だが、マズいことになった! じ、実は――」
そのことを思い出した衝撃で大声を出してしまった栞桜は、その声に驚いて怒鳴る燈たちへと事情を説明した。
足早な説明ではあったものの、自分と同じ出身の人間、それも憎き竹元がこの場に居るという話を聞いた燈の表情が、みるみるうちに渋く歪んでいく。
「おいおいおいおい! あの馬鹿がここに居るってのか!? それも向こう側の助っ人として!? あいつ、マジで何をやってんだよ!?」
「見た感じ、繭の中にそれらしき人物はいないね。死体も見つかってないし、洞窟の何処かに隠れてるのかも」
「……どうする? 殺っちゃう? 燈くんとこころちゃんの仇ってんなら、今のうちに始末しておいた方が良いんじゃない? 幸い、うってつけの状況だしさ」
「ばっか! そんなことしたら、俺たちもあいつと同じ外道の仲間入りだろうが! 私怨で人を殺めず、正しい方法であいつを見返すって、俺は師匠と約束したんだよ! だから、ここであいつを殺すのは無し!」
「……ま、それもそうか! でも、どうするの? その竹元って人に燈くんが生きてることが知られたらマズいんだよね?」
「そこが問題なんだよ! おい、誰か包帯とか、顔を隠せそうなモンを持ってねえか!? 前回はそれで誤魔化せたから、今回も何とかなる!」
「あ~……ごめん。包帯はあるけど、顔をぐるぐる巻きに出来る量はないよ。せいぜい応急処置程度の量だけかな」
「うおぉぉぉぉ……!? や、ヤバい。どうする? なんか、なんか無いのか!? 顔を隠せそうなもの!」
順平の存在を知った燈は、再び包帯太郎への変装を試みるも、残念ながらそんな都合よく大量の包帯が用意されているはずがない。
ならば仮面でも、最悪頭陀袋でも良いからと何か顔を隠せる物を探し回る燈であったが、やはりそんな都合の良いものが転がっているはずもなかった。
「ま、マズい……! ここから脱出しようにも、このまま出て行った先にあの馬鹿がいたら一巻の終わりだ。他の奴ならいざ知らず、何で竹元がここにいるんだよ……!?」
考え得る限り、最悪の状況。
まさか戦いが終わった後にこんなピンチが待っているとは思いもしなかった燈は、頭を抱えてこの苦境をどう乗り切るかを考える。
うんうんと唸り、頭を捻り、必死に考えを巡らせる燈であったが……ふと、何か気配を感じるなと顔を上げると、真っ赤になった栞桜の顔が目と鼻の先にあることに気が付いて、驚きのあまり声を上げながら後退った。
「うおっ!? む、無言で近づくな! びっくりするだろうが!」
「……確認するぞ。顔を隠せる、包帯のようなものがあればいいんだな? それがあれば、お前は助かるんだな?」
「あぁ……? まあ、そうだけどよ。それがないから苦労してるわけで……」
「……い、いいか! こ、これは、あくまでお前に受けた恩を返すための行為であって、それ以上の感情はなにもない! 万が一にも妙な気を起こしたら、相応の対処をすると断言しておくからな!」
「はぁ? いやお前、何言って……うおおおおおおっっ!?」
顔を増々赤くし、難しい表情を浮かべながらそう言い放つ栞桜へと訝し気な視線を向けていた燈が、素っ頓狂な叫びをあげる。
その理由は単純で、栞桜がいきなり自分の着物をはだけさせ、上半身を露出したからだ。
咄嗟に顔を背けたお陰でまともに栞桜の痴態を見ることはなかった燈だが、普段の彼女が取るとは思えないおかしな行動に精神は動揺してしまっていた。
「何やってんの!? 何してんの、お前!? さっきの戦いで頭でも打ったのか!? おい!?」
「黙れ! お前のためにやってるんだろうが! ……絶対にこっちを向くなよ。向いたら顔の形が変わるまで殴り続けてやるからな! 蒼、お前もだぞ!」
「……言われるまでもありません。はい」
栞桜からの念押しの言葉に、無表情になって天井を見上げる蒼が答える。
思ったよりも初心な男二人組の反応にドギマギしながら頷いた栞桜は、まさかという表情を浮かべているやよいへと手招きをした。
「ね、ねえ、栞桜ちゃん? ほんと、もしかしてなんだけどさ……?」
「そのもしかしてだよ! いいからお前も手伝え! 少しでも茶化したら、洞窟の壁に埋め込んでやるからな!」
「??????」
二人の会話を聞いたとしても、燈と蒼には栞桜の考えがまるで理解出来なかった。
彼女が燈を手助けしようとしていることは判ったが、それがどうして服を脱ぐことに繋がるのかが判らないでいる。
脳内に?マークを大量に浮かべながら衣擦れの音を耳にしている燈がその答えに気が付くのは、今より数分後の話であった。
……その際、燈と栞桜の間でかなりの悶着が起きたことをここに記しておく。
そこからの戦いは一方的で、土蜘蛛たちにとっては悪夢のような時間が続いた。
そもそも、自分たちの頭脳とも呼べる絡新婦を倒され、更には最大戦力でもある巨大土蜘蛛までもが討たれた状態では、幾ら数が多かろうと一騎当千の実力を持つ燈たちに敵う道理はない。
だが、それ以上にここまでの大勝を燈にもたらしたものは、彼らの素晴らしい連携であった。
初めて肩を並べて戦う人間たちとは思えない、適材適所の配置。
一人一人が自分の役目を理解し、それを果たすために動きながらも、仲間のフォローがいつでも行えるようにもしている。
前衛を張るのは燈と栞桜。
高火力を誇り、接近戦に秀でた能力の武神刀を持つ彼らは、一刀の下に次々と土蜘蛛たちを屠っていく。
そんな二人を援護するように飛ぶ暗器とけん玉は、やよいが放っているものだ。
背後から迫る妖、不意打ちを決めようとする敵を目敏く見つけ出しては、それが行動を起こす前に妨害し、仕留めていく。
彼女の存在が燈と栞桜を全力で攻撃に集中させていることは、間違いないだろう。
そして、そんな両者の間に立つ蒼の動きもまた、素晴らしいものだ。
やよい同様、燈たちの援護をしながら、時に彼らと肩を並べて妖を斬り捨てる。
かと思えば、後衛を担うやよいを狙って攻撃を仕掛けてくる土蜘蛛たちから彼女を守り、安全を確保する動きまで見せていた。
「せやあぁっ!!」
今、やよいを仕留めようと彼女の背後を急襲した土蜘蛛が、『時雨』に斬り捨てられて倒れた。
続く第二波、第三波をやよいと共に撃退しつつ、彼女を安全圏に匿う蒼は、彼女が操る『青空』の巧みな動きに合わせ、妖を葬っていく。
数秒後、額の目をけん玉によって叩き潰されて大きな隙を見せた土蜘蛛を斬り捨てた蒼は、軽く息を吐いた後にやよいの安否を気遣って声をかけた。
「大丈夫、やよいさん?」
「平気、平気~! 蒼くんが助けてくれるから、あたしも安心安全だよ~! 後でお礼に良いことしてあげるね!」
「そういう冗談は戦いが終わってから言ってね、っと!!」
手裏剣を投げ、燈たちを援護しながら無邪気に笑うやよい。
そんな彼女に迫る土蜘蛛をまた倒しながら、真面目な返答を口にする蒼。
前に突っ込んでいく相棒を補佐することに慣れたこの二人組の連携は熟練しており、流石の一言だ。
逆に、相棒に尻拭いされながら爆発的な攻撃力を見せる燈と栞桜のペアの連携は粗削りさが目立つものの、それを補うほどの大活躍も見せている。
燈の『紅龍』が煌き、栞桜の『金剛』が大地を揺らせば、その度に最低でも一体の土蜘蛛が戦場から姿を消す。
目に付いた敵を倒す。同じく前衛を張る相手と息を合わせながら、単純なその行動を猛スピードで、粛々とこなしていく二人の暴れっぷりは鬼神の如し。
特に迷いから解放された栞桜は、素直に仲間に頼ることが出来る精神的な余裕も相まって、今までのぎこちない動きが嘘であるかのように軽やかに戦場を舞っていた。
「オラッ! 次行くぞっ! 遅れるなよ、栞桜!」
「お前こそ! 私の動きについてこれるか!?」
お互いに軽口を叩き、信頼関係を窺わせるような笑顔を浮かべながら武神刀を振るう二人。
燈が縦に、栞桜が横に、それぞれ赤と桜色の斬光を煌かせて土蜘蛛を屠ってみれば、それがこの場に残る最後の一匹であることに気が付く。
「お? もう終わりか? なんだよ、思ったより楽な相手じゃねえの!」
「お疲れさま~! あたしたち、初陣にしては良い連携だったんじゃない!? これは最強の武士団になれる日もそう遠くはないかな~!」
「二人とも、油断しない。まだここは敵地なんだから、警戒を緩めちゃ駄目でしょ? それに、捕まってる人たちを助ける仕事が残ってるんだから、お喋りはその後で!」
「「は~い!」」
刀を鞘に納め、ハイタッチ。
まだまだ余裕を残す燈と無邪気に勝利を喜ぶやよいは、まるで保護者のようにそのお気楽な態度を咎める蒼の言葉に元気よく返事をする。
そんな一同をもじもじと指を絡ませて躊躇いがちに見つめていた栞桜は、相棒であるやよいの一言にびくりと体を跳ね上がらせた。
「……で? あたしたちに何かを言わなきゃいけない人が、ここにいるんじゃないかな~?」
「うっ……!」
意地悪く、笑みを浮かべながら栞桜目掛けてそんな言葉を投げかけるやよい。
一応は思いやりの心からくる行動であったものの、仲間たちを置いて単独で勝負に臨んだ栞桜の行動を咎めているその言葉を受け、栞桜の表情が罪悪感に染まる。
燈も蒼も、やよいと同じような笑みを浮かべてこちらを見つめていた。
冷酷な表情ではなく、少し楽し気な笑みを浮かべている彼らが本気で怒っているわけではないことは判っているが、それでもやはり気まずさを感じてしまうことは確かだ。
「その……悪かった! お前たちを置いていったこと、本当に申し訳なく思っている! ごめんなさい! そ、それと……助けにきてくれて、ありがとぅ……」
前半の謝罪は大声で、後半の感謝の言葉は尻すぼみになって、仲間たちへと自らの想いを言葉にした栞桜。
三人はそんな彼女の姿に満足気に笑うと、代表として燈が頭を下げている栞桜の額を思い切り指で弾いた。
「あいだっ!? う、おぉぉぉ……!?」
「へへっ! とりあえず、俺たちからはそれで制裁完了ってことにしておいてやるよ。きっちり詫びも入れてもらったし、感謝の言葉も聞けたしな。ただ、帰ったら桔梗さんと椿の分が残ってるってことを忘れんなよ?」
「あ、ああ……その、何だ。お前たちには、大きな借りが出来てしまったな。特に燈は、その……」
「……はいはい。わかってるからみなまで言うなよ、泣き虫栞桜ちゃん!」
「なっ!? 貴様、流石にそれは言葉が過ぎるだろうが! 泣き虫とはなんだ、泣き虫とは!?」
「なんだって、事実だろうが。……おい、ちょっと待て! 武神刀を使うのは反則だろ!?」
「あ~……だから、まだ敵地なんだからはしゃがないでって言ってるのに、もう……」
顔を真っ赤にして照れ混じりの怒りを見せる栞桜と、彼女から逃げ回る燈。
楽しそうではあるが、先の自分の忠告をまるっと無視する二人の姿に、蒼がげんなりとした表情を浮かべる。
そんな一同を見守っていたやよいは、これまでの栞桜が見せることがなかった溌溂とした姿に、心の中で安堵と喜びを感じていた。
「ふふふっ! 本当によかった。栞桜ちゃん、燈くんのお陰で一皮剥けたみたい!」
抱えていたコンプレックスや苦悩を乗り越え、明るい姿を見せるようになった栞桜の成長を喜ぶやよいもまた、この事件を通して僅かながらも自分が良い方向に変わったことを感じ取っていた。
桔梗と同じ、天元三刀匠の一人である宗正が育てた弟子。燈と蒼。
その二人が運んでくれた風は、停滞していた自分たちの心を動かす追い風になってくれたようだ。
そのことに感謝しつつ、珍しく男性とはしゃぐ相棒の姿を見守っていたやよいであったが、流石にこれ以上は放置出来ないと咳払いした蒼によって、三人纏めて注意を受けることになってしまった。
「はい、そこまで! ……いい加減にしないと、僕も怒るよ? まずは捕らえられている人たちの救出を優先、いいね!?」
「お、おう!」
「りょ、了解した」
「ひえ~、蒼くん怖いよ~! そんなに怒らないでよ、気晴らしにあたしのおっぱい揉んでもいいか、むへっ!?」
「……そういう冗談は後にしてくれって、言ったよね? 流石にここまで緊張感がないのは駄目だと思うんだけど?」
「ふにゅ~! ごめんごめん! 悪ふざけしすぎちゃったのは認めるから~! 頬っぺた引っ張らないで~!」
目が全く笑っていない、見るからに恐ろしい笑顔を浮かべながらやよいの頬を抓る蒼。
その極寒の笑みを目の当たりにした燈と栞桜は、今後は蒼を絶対に怒らせないぞと硬く心に誓った。
なにはともあれ、これにて一件落着。
土蜘蛛たちの退治も終わり、妖たちに捕らえられていた人たちも大半は無事に助け出せそうだ。
ようやく蒼の折檻から解放され、赤くなった頬を擦りながら地面に転がっている繭を切り開いていくやよいが、仲間たちに向けて事態が収束に向かっていることを喜ぶ言葉を口にする。
「色々あったけど、これで沢山の物事に決着がついたね! 別府屋の奴らとの勝負は、あたしたちの勝ちだ!」
「正直、犠牲が出てる時点で素直に喜べない部分もあるけどよ……桔梗さんやお前たちを馬鹿にしてたあの狸オヤジが悔しがる顔を見れるってのは、スカッとするモンがあるよな」
「別府屋お抱えの武士たちも、この戦いで大きな被害を受けた。再起を図るのは難しいかもしれないね」
「そうだな。……少しはおばば様も喜んでくれるかな? 私たちがくちなわ兄弟をはじめとした武士たちや異世界の英雄に勝ったと知ったら、成長を褒めて……ん?」
しみじみと、仲間たちと掴み取った勝利の尊さを噛み締めていた栞桜の表情が、何か違和感を覚えて歪む。
自分が口にした言葉の中に、何か大切な情報が紛れていたような気がした彼女は、戦いに臨むまでの流れを頭の中で思い返して――
「あーーーーっっ!!」
――この戦いに、異世界から召喚された英雄こと、竹元順平が参加していることを思い出した。
「うおおおっっ!? なんだ、どうしたっ!? 藪から棒に大声出すんじゃねえ! びっくりするだろうが!!」
「す、すまん! だが、マズいことになった! じ、実は――」
そのことを思い出した衝撃で大声を出してしまった栞桜は、その声に驚いて怒鳴る燈たちへと事情を説明した。
足早な説明ではあったものの、自分と同じ出身の人間、それも憎き竹元がこの場に居るという話を聞いた燈の表情が、みるみるうちに渋く歪んでいく。
「おいおいおいおい! あの馬鹿がここに居るってのか!? それも向こう側の助っ人として!? あいつ、マジで何をやってんだよ!?」
「見た感じ、繭の中にそれらしき人物はいないね。死体も見つかってないし、洞窟の何処かに隠れてるのかも」
「……どうする? 殺っちゃう? 燈くんとこころちゃんの仇ってんなら、今のうちに始末しておいた方が良いんじゃない? 幸い、うってつけの状況だしさ」
「ばっか! そんなことしたら、俺たちもあいつと同じ外道の仲間入りだろうが! 私怨で人を殺めず、正しい方法であいつを見返すって、俺は師匠と約束したんだよ! だから、ここであいつを殺すのは無し!」
「……ま、それもそうか! でも、どうするの? その竹元って人に燈くんが生きてることが知られたらマズいんだよね?」
「そこが問題なんだよ! おい、誰か包帯とか、顔を隠せそうなモンを持ってねえか!? 前回はそれで誤魔化せたから、今回も何とかなる!」
「あ~……ごめん。包帯はあるけど、顔をぐるぐる巻きに出来る量はないよ。せいぜい応急処置程度の量だけかな」
「うおぉぉぉぉ……!? や、ヤバい。どうする? なんか、なんか無いのか!? 顔を隠せそうなもの!」
順平の存在を知った燈は、再び包帯太郎への変装を試みるも、残念ながらそんな都合よく大量の包帯が用意されているはずがない。
ならば仮面でも、最悪頭陀袋でも良いからと何か顔を隠せる物を探し回る燈であったが、やはりそんな都合の良いものが転がっているはずもなかった。
「ま、マズい……! ここから脱出しようにも、このまま出て行った先にあの馬鹿がいたら一巻の終わりだ。他の奴ならいざ知らず、何で竹元がここにいるんだよ……!?」
考え得る限り、最悪の状況。
まさか戦いが終わった後にこんなピンチが待っているとは思いもしなかった燈は、頭を抱えてこの苦境をどう乗り切るかを考える。
うんうんと唸り、頭を捻り、必死に考えを巡らせる燈であったが……ふと、何か気配を感じるなと顔を上げると、真っ赤になった栞桜の顔が目と鼻の先にあることに気が付いて、驚きのあまり声を上げながら後退った。
「うおっ!? む、無言で近づくな! びっくりするだろうが!」
「……確認するぞ。顔を隠せる、包帯のようなものがあればいいんだな? それがあれば、お前は助かるんだな?」
「あぁ……? まあ、そうだけどよ。それがないから苦労してるわけで……」
「……い、いいか! こ、これは、あくまでお前に受けた恩を返すための行為であって、それ以上の感情はなにもない! 万が一にも妙な気を起こしたら、相応の対処をすると断言しておくからな!」
「はぁ? いやお前、何言って……うおおおおおおっっ!?」
顔を増々赤くし、難しい表情を浮かべながらそう言い放つ栞桜へと訝し気な視線を向けていた燈が、素っ頓狂な叫びをあげる。
その理由は単純で、栞桜がいきなり自分の着物をはだけさせ、上半身を露出したからだ。
咄嗟に顔を背けたお陰でまともに栞桜の痴態を見ることはなかった燈だが、普段の彼女が取るとは思えないおかしな行動に精神は動揺してしまっていた。
「何やってんの!? 何してんの、お前!? さっきの戦いで頭でも打ったのか!? おい!?」
「黙れ! お前のためにやってるんだろうが! ……絶対にこっちを向くなよ。向いたら顔の形が変わるまで殴り続けてやるからな! 蒼、お前もだぞ!」
「……言われるまでもありません。はい」
栞桜からの念押しの言葉に、無表情になって天井を見上げる蒼が答える。
思ったよりも初心な男二人組の反応にドギマギしながら頷いた栞桜は、まさかという表情を浮かべているやよいへと手招きをした。
「ね、ねえ、栞桜ちゃん? ほんと、もしかしてなんだけどさ……?」
「そのもしかしてだよ! いいからお前も手伝え! 少しでも茶化したら、洞窟の壁に埋め込んでやるからな!」
「??????」
二人の会話を聞いたとしても、燈と蒼には栞桜の考えがまるで理解出来なかった。
彼女が燈を手助けしようとしていることは判ったが、それがどうして服を脱ぐことに繋がるのかが判らないでいる。
脳内に?マークを大量に浮かべながら衣擦れの音を耳にしている燈がその答えに気が付くのは、今より数分後の話であった。
……その際、燈と栞桜の間でかなりの悶着が起きたことをここに記しておく。
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