名探偵になりたい高校生

なむむ

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二十九話 文化祭 七

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 クラスに戻った俺がまず思った事がある。
 それは。
 お客さんが一人もいない事だ。
 午前中よりも状況が悪くなっていた。
 教室に残って店番をしているクラスの人達は退屈そうにしている。
 俺は近くにいた嗚呼さんに声を掛けてみた。
「嗚呼さん。午後はお客さん来た?」
「お客?午後になってからは一人も来てないよ。完全に向こうに取られてる」
 向こうとは全開高校の事だろう。
 全開高校の出し物は俺のクラスと同じ縁日だ。
 しかし、向こうの縁日は縁日でもスーパー縁日。こっちとは全く違うのだろう。
 ここは一度観に行くべきか。
 てか、行かないと玲那れながうるさいと思う。

 俺はクラスを出て玲那のいる、二年一組に向かう事にした
 その道中に灰村を発見する。
「よう、灰村、今から玲那の所に行くが、お前も一緒に行かないか?」
能登のとさんの所?」
「ああ、嫌なら無理にとは言わないが」
 灰村は少し考える。
 無理もない。
 灰村と玲那は仲が悪い。会えばケンカになるのにわざわざ会いに行く必要はないだろう。
「そうね。行ってみようかな。偵察も兼ねて」
 偵察?
 まあいい。俺と灰村は二階に向かった。

 二階に着くと、祭りでよく聞く笛の音や太鼓の音が大きく鳴り響いていた。
 その音の発生源は二年一組なのはすぐにわかった。
 しかし、この音量だと二階のエリア全てが縁日だと錯覚してしまいそうだ。
「うるさ…」
 灰村は呟く。俺も同じ感想だが、立ち止まるわけにも行かず、二年一組へと足を運ぶ。

「孝ちゃん!!来てくれたの!?」
 俺を発見するや否や、玲那は駆け寄ってきた。
「来ないとお前後でネチネチしつこいからな」
「そんな事無いでしょ」
 そんな事はある。
 こいつとの約束をすっぽかした時、鬼の様に電話、メールが着た事がある。
 今日俺がここに来なかったら、後で鬼の連絡が来る事だろう。
 本人は気してない、来れなかったなら仕方ないね、など言ってくるが、スマホの着歴を見る限り気にしてるし、めちゃくちゃ怒ってる。
 玲那は基本真面目だし、誰に対しても優しいがそれは表の顔。
 裏の顔、まあ本性は独占、束縛、嫉妬、が強い。だけど、気に入らない相手がいても誰かを使ってイジメなどは決してしない。自分から真っ向勝負しに行くタイプだ。

「こんにちは能登さん。私もいるけど」
 灰村は俺の背後から玲那に挨拶する。
 灰村に眼もくれず『チッ』と大き目の舌打ちをした。
「孝ちゃんの背後にゴミがいるなって思ってたけど、やっぱりクソ村だったのね」
「あらあら、そんな汚い言葉使っちゃって、全開高校の生徒会長ってみんなそうだったのかしら?」
 ちなみに灰村の前では、真面目で優しい玲那はいない。
 俺はこのまま二人がケンカしない事祈るばかりだ。

 玲那は灰村が嫌い。それでも誰かを使い灰村を陥れる事はせずに自ら真っ向勝負しに行く。そんな玲那に対し灰村も得意の情報力を使って戦おうとしない。真っ向勝負をしていた。
 正直なぜ二人がここまで激突したのかはわからんが。

「ふん、まあいいわ。アンタがこの空間にいる事にイライラが止まらないけど、それでも私はアンタを出禁になんて事はしないわ」
「あら、優しいのね。てっきり消えろとか言われると思ってたけど」
「それは常に思ってるわ。顔も見たくない。でもそれとこれは違うから。アンタはこのクラスの出し物に完敗すればいいわ」
 玲那は少し冷めた目をしながら二年一組を見た。
 そう言えば玲那はクラスのシャツを着てないな。
「応援に来てる癖にあまり、乗り気じゃないな」
「さすが、孝ちゃん。私の気持ちよくわかってるね。私は生徒会長だしこのクラスの先輩達が何をしているかは事前の調査でわかってる。だからこそ、ね…」
 玲那はそれ以上なにも言って来ない。
 後は中に入って体験しろって事だろう。
「それじゃ、間宮くん行きましょうか」
 俺は灰村と共にスーパー縁日の中に入って行った。


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