96 / 102
九十六話 二年一学期 十三
しおりを挟む
高校生活で一番の思いでは何ですか?と聞かれたらほとんどの人が修学旅行と答えるのではないだろうか?それだけ、修学旅行は学生時代にとって思い出に残る行事だ。
本日、学校では修学旅行の班決めを行う日だ。だからといって特に気合いを入れて通学をしているわけもなく、いつも通りの時間に家を出ていつも通りに学校に向かっている。
「おはよう」
学校近くで灰村にあった。
灰村もいつも通りの登校のようだ。
「おはよう」
灰村に挨拶をして、一緒に学校へ向かう。
「今日は修学旅行の班決めだな」
「そうね……」
「来るよな?」
灰村は家庭の事情の為、中学時代修学旅行を欠席した。施設の方で色々と重なってお金が必要になるとの事で灰村は修学旅行を欠席した。
今回もそうなってしまうのではないかと思った俺は灰村に参加出来るのかと聞いたわけだ。
「行くよ。最初は行かないつもりだったんだけど、この間由美さんにそう言ったら喧嘩になってね。一度くらいちゃんと行けって怒られたのよ」
「そうか。大変だったな。まあ灰村が来れるって事は良かったよ。中学の時は来てないし」
金田さんの計画もあるし、よかった。
「……そうだね。今回はちゃんといくから安心して」
灰村は、バッグを右手から左手に持ち替え俺に並ぶ。肩が当たりそうな程の距離だ。最近灰村は俺との距離が近い気がする。何を考えてるんだろうか?
「所でさ、中学ってどこ行ったの?」
「中学?ええっと。京都だったよ」
「楽しかった?」
「……そりゃ、まあな。玲那の行きたいって行ってた、あの、ほら鳥居がたくさん並んでる所」
「千本鳥居の伏見稲荷神社?」
「そお。そこ」
「そこはどうだった?」
「まあ、たくさん鳥居あったなって……」
「あっそ」
灰村の鋭い視線が痛い。これ以上ぼろが出る前に話を切り替えよう。
「今回の修学旅行は沖縄だな」
「そうね。初めて行くよ。由美さんが泡盛買ってこいってうるさかったなぁ。それが欲しいから、行けって言ってきたのかな」
「そこは違うと思いたいな」
──学校に到着し、席に着くと、普段は話し掛けてこない男、駒川くんが話し掛けてきた。
「間宮、お前の部活余計な事してくれたんだってな」
「余計な事?」
先週の事だろうか。ゲーム制作部が作るゲームのイラストを、駒川くんが所属するデジタルイラスト部、略してデジイラ部が協力する事になった。その案を出したのは生徒会長の檜山先輩だが、ゲーム自体はいいと認めたのは俺達探偵部だし、全く関係ないとは言い切れない。
「ゲームの事?」
「そうだ。生徒会からゲーム制作部に協力しろって依頼があった。先輩が会長と仲が良くって了承したんだけどよ」
「駒川くんは反対と?」
だとすると面倒だな……。
「いや、別にそれは構わない。俺達も文化祭、なにやるか決まって無かったしちょうど良かったんだけど、問題は牧田だ」
牧田さんは今年入った一年生で、極度の人見知りだ。駒川くんのデジイラ部にも入部するのに、俺達が関わったのも覚えている。
「あの、人見知りの子だよね」
「牧田が、あわあわとしてな。あいつの人見知りにも困ったもんだ。最近やっと先輩達とも話せるようになったばかりだってのに……」
ハアと軽く溜め息を吐く駒川くん。最近話すようにって……入部してもう一ヶ月以上は経っただろうに。
「それは、大変だね」
「ああ、だからお前に相談だ」
相談?困惑している俺の前に、いつもは遅刻、もしくは遅刻ギリギリの男が登場する。
「よお、孝一と駒川。なにやってんだよ二人して」
「ああ、跡野か、ちょうどいいお前にも話が……」
「香和里ちゃんから聞いたよ。さえちゃんの事だろ。大丈夫、大丈夫、その時が来たらさえちゃんには俺から素敵なアドバイスしとくから。任せとけって」
素敵なアドバイスとはなんだろ。きっと素敵でもなんでもないんだろうな。
「そうか。なら、夏休み前にでもまた頼むわ」
駒川くんは『それじゃ』と言って自分の席へと向かう。それを見届けてから快斗へと視線を向けた。
「本当に大丈夫か。牧田さんって極度の人見知りだろ」
「ああ、任せろ。女子の事なら俺に」
ああ、なんだろう。信用したくないが、信用出来そうなこの感じ。
「それよりも今日は随分と早いな」
「そりゃ、そうだろ。今日は修学旅行の班決めの日だぞ」
どうやら快斗は気合いを入れ登校するタイプの人間だった。
──一日の授業は残す所六限目のみ。六限目は修学旅行の事の話し合い。まずは体育館に集合し、全体の流れの説明を受けた。次に各教室に戻り、班決めとなる。
担任の磯川先生が教壇に立つ。
「よーし、いいかお前ら。これから班決めを行うぞ。まずは男子、女子五名のずつの班を二つ作ってくれ」
先生が言うと、生徒は立ち上がり、直ぐさま中の良い人達のへと向かった。このクラスは男女全体に仲が良く班決めはスムーズに行われるだろう。
「孝一、班組もうぜぇ」
快斗は真っ先に俺の所にやって来た。
「うん。快斗から言ってくれるなんて嬉しいよ」
「そうだろ。俺はお前の親友ポジだぜ」
親友ポジらしい行動を始めて見せてくれた。
続いて俺は、隣に座る遠山くんに声を掛ける。
「遠山くん、一緒の班になろうよ」
「僕も間宮くんを誘おうと思ってたんだ、よろしく頼むよ」
遠山くんは爽やかな笑顔を向ける、後二人、遠山くんに声を掛け、前に座るこの男にも声を掛けないのは友人として失礼だな。
「雄二、よかったら……」
「おう」
雄二は即答だった。声を掛けてくるつもりだったのかな?
「さて、後一人だな。近ちゃん」
快斗は前の方に座り、飯島さんと話していた近藤くんに声を掛ける。
「近ちゃん、班まだ、決まってないだろ。一緒の班になろうぜ」
「おお、ありがてぇ。よろしく頼むわ」
近藤くんも加わり、男子は揃う。
「さて、ここからが勝負だ」
快斗は目付きが変わり、女子達を見つめている。何が勝負なんだ?
「快斗、やる気か」
「当たり前だ。近ちゃん、全てはこの日の為にだ」
仲いいなこの二人……。
男子が決まり、続いては女子との合同班を作る。真っ先に動いたのは快斗だ。
「灰村さーーん!!一緒の班になろう!!」
快斗は、灰村の方へ駆け寄る。凄まじいスピードだな。そんなに灰村と班になりたかったのか。まあ、俺も声かけようかとは思ってたけどさ。灰村の周りには、金田さん、飯島さん、柳さんに堀田さんが集まっていた。
「快斗絶対こっち来ると思ってた」
「明ちゃん俺が来てくれて嬉しい?」
「別に……。あんたん所誰いんの?それ次第かな」
「最強メンバーだ。俺がいる時点で」
「私的には、それが一番問題なんだけど」
「灰村さんそんな事言わないでさ」
「それで、快斗くん、明ちゃんが言ってたけど、男子は誰いるの?」
「あそこにたまってる野郎共」
快斗は俺達を見ずに指だけ差す。それを追って女子達もこっちを見る。
「部長に、間宮。佐竹くんに、近藤だっけ。ふーん。どうしようか」
金田さんは女子全員に聞く。近藤くんは金田さんグループに入りたいのか、両手を胸の前で握り祈っている。近藤くんの様に、祈ってはいないが、雄二も堀田さんがいるから、同じ班になりたいと願っているに違いない。
「私は別に構わないぞ。跡野くんのいるメンバー達の方が融通聞きそうだし」
まず口を開いたのは堀田さん。快斗がいる。それは男子と女子意見が分かれた時、真っ先に味方になる男がいる事で、多数決になったら確実に勝てる事から、と言う事で選んだ可能性が高い。堀田さんが一番に反応し、良いと言った時、隣に立つ雄二は小さな声で、『しゃ』っと言っていたのは聞き逃してない。
「私もOKです」
「さすが、寧々ちゃんと香澄ちゃん可愛いだけあって心が広い」
「ああ、なに?私達が断ったら、可愛くないし、心が狭いって事言ってんの?」
「違う違う。明ちゃんも可愛いよ。さあ、三人はどう?」
「私はいいよ」
灰村がいいとなり、残りの二人もOKとなった事で、次の話し合いになる。
修学旅行は二泊三日。三日目の最終日、その日の自由行動での班決めを行う。男子女子合わせて十人だと多い為、この合同班からさらに班を決めるという事だ。この班決めで、また男女分裂する班も出てくるのだろうか。もう一つの近衛くん、グループを見てみる。和気あいあいと話しているから分裂はなさそうだ。見ていると、麦野さんと目が合った。麦野さんはニコッと優しく微笑んでいたが、少し悲しそうな表情でもあった。なにかあったのかな?行きたい所に行けなかったとか……。
視線を戻す。さて、こっちはと。
「じゃあ、三日目ね。班決めるけど──」
金田さんの言葉と同時に動く二人の男子。
「灰村さん!!」「茜」
「「一緒に行動しよう」」
「えっ、近藤?」
近藤くんからのお誘いに、困惑する、飯島さん。そうか、近藤くんって……。
「快斗に近藤。焦んないの。三日目は二日目の夜、女子だけの話し合いで決める事になってるから。あんたらはこの二日間でいや、今から私達の好感度を下げないように頑張りなさいよ」
「め、明ちゃん。それは……」
「ふふん、ザ・チーム美女軍団の前に好きにチーム組めると思うなよー」
ネーミングセンスは非常にダサい。と俺は思っているが、堀田さんは少し嬉しそうにしていた。もしかして、堀田さんが考えたか?
「選ばれなかったら男子だけで行動になるかもよー。私達に逆らうなよ」
「はっはっは。金田は面白い事を思いつくな。なら僕達は頑張らないとね」
「そうよー。まあ、好感度の上げるチャンスはちゃんと作ってあげるから、頑張りなさいよ」
ケラケラと笑う金田さん。悪魔の様な女子に見えてしまう。
「沖縄って言ったら海だよねーやっぱり。今日、水着買いに行こうよ」
「ええ、明ちゃん、水着着るつもりだったの!?」
「もちろん。だって沖縄じゃん。もったいないよ」
突然の水着着る発言。
その言葉にうちの班員ではない男が反応していた。近衛くんだ。こっちを凝視している。見るな。自分の班に集中しなさい。
「と、言う事で、女子は今日学校終わったら水着買いに行くわよ」
「金田、去年の水着着れなくなったのかい?」
遠山くんは金田さんの水着姿を見た事があるのか、普通な顔をして聞いている。
「はあ!!着れるわよ!!部長、減点!!」
「はっはっは。減点になってしまったよ」
減点されても平気なのか、遠山くんは笑っていた。余裕の笑みなのか、それともなにも考えていないのだろうか。
「誠実、お前なにもわかってねぇなあ。明ちゃんは去年よりもウエストが少し細くなってるぞ。ほんの少しだけど」
快斗は、金田さんの腰回り見ながら遠山くんに話す。
「快斗くん、余計な事いわんでいい。減点」
飯島さん、快斗を減点する。それを見ていた近藤くんは笑顔で快斗の肩を掴み、話し掛ける。
「いいぞ、快斗どんどん減点してもらってくれ」
「近ちゃん、今は敵か……。灰村さんには減点にされないようにしなきゃ」
「私は君を減点にはしないよ」
「おお、さすが灰村さん、可愛くて美人で優しい素敵な天使」
「これ以上減点出来ない程マイナスだから」
灰村の悲しい一言で、話はいったん終わる。
「それにしても水着か。中一の時の水着着れるかな」
「えっ。堀田ちゃん。無理に決まってんじゃん」
「そうかな?」
「そりゃ、そうでしょ。きつきつだって」
「そんなに太ってはいないと思うが」
「胸の話ね。それとも堀田ちゃん中一からでかかったの?」
「ん?これか?そういえばそうだね。そこの事考えてなかった。めんどくさいな。水着買うの」
「ダメ、水着買うのは絶対」
「まあ、海入りたいし。買うしかないか」
「じゃあ、決まり。放課後行くよー」
その後男子、女子のリーダーを決め、男子は遠山くん、女子は金田さんとなった。
本日、学校では修学旅行の班決めを行う日だ。だからといって特に気合いを入れて通学をしているわけもなく、いつも通りの時間に家を出ていつも通りに学校に向かっている。
「おはよう」
学校近くで灰村にあった。
灰村もいつも通りの登校のようだ。
「おはよう」
灰村に挨拶をして、一緒に学校へ向かう。
「今日は修学旅行の班決めだな」
「そうね……」
「来るよな?」
灰村は家庭の事情の為、中学時代修学旅行を欠席した。施設の方で色々と重なってお金が必要になるとの事で灰村は修学旅行を欠席した。
今回もそうなってしまうのではないかと思った俺は灰村に参加出来るのかと聞いたわけだ。
「行くよ。最初は行かないつもりだったんだけど、この間由美さんにそう言ったら喧嘩になってね。一度くらいちゃんと行けって怒られたのよ」
「そうか。大変だったな。まあ灰村が来れるって事は良かったよ。中学の時は来てないし」
金田さんの計画もあるし、よかった。
「……そうだね。今回はちゃんといくから安心して」
灰村は、バッグを右手から左手に持ち替え俺に並ぶ。肩が当たりそうな程の距離だ。最近灰村は俺との距離が近い気がする。何を考えてるんだろうか?
「所でさ、中学ってどこ行ったの?」
「中学?ええっと。京都だったよ」
「楽しかった?」
「……そりゃ、まあな。玲那の行きたいって行ってた、あの、ほら鳥居がたくさん並んでる所」
「千本鳥居の伏見稲荷神社?」
「そお。そこ」
「そこはどうだった?」
「まあ、たくさん鳥居あったなって……」
「あっそ」
灰村の鋭い視線が痛い。これ以上ぼろが出る前に話を切り替えよう。
「今回の修学旅行は沖縄だな」
「そうね。初めて行くよ。由美さんが泡盛買ってこいってうるさかったなぁ。それが欲しいから、行けって言ってきたのかな」
「そこは違うと思いたいな」
──学校に到着し、席に着くと、普段は話し掛けてこない男、駒川くんが話し掛けてきた。
「間宮、お前の部活余計な事してくれたんだってな」
「余計な事?」
先週の事だろうか。ゲーム制作部が作るゲームのイラストを、駒川くんが所属するデジタルイラスト部、略してデジイラ部が協力する事になった。その案を出したのは生徒会長の檜山先輩だが、ゲーム自体はいいと認めたのは俺達探偵部だし、全く関係ないとは言い切れない。
「ゲームの事?」
「そうだ。生徒会からゲーム制作部に協力しろって依頼があった。先輩が会長と仲が良くって了承したんだけどよ」
「駒川くんは反対と?」
だとすると面倒だな……。
「いや、別にそれは構わない。俺達も文化祭、なにやるか決まって無かったしちょうど良かったんだけど、問題は牧田だ」
牧田さんは今年入った一年生で、極度の人見知りだ。駒川くんのデジイラ部にも入部するのに、俺達が関わったのも覚えている。
「あの、人見知りの子だよね」
「牧田が、あわあわとしてな。あいつの人見知りにも困ったもんだ。最近やっと先輩達とも話せるようになったばかりだってのに……」
ハアと軽く溜め息を吐く駒川くん。最近話すようにって……入部してもう一ヶ月以上は経っただろうに。
「それは、大変だね」
「ああ、だからお前に相談だ」
相談?困惑している俺の前に、いつもは遅刻、もしくは遅刻ギリギリの男が登場する。
「よお、孝一と駒川。なにやってんだよ二人して」
「ああ、跡野か、ちょうどいいお前にも話が……」
「香和里ちゃんから聞いたよ。さえちゃんの事だろ。大丈夫、大丈夫、その時が来たらさえちゃんには俺から素敵なアドバイスしとくから。任せとけって」
素敵なアドバイスとはなんだろ。きっと素敵でもなんでもないんだろうな。
「そうか。なら、夏休み前にでもまた頼むわ」
駒川くんは『それじゃ』と言って自分の席へと向かう。それを見届けてから快斗へと視線を向けた。
「本当に大丈夫か。牧田さんって極度の人見知りだろ」
「ああ、任せろ。女子の事なら俺に」
ああ、なんだろう。信用したくないが、信用出来そうなこの感じ。
「それよりも今日は随分と早いな」
「そりゃ、そうだろ。今日は修学旅行の班決めの日だぞ」
どうやら快斗は気合いを入れ登校するタイプの人間だった。
──一日の授業は残す所六限目のみ。六限目は修学旅行の事の話し合い。まずは体育館に集合し、全体の流れの説明を受けた。次に各教室に戻り、班決めとなる。
担任の磯川先生が教壇に立つ。
「よーし、いいかお前ら。これから班決めを行うぞ。まずは男子、女子五名のずつの班を二つ作ってくれ」
先生が言うと、生徒は立ち上がり、直ぐさま中の良い人達のへと向かった。このクラスは男女全体に仲が良く班決めはスムーズに行われるだろう。
「孝一、班組もうぜぇ」
快斗は真っ先に俺の所にやって来た。
「うん。快斗から言ってくれるなんて嬉しいよ」
「そうだろ。俺はお前の親友ポジだぜ」
親友ポジらしい行動を始めて見せてくれた。
続いて俺は、隣に座る遠山くんに声を掛ける。
「遠山くん、一緒の班になろうよ」
「僕も間宮くんを誘おうと思ってたんだ、よろしく頼むよ」
遠山くんは爽やかな笑顔を向ける、後二人、遠山くんに声を掛け、前に座るこの男にも声を掛けないのは友人として失礼だな。
「雄二、よかったら……」
「おう」
雄二は即答だった。声を掛けてくるつもりだったのかな?
「さて、後一人だな。近ちゃん」
快斗は前の方に座り、飯島さんと話していた近藤くんに声を掛ける。
「近ちゃん、班まだ、決まってないだろ。一緒の班になろうぜ」
「おお、ありがてぇ。よろしく頼むわ」
近藤くんも加わり、男子は揃う。
「さて、ここからが勝負だ」
快斗は目付きが変わり、女子達を見つめている。何が勝負なんだ?
「快斗、やる気か」
「当たり前だ。近ちゃん、全てはこの日の為にだ」
仲いいなこの二人……。
男子が決まり、続いては女子との合同班を作る。真っ先に動いたのは快斗だ。
「灰村さーーん!!一緒の班になろう!!」
快斗は、灰村の方へ駆け寄る。凄まじいスピードだな。そんなに灰村と班になりたかったのか。まあ、俺も声かけようかとは思ってたけどさ。灰村の周りには、金田さん、飯島さん、柳さんに堀田さんが集まっていた。
「快斗絶対こっち来ると思ってた」
「明ちゃん俺が来てくれて嬉しい?」
「別に……。あんたん所誰いんの?それ次第かな」
「最強メンバーだ。俺がいる時点で」
「私的には、それが一番問題なんだけど」
「灰村さんそんな事言わないでさ」
「それで、快斗くん、明ちゃんが言ってたけど、男子は誰いるの?」
「あそこにたまってる野郎共」
快斗は俺達を見ずに指だけ差す。それを追って女子達もこっちを見る。
「部長に、間宮。佐竹くんに、近藤だっけ。ふーん。どうしようか」
金田さんは女子全員に聞く。近藤くんは金田さんグループに入りたいのか、両手を胸の前で握り祈っている。近藤くんの様に、祈ってはいないが、雄二も堀田さんがいるから、同じ班になりたいと願っているに違いない。
「私は別に構わないぞ。跡野くんのいるメンバー達の方が融通聞きそうだし」
まず口を開いたのは堀田さん。快斗がいる。それは男子と女子意見が分かれた時、真っ先に味方になる男がいる事で、多数決になったら確実に勝てる事から、と言う事で選んだ可能性が高い。堀田さんが一番に反応し、良いと言った時、隣に立つ雄二は小さな声で、『しゃ』っと言っていたのは聞き逃してない。
「私もOKです」
「さすが、寧々ちゃんと香澄ちゃん可愛いだけあって心が広い」
「ああ、なに?私達が断ったら、可愛くないし、心が狭いって事言ってんの?」
「違う違う。明ちゃんも可愛いよ。さあ、三人はどう?」
「私はいいよ」
灰村がいいとなり、残りの二人もOKとなった事で、次の話し合いになる。
修学旅行は二泊三日。三日目の最終日、その日の自由行動での班決めを行う。男子女子合わせて十人だと多い為、この合同班からさらに班を決めるという事だ。この班決めで、また男女分裂する班も出てくるのだろうか。もう一つの近衛くん、グループを見てみる。和気あいあいと話しているから分裂はなさそうだ。見ていると、麦野さんと目が合った。麦野さんはニコッと優しく微笑んでいたが、少し悲しそうな表情でもあった。なにかあったのかな?行きたい所に行けなかったとか……。
視線を戻す。さて、こっちはと。
「じゃあ、三日目ね。班決めるけど──」
金田さんの言葉と同時に動く二人の男子。
「灰村さん!!」「茜」
「「一緒に行動しよう」」
「えっ、近藤?」
近藤くんからのお誘いに、困惑する、飯島さん。そうか、近藤くんって……。
「快斗に近藤。焦んないの。三日目は二日目の夜、女子だけの話し合いで決める事になってるから。あんたらはこの二日間でいや、今から私達の好感度を下げないように頑張りなさいよ」
「め、明ちゃん。それは……」
「ふふん、ザ・チーム美女軍団の前に好きにチーム組めると思うなよー」
ネーミングセンスは非常にダサい。と俺は思っているが、堀田さんは少し嬉しそうにしていた。もしかして、堀田さんが考えたか?
「選ばれなかったら男子だけで行動になるかもよー。私達に逆らうなよ」
「はっはっは。金田は面白い事を思いつくな。なら僕達は頑張らないとね」
「そうよー。まあ、好感度の上げるチャンスはちゃんと作ってあげるから、頑張りなさいよ」
ケラケラと笑う金田さん。悪魔の様な女子に見えてしまう。
「沖縄って言ったら海だよねーやっぱり。今日、水着買いに行こうよ」
「ええ、明ちゃん、水着着るつもりだったの!?」
「もちろん。だって沖縄じゃん。もったいないよ」
突然の水着着る発言。
その言葉にうちの班員ではない男が反応していた。近衛くんだ。こっちを凝視している。見るな。自分の班に集中しなさい。
「と、言う事で、女子は今日学校終わったら水着買いに行くわよ」
「金田、去年の水着着れなくなったのかい?」
遠山くんは金田さんの水着姿を見た事があるのか、普通な顔をして聞いている。
「はあ!!着れるわよ!!部長、減点!!」
「はっはっは。減点になってしまったよ」
減点されても平気なのか、遠山くんは笑っていた。余裕の笑みなのか、それともなにも考えていないのだろうか。
「誠実、お前なにもわかってねぇなあ。明ちゃんは去年よりもウエストが少し細くなってるぞ。ほんの少しだけど」
快斗は、金田さんの腰回り見ながら遠山くんに話す。
「快斗くん、余計な事いわんでいい。減点」
飯島さん、快斗を減点する。それを見ていた近藤くんは笑顔で快斗の肩を掴み、話し掛ける。
「いいぞ、快斗どんどん減点してもらってくれ」
「近ちゃん、今は敵か……。灰村さんには減点にされないようにしなきゃ」
「私は君を減点にはしないよ」
「おお、さすが灰村さん、可愛くて美人で優しい素敵な天使」
「これ以上減点出来ない程マイナスだから」
灰村の悲しい一言で、話はいったん終わる。
「それにしても水着か。中一の時の水着着れるかな」
「えっ。堀田ちゃん。無理に決まってんじゃん」
「そうかな?」
「そりゃ、そうでしょ。きつきつだって」
「そんなに太ってはいないと思うが」
「胸の話ね。それとも堀田ちゃん中一からでかかったの?」
「ん?これか?そういえばそうだね。そこの事考えてなかった。めんどくさいな。水着買うの」
「ダメ、水着買うのは絶対」
「まあ、海入りたいし。買うしかないか」
「じゃあ、決まり。放課後行くよー」
その後男子、女子のリーダーを決め、男子は遠山くん、女子は金田さんとなった。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん
菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる