最強勇者と他二名は再び異世界に飛ばされる~この世界は望まぬ御都合主義で廻ってる~

滓神 紙折

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第1章 再来の勇者

第3旅 どこの世界でも人は見た目で判断される1

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「さぁてと、まずは冒険者ギルドだな」

あれから3日。

王城を出てからはほぼ不眠不休で移動し、現在は王都から最も離れた都市に来ていた。

流石にステータスが下がった今の体でこれ以上活動し続けるのは辛い。

俺は道中絡んできた3人組のゴロツキから巻き上げた財布を手で弄びながら、これからの事を考える。

いつもの異世界召喚なら、最初に女神から、ある程度の世界観を聞かされるのだが、その女神はもういない。

これからは自分の足で情報は集めなければならないのだ。

しかし、自由に成ったのは嬉しいが、こういう情報集めは面倒だ。

ということで、俺はクラスメイトや、王宮の奴らの記憶を消した後、書庫へと向かい警備兵を眠らせ、本や資料を漁った。

そのおかげで、この世界の事をある程度知ることができた。

世界観や物価など。
大抵の、一般常識は学べたはずだ。

それで分かったのだが、どうやらこの世界はそこまで界位の高い世界ではなかったらしい。

科学技術は全くと言って良いほど発達しておらず、魔法もそこそこという所だ。


他にも、現在地などもわかった。

今いる国は人大国セレギオスという国だった。

なんでも此処は人類至上主義の国家だったらしく、この国では亜人を含む、純人類以外の種族は問答無用で殺されるか奴隷に落とされるらしい。

たまにすれ違う亜人種は皆首輪を付けられていたので、この情報は間違いないと思われる。

これは別に珍しい事ではないので大して気にはならないのだが、気になる点が一つ。それは俺達。

というか勇者が召喚された理由だ。
どうやら今回勇者召喚を行った理由は魔王の発生が原因ではないらしい。

なんでも、この世界では、人国セレギオス、魔国ハーディア、獣国ガランティアラ、妖精国パラスティアという4つの大国が表立って対立しているらしい。

そんで、これから大規模な戦争を始めるからという理由で各国が戦力増大の為に勇者召喚を行ったそうだ。

召喚した勇者には他国の奴らの悪評を聞かせたりして、殺す事に対する罪悪感を薄め、元の世界に帰すのを条件に戦争に参加させるつもりだと、資料には書かれていた。

つか、こんな物、書庫に残してたらまずいだろ。あいつら何考えてんだ?

まあ、どっちにしろクラスの奴らと俺はもう無関係だし、戦争に巻き込まれないよう、安全で、戦争NGな何処かの小国にでも移って自由気ままな異世界ライフを送ろうと思う。

と、そんな事を考えているうちに冒険者ギルドに着いたようだ。

立派な石造りの外装に、分厚い木製の扉。
入口には武器や酒の絵が描かれた看板が付けられている。

扉を押すとギギィと年季の入った音と、カランカランと人が入ってきた事を知らせる鐘の音が響く。

この鐘は音を出す事で、職員や他の冒険者の注意を扉に向け、街に魔物が現れた時などの緊急時に迅速に対応出来るようにする効果があるらしい。

昔、他の世界で知り合った爺さんが言っていた事を思い出しながら、中に入り辺りを見渡す。

中は思ったよりも広く清潔そうな雰囲気で好感が持てる。

まだ早朝だということもあり、他の冒険者の数も少ない。


取り敢えず一番近い受付に向かう。

「いらっしゃいませ~。クエストの発注でしょうか?」

受付嬢が営業スマイルを向けてくる。

「いえ、今日は冒険者登録に来ました。」

此方も作り笑顔で対応する。
テンプレは起こさない。
あくまで友好的に。

「クスッ....えーと冒険者登録ですか....?その失礼ですがお幾つでしょうか....?」

いや、本当に失礼な奴だな。何笑ってんだ。
冒険者なんてどこの世界でも身元不明な奴が多いんだから一々詮索しちゃダメだろうが。

.....まあ、日本人はどこの世界へ行っても幼く見えるようなのでこれはしょうがない事だ。別に俺が童顔という訳ではなくて。

「えと、15歳ですが.....何か問題が?」
「15ぉ?.....あのぉ失礼ですがぁ、当ギルドでの登録は14歳からとなっておりましてぇ、ギルドカード発行のためぇ、身分証を提示していただけますかぁ?」

.......。
誰だテメェ。

急に話し方が変わった受付嬢に苛つきながらも何とか話を進める。

「すみません。身分証は持っていないんです。知人からギルドカードが身分証代わりになると聞いて来たのですが....」
「でしたらぁ、保護者の方ともう一度来ていただけますかぁ?」

子供の嘘を嗤うように、クスクスと此方を見て笑みを浮かべる受付嬢。

.....本当に俺が出会う奴は碌なのがいない。

「では、結構です。」
「....え?ちょ....」

これ以上時間は無駄に出来ない。

何かの拍子に王宮の奴らに掛けた魔法が解ける可能性がある。その前にダンジョンに潜って最低限レベルを上げなければならないのだ。

そして、ダンジョンに入るには冒険者になる必要があるらしい。

「冒険者登録がしたい。頼めるか?」

今度は少し近付きがたい強面のハゲオヤジが担当する受付へと向かう。

「...構わないが、その格好。後衛職というわけでもあるまい。......その細腕で大丈夫か?」

お前もか。
ステータスなんてモノが存在する世界だろうと、人間の第一印象は結局見た目だ。

「問題あるかは俺が決める。それとも試してみるか....?」

目を細め、少し語調を強めて返す。

「........いいだろう。代筆は必要か?」
「いらない。」

短く言葉を交わし、差し出された用紙に必要事項を書いていく。

「....終わった。」

記入事項の少なさに驚きながらも、こんなものかと思い直し、出身地以外の、氏名、性別、年齢、職業クラスの欄を埋めて提出する。

「...カナト・エダオリ、男性、15歳、.....魔法剣士か....わかった。ギルドカードを発行してやるからその辺の席について本でも見てろ。」

ここで、本を読むではなく見ると表現するあたりや、先程の代筆が必要か聞かれた事から、改めてこの世界の識字率の低さを確認する。

因みに、俺がこの世界の言語を理解し喋れるのは称号『異世界人』の効果によるものだ。

「わかった。どのくらいで終わりそうだ?」
「ギルドカードの発行自体に時間はかからん。ただ新入りの冒険者には暫くの間教育係がつく事になる。その担当を決めるのに少し時間がかかる。大体2時間弱といった所か」

長いし、要らない。
何だよ教育係って。
礼儀でも正されんのか?
それに行動が制限されるのも鬱陶しい。

「いや、必要ない。俺はダンジョンに潜れればいい。早くギルドカードの発行だけでも....」
「何だ、知らなかったのか?ダンジョンに入るには最低でもDランクは必要だぞ?...昔、自分の力を過信した馬鹿な新人がダンジョンに潜って死にまくったからな。今じゃどこのダンジョンもランク制限がかかってる。それに教育係も新人冒険者がDランクになるまで外す事はできん。これは規則だ。」
「...ランク?」

そう言えばずっと勇者特権で国が保有するダンジョンを使ってたから冒険者についてはあまり知らない。

それに、冒険者と一括りに言っても世界毎に役割は多少なりとも変わる。

「字は読めるのだろう?ならそこに置いてある本を読め。」

指さされた薄い本を手に取り、パラパラとめくる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


冒険者ガイド

ランク


冒険者にはランクというものが存在し、ランクとはその冒険者の依頼達成度や、強さ、ギルドからの信頼度を示すものである。


下からG→F→E→D→C→B→A→AA→Sという順になっており、最初は例外なくGランクからのスタートになる。


ランクは自分と同じランクの依頼を30回。叉は、自分よりもランクが上の依頼を3回こなす事で昇格する事が可能。


逆に、自分と同ランクの依頼を5回。叉は上のランクの依頼を2回失敗した場合、ランク一つ降格。


Dランクまでは、新人冒険者とされ、教育係がつく事になる。

また、Dランク以上の冒険者には、ダンジョンの入出許可が与えられる。


Cランク以上に昇格する場合は試験を受けなくてはならない。


などなど。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

他にもクランや、パーティーランクなどの説明もあったが、常時ソロの俺には関係ないし、興味もないので、割愛する。


しかし、それにしても面倒だし、時間がかかる。

本来の予定だったらこの後食料を買い込んで数日間ダンジョンに潜ってレベル上げしながらダンジョン内で生活するつもりだったのだ。

それに十分レベルがあがったらさっさとこの国を出て行くつもりだったのだが....。

「はぁ....わかった。...なるべく早くしてくれ。」

ダンジョンの最奥に存在するボス。
そのボスを倒せば大量の経験値が手に入る。
時間をかけてでもチミチミと雑魚を狩るよりソイツを倒した方が効率が良い。
それに、依頼をこなしていれば、結局雑魚も狩る事になる。

一石二鳥とは言わないが、ここで引き下がって、レベル上げもせずに情報が碌にない、転生したばかりの世界を闊歩するほど俺の頭の螺旋は緩んでいない。






....尤も今の俺の頭に螺旋が付いているかは知らんが。
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