23 / 30
第1章 記憶と兄妹
第2思 桜咲高校大失踪事件2
しおりを挟む
後日学校
「ねぇ、あみちゃん。最近何か事件とかなかったかな?」
自分でも急に何の前振りもなくこんな話を切り出すのはおかしいと思う。
しかし、それでも今の彼女には余裕がないのだ。
「んん?事件?事件だって?それは報道新聞部部長のこの橋場杏実ちゃんに聞いているのかな?」
ズズイと顔を近付けてくる報道新聞部部長。
「う、うん。....何かあるの?」
「うーん。と言っても、最近のホットでエキサイトなニュースと言ったら一つしかないんだよねぇ....。」
「....どんな?」
「いやまあ、絶対知ってると思うけど、やっぱり『桜咲高校大失踪事件』だね。」
「失踪事件.....?」
「えー。かなちゃんホントに知らないの?今、テレビつけたらそれしかやってないくらいだよー?報道新聞部部長としては、他のネタが手に入らなくて困っちゃうよ。みーんな知ってるし。」
「いや、本当に知らなくて....どんなのか分かる?」
「そりゃあ、もちろん。部長ですから。...何でも、桜咲高校っていう高校の生徒120名と教員2名が突如何の前触れも無く姿を消すという怪奇現象が起こったのだよ。」
「なんの前触れも無く....?」
「そう。なんの前触れも無く。と、言っても、廊下についてた監視カメラが生徒達が消える直前、物凄い光が教室から出ている所を捕らえてるらしいんだけど....」
「それ、本当?120人も、一度にいなくなるなんて....」
「うーん。確かに嘘っぽい話だけど、事実その122名は居なくなってるからねー。あ、いや123名だっけかな?まあ、いいや。なんか都市伝説サイトとかでは政府がタイムマシンを開発してて、それに巻き込まれてなんたらかんたらって言われてるけど、どれも信憑性ゼロだからなー。記事にも何書いていいか分かんなくて困ってるんだけどね。」
高校....兄とは関係なさそう。
「そっか。...うん。わかったよ。ありがとう。」
「えーもう行っちゃうのー?あ、そうそう。もひとつあった。これは報道新聞部部長である私の考察なんだけど.......『異世界転生』ってのが熱いとおもうんだよ。どう?どう?」
「あー。うん。いいんじゃない?」
「えー。何その反応ー。ちゃんと根拠だってあるのにー。」
頬を膨らませる妄想逞しい報道新聞部部長の声を後ろに聞きながら奏は自分の席へと戻った。
▽
ピーンポーン
「あのー。こちら、哀檻さんのお宅でしょうかー。」
「あ、はい。そうです。どちら様でしょうか?」
ドアごしに返答を待つ。
「....良かったー。漸く見つかった。あのお宅の哀檻....えーと、誰君だったかな?まあ、いいや、哀檻君が働いてるバイト先の店長なんですが....」
「え、兄のですか!?」
「う、あ、うん。」
「それで、兄は今そちらに!?」
「........あー、ってことは家にはやっぱ帰ってないのね。哀檻君。.....えっと、取り敢えず上がってもいいかな?」
立って話すのも難だし...と続く言葉を遮り奏は、
「あ、それは駄目です。兄に知らない人が来たら絶対にドアを開けちゃ駄目って言われてるんで。」
「....ははは。流石哀檻君。しっかりしてるなぁ。じゃあまあ。このままで手短に...。えっとね。僕、言いづらい事は始めに言っちゃうタイプだから、先に本題から。.....哀檻君。どうやら今ニュースとかでやってる『桜咲高校大失踪事件』とやらに、巻き込まれたかもしれないんだよ.....」
「.............................え?」
聞き間違いだろう。そうでない筈がな、い。
「いや、あの日高校から出前の注文があってね、丁度手の開いてた哀檻君に行ってもらったんだけど、それから哀檻君戻ってこなくてね。高校にはバイクだけが残ってたらしいから恐らくは......」
言葉が段々と耳に入らなくなってくる。
巻き込まれた?
楽にぃが?
どうして....?
「~~~って訳だから。何日かしたら、警察も事情聴取とかで来ると思うから。じゃあ。」
バイト先の店長を名乗る男は一方的にそれだけ告げると、自分はもう関係ないとばかりに去って行った。
「あ、あうぁ.....ぁぁあ」
手元に残った最後の幸せを失った少女はその場に一人、崩れ落ちる。
「ねぇ、あみちゃん。最近何か事件とかなかったかな?」
自分でも急に何の前振りもなくこんな話を切り出すのはおかしいと思う。
しかし、それでも今の彼女には余裕がないのだ。
「んん?事件?事件だって?それは報道新聞部部長のこの橋場杏実ちゃんに聞いているのかな?」
ズズイと顔を近付けてくる報道新聞部部長。
「う、うん。....何かあるの?」
「うーん。と言っても、最近のホットでエキサイトなニュースと言ったら一つしかないんだよねぇ....。」
「....どんな?」
「いやまあ、絶対知ってると思うけど、やっぱり『桜咲高校大失踪事件』だね。」
「失踪事件.....?」
「えー。かなちゃんホントに知らないの?今、テレビつけたらそれしかやってないくらいだよー?報道新聞部部長としては、他のネタが手に入らなくて困っちゃうよ。みーんな知ってるし。」
「いや、本当に知らなくて....どんなのか分かる?」
「そりゃあ、もちろん。部長ですから。...何でも、桜咲高校っていう高校の生徒120名と教員2名が突如何の前触れも無く姿を消すという怪奇現象が起こったのだよ。」
「なんの前触れも無く....?」
「そう。なんの前触れも無く。と、言っても、廊下についてた監視カメラが生徒達が消える直前、物凄い光が教室から出ている所を捕らえてるらしいんだけど....」
「それ、本当?120人も、一度にいなくなるなんて....」
「うーん。確かに嘘っぽい話だけど、事実その122名は居なくなってるからねー。あ、いや123名だっけかな?まあ、いいや。なんか都市伝説サイトとかでは政府がタイムマシンを開発してて、それに巻き込まれてなんたらかんたらって言われてるけど、どれも信憑性ゼロだからなー。記事にも何書いていいか分かんなくて困ってるんだけどね。」
高校....兄とは関係なさそう。
「そっか。...うん。わかったよ。ありがとう。」
「えーもう行っちゃうのー?あ、そうそう。もひとつあった。これは報道新聞部部長である私の考察なんだけど.......『異世界転生』ってのが熱いとおもうんだよ。どう?どう?」
「あー。うん。いいんじゃない?」
「えー。何その反応ー。ちゃんと根拠だってあるのにー。」
頬を膨らませる妄想逞しい報道新聞部部長の声を後ろに聞きながら奏は自分の席へと戻った。
▽
ピーンポーン
「あのー。こちら、哀檻さんのお宅でしょうかー。」
「あ、はい。そうです。どちら様でしょうか?」
ドアごしに返答を待つ。
「....良かったー。漸く見つかった。あのお宅の哀檻....えーと、誰君だったかな?まあ、いいや、哀檻君が働いてるバイト先の店長なんですが....」
「え、兄のですか!?」
「う、あ、うん。」
「それで、兄は今そちらに!?」
「........あー、ってことは家にはやっぱ帰ってないのね。哀檻君。.....えっと、取り敢えず上がってもいいかな?」
立って話すのも難だし...と続く言葉を遮り奏は、
「あ、それは駄目です。兄に知らない人が来たら絶対にドアを開けちゃ駄目って言われてるんで。」
「....ははは。流石哀檻君。しっかりしてるなぁ。じゃあまあ。このままで手短に...。えっとね。僕、言いづらい事は始めに言っちゃうタイプだから、先に本題から。.....哀檻君。どうやら今ニュースとかでやってる『桜咲高校大失踪事件』とやらに、巻き込まれたかもしれないんだよ.....」
「.............................え?」
聞き間違いだろう。そうでない筈がな、い。
「いや、あの日高校から出前の注文があってね、丁度手の開いてた哀檻君に行ってもらったんだけど、それから哀檻君戻ってこなくてね。高校にはバイクだけが残ってたらしいから恐らくは......」
言葉が段々と耳に入らなくなってくる。
巻き込まれた?
楽にぃが?
どうして....?
「~~~って訳だから。何日かしたら、警察も事情聴取とかで来ると思うから。じゃあ。」
バイト先の店長を名乗る男は一方的にそれだけ告げると、自分はもう関係ないとばかりに去って行った。
「あ、あうぁ.....ぁぁあ」
手元に残った最後の幸せを失った少女はその場に一人、崩れ落ちる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
二度目の勇者は救わない
銀猫
ファンタジー
異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。
しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。
それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。
復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?
昔なろうで投稿していたものになります。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる