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番外編2

デジレの恋(エリク2)

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「あの美人は誰だい? エリク、知り合いなら紹介してよ」

 初めて母を見かけたソレイユ・ジェイド副長官の第一声が、それだった。
 俺の様子を見に、差し入れを持って母が魔法棟にやってきた日のことだ。

 ああ……早速、見つかるとは。
 副長官の悪い癖が、始まったようである。

 彼は、気に入った女性を見るとすぐこれなのだ。
 普段は気が弱いくせに、好みの異性に対してはやたらと接触したがる。
 けれど……

 残念でした。
 母を、副長官の毒牙に触れさせるつもりはない。

「紹介なんて、しません」
「ええっ、どうしてだい? さては、独り占めする気だね!」

 酷い言いがかりに、目眩がしてくる。
 
「副長官には、紹介したくありません。おととい来やがれです」

 しかし、後日……
 追い払ったはずの副長官は、いつの間にか母と親しい仲になっていた。
 
(おそるべし、副長官)
 
 母の方も満更ではない様子で、楽しそうに副長官と世間話をしている。

「あのご婦人は、エリクの身内の女性だったんだね!」
「……母です」

 こうなってしまっては、仕方がない。
 俺は、母のことを副長官に白状した。

「優しくて、素敵な人だなぁ」
「駄目ですよ、副長官。母には手を出さないでください」
「出すわけないじゃないか。エリクは、心配性だねえ」
「そ、そうですか」
「いくら僕でも、部下の母親に手を出すなんて、出来ないよぉ」

 俺は、このときの副長官の言葉を信じた過去の自分を殴りたい。
 それから間もなくして……母と副長官は、恋仲になってしまった。
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