継母と妹に家を乗っ取られたので、魔法都市で新しい人生始めます!

桜あげは

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127:研究所の職員捕獲!!

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 なんとも言えない空気の中、立ち尽くしていると、不意に森の中がざわめいた気がした。
 鳥たちが一斉に飛び立ち、奇妙な沈黙が訪れる。

「なんだろう」
「魔物かな?」
 
 私とカマルは、辺りをキョロキョロと見回す。
 シント魔法学校の三人も、警戒した様子で辺りを窺っていた。
 そのとき、ジェロームとエミーリアがピクリと鼻をひくつかせる。

「何か……いる! 魔物じゃない! 近い!」

 エミーリアは口を覆って「どうしよう、吸っちゃった!」と、取り乱し始めた。

「噂をすれば、というやつだな」

 同じく口を覆っているジェロームも、険しい表情を浮かべている。

「ここと同じ香り……いや、もっと強い香りが森の奥からしてくる」
「ええっ? でも、研究所の職員は帰ったんじゃ……?」

 ニキータが慌ててジェロームを服の中に隠した。世界樹の花の香りを軽減させようとしているみたいだ。

「匂いはどちらの方向からするの?」

 私が尋ねるのと同時に、エミーリアがフラフラと移動し始める。様子がおかしい。

「大変だ! 花の香りにやられている!」
「そんな! 止めなきゃ!!」

 私たちは、慌ててボードに乗り、エミーリアを追いかけた。
 ついでに、カマルがジェロームを透明な壁で囲み、匂いから隔離した。
 箱形になった壁をニキータが抱えている。
 
「待って、エミーリア!」

 飛びながら彼女の前にヘドロの壁を展開すると、エミーリアはあっけなくそこにぶつかった。まるで、理性が正常に働いていないみたいだ。
 ふう、とりあえず捕獲。
 ヘドロにくっついたエミーリアを剥がして、気を失った彼女を回収して……私たちは前方へ目をやる。

「誰かいる」

 ゴソゴソとこちらに背中を向けて何かをしているのは、白衣を着た男性だった。

「あ、怪しい」
「思いっきり『研究員です』っていう格好だな」

 ニキータとカディンが、ヒソヒソと会話を始めた。私も口を挟む。

「王立研究所の職員って、帰ったんだよね?」
「俺もそう聞いていたが……」

 騎士に守ってもらうこともなく、たった一人で作業をしているなんて。魔物が出るかもしれないのに変だ。

「前に精霊が攫われたときは、騎士が一緒じゃなかったの?」
「聞いたところによると、最初の頃は騎士も一緒だったが、そのうち『自衛用の魔法アイテムを所持しているから大丈夫だ』と、一人で出かけるようになったらしい」
「なるほど。護身用の道具は魔法都市で売られているものね」

 それなら、ひっそり悪事を行っていても、誰も気づかない。
 カマルが職員を観察しつつ、口を開く。
 
「これから、世界樹で蜜を採取していた人間や、最近蜜をたくさん仕入れた人間を辿っていけばいいかと思っていたけれど……案外早く犯人が見つかったね」

 彼の言うとおりだ。

「カマル、なんとしても、あの人を捕まえよう! これ以上の精霊の捕獲は止めなきゃ!」
「そうだね。色々吐いてもらわなくちゃ」

 シント魔法学校の三人も頷いて協力体制に入る。

「相手が転移アイテムを持っていたら厄介だね、僕がバレないように空間で囲む。それで、精霊をおびき寄せる匂いは広がらないはずだよ」

 カマルが職員の周りを透明な壁で囲った。相手は気づいていない。
 壁のおかげで、世界樹の花の香りは外へ出て行かず、付近に精霊がいても正気に戻るだろう。

 そして、壁の外側を私のヘドロが下から静かに囲んでいく。
 このヘドロは魔力の干渉を受けない。
 だから、ヘドロの中では転移の魔法アイテムは使用できないはずだった。
 
 ヘドロが透明色だと目立たなくて良かったのだけれど……
 とても目立ってしまう色なので、カマルがいてくれて助かった。
 そうして、カマルの空間魔法に沿って上昇するヘドロは、音もなく職員を飲み込んだのだった。
 
「あとはヘドロの中に研究所の職員を取り込んで……」

 けれど、そこまで話したところで、ドクンと私の体に変動がきた。

「な、何……?」

 エミーリアに干渉されたときのように、体がまた熱くなってしまっている。
 彼女の方を確認したけれど、まだ気を失ったままシュクレに運ばれていた。
 ということは……?

「アメリー! 早く職員を吐き出すんだ!」

 私と同じ考えに行き着いたらしいカマルが、余裕のない表情で叫ぶ。
 
「う……うん……!」

 すぐさまヘドロを解除して、職員を外へ放り出した。すると、体の熱が収まっていく。

「職員の持ち物を確認して」

 ヘドロの被害に遭った職員は顔色が悪く、ぐったりと気を失っていた。
 カディンが駆け寄り、彼の持ち物を調べていく。

「なんだ、これ……キラキラした石を持っている」
「たぶん、精霊の破片じゃないかな?」

 首を傾げたニキータが、服の中からジェロームを出して確認してもらっている。

「間違いない、これは元精霊だ。しかし、少し古いな」
「前に捕まった精霊のものかもしれないね。でも、これって完全に職員が怪しいってことだよね。犯人確定! 騎士団へつれて行こう!」

 ニキータの言葉に全員が頷いた。

「アメリー、大丈夫?」

 駆け寄ってきてくれたカマルに向け、私は弱々しく笑った。貧血を起こしたときのように、フラフラしてしまう。

「うん、平気。やっぱり、あまり精霊をヘドロに入れちゃ駄目みたいだね。特に破片は。ジェロームの言うとおりだ」
「無理しないで、アメリーは僕が運ぶ」
「ひゃっ!?」
 
 私はカマルにお姫様抱っこをされ、ボードで騎士団宿舎まで戻ったのだった。
 気を失った研究所の職員はニキータが魔法で拘束し、カディンが俵担ぎにしていた。
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