旦那様が素敵すぎて困ります

秋風からこ

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第一章

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璃子が食事をしてくると言うから、俺は小野と飲みに行く約束をしていた。小野は高校からの友達で、大学内で俺と璃子のことを知っている数少ない人物だ。明るくて気のいいやつだから付き合いやすいし、恐らく聞き上手なのだろう、こいつ相手だとつい色々なことを話してしまう。

飲みながら小野に、今日璃子が同じ学科の先輩に食事に誘われて行ってるという話をしたら小野が何かを訝しむような顔をした。

「ん?どうした?」
「いや、何日か前に相川がチャラ目の男三人組と話してるの見かけて、珍しいなーって思ったんだよ。ほら、あいついかにもチャラそうっていうか、馬鹿そうなの嫌いだろ?」
「そうなのか?」
「おまえ…相川に興味なさすぎ!そうなんだよ。それで、その三人組と相川が別れた後、気になってそいつらの側に行って聞き耳立ててたんだよ」
「…………それで?」

正直、わざわざ移動して聞き耳を立てるなんてこいつ暇だなと思ったが、話が脱線しそうなので続きを促した。

「そしたらさ、そいつらがすっげー不穏な話してんの。『酔わせてヤるだけなら余裕だな』とか、『その子って可愛いのかな?勃つかだけが心配だわー』とか、明らかに誰かをレイプするんだろうなって会話。しかも、話しぶりがどうも相川から依頼されたような感じなんだよな」
「…………」
「おい、どうしたんだよ、恭」
「いや、最近相川に璃子のことがバレたんだ。それからやたらと相川が璃子に接触してきてるらしくて…。まさかな?」
「マジかよ…。それが、その三人組なんだけど、多分英文科のやつらっぽくて、今日璃子ちゃん学科の飲み会っていうから、俺もまさかとは思うけど、心配になって…」

小野の言葉を聞いて心臓がドクドクと激しく動き出す。璃子であるはずがないと思っても嫌な予感ばかりが過る。
時計を見ると時刻は19時半を少し過ぎたところだった。璃子は18時に待ち合わせと言っていた。今から行けば間に合うかもしれない。璃子は自分からお酒は飲まないはずだし、朋子ちゃんや他のやつも一緒だと言ってた。2時間くらいは同じ店にいるだろう。

「とりあえず電話してみる…」

杞憂かもしれないと自分に言い聞かせながら璃子に電話をかける。

RRRRRRRR…

何度目かのコール音で電話が通話状態になった。

『もひもひ~』
「璃子!今どこにいる?!」
『あ、きょうちゃんら~!あれ~?わたひ今どこにいるんらっけ??ともこー!ここどこ~?!』

璃子は呂律が回ってないし、やけにハイテンションだ。やっぱり酒を飲まされたのか?とりあえずは無事のようだが、あの男たちと一緒にいるかもしれないと思うと、どうしようもない焦りがこみ上げてくる。

『リストランテ・サクラってお店だけど…』

少し遠くから朋子ちゃんであろう声が聞こえる。「リストランテ・サクラ」と俺が小野に向けて呟くと、小野はすぐさまスマホで場所調べ始めた。

『きょうちゃん!えっとね、りすとらんて…あれ~?なんだっけ?』
『璃子ちゃん、誰と電話してるの?』

璃子が酔っ払っているであろう頭で必死に店名を思い出そうとしていると、近くから男の声が聞こえた。こいつがその三人組の一人か?

『きょうちゃんれす~!』
『きょうちゃん?とりあえずまだご飯中だしさ、電話は一回切ろっか?』
『え~!いやれ…』

ブツっと電話が切れた。どうやら電話を切られたらしい。けど、とりあえず店の名前がわかったのは幸いだった。
俺が電話している間に小野は店の場所を調べ、今いる居酒屋の会計を済ませてくれていた。

「ここからそんなに離れてないみたいだよ。タクシー使うより走った方が早いかも」

そう言って小野は携帯の画面に映る地図を片手に、「ついて来い」と走り出した。



「はぁはぁはぁ…小野、ありがと」
「あーーーきつ!」

そんなに遠くないといえど、多少酒も飲んでいたからやたらと息があがる。ここまで付き合ってくれた小野に感謝しつつ、急いで店のドアを開けた。
こぢんまりとした趣味のいい店だった。店員が「いらっしゃいませ」と近寄ってきたが、「待ち合わせなので」と言いながら辺りを見渡すと、やや奥まったテーブルに璃子の姿を発見した。遠目にも顔が赤いのがわかる。

「璃子!」

小野とともに近寄って行くと、こちらに気づいた璃子がパッと笑顔になる。どうしてこいつはこう能天気なんだと呆れるが、璃子の無事を確認できてふっと肩の力が抜けた。

「あー、きょうちゃんら!」
「おいで、璃子」

やけに陽気な璃子は席から立ち上がると、ニヤニヤしながら俺に抱きついてきた。ふわっと璃子の香りが鼻をつき、愛おしさがこみあがる。
璃子を抱きとめながら呆然とこちらを見ている連中に目を向けると、次第に焦ったような顔をし出す。

「あ、あれ?永井くんだよね?どうしてここに?」
「おまえら璃子に何しようとしてた?こいつどう見ても酒飲んでるよな?」
「そ、それがさ、間違えて飲んじゃったみたいで…!あ!永井璃子ちゃんて妹さんとか?いやあ、俺らがついてたのに悪かったよ」

恐らくこいつらが璃子の言っていた「先輩たち」なのだろう。ヘラヘラと取り繕うような笑みを浮かべながら言い訳を述べてくる。下卑た笑いに切れそうになるが、とりあえずはこいつらが璃子に酒を飲ませた証拠はないし、これから何をしようとしてたのかもわからないから怒りをぐっと堪える。

「そうか、迷惑かけて悪かったね。とりあえず今日はもう連れて帰ってもいいかな?」

「妹」という言葉も気になったが、そこは璃子のためにあえて何も触れなかった。

「どうぞどうぞ!お代は僕ら持ちだから、そのまま帰っちゃって!」

俺と小野が疑わしい目で見ているからだろう、男たちは俺たちをさっさと帰らせようと璃子の上着とカバンを渡しながらそう告げた。

「ありがとう。このお礼はいずれ」

ふらついている璃子に上着を着せながら男たちの顔を一人一人見て記憶に刻み込む。ただで済むと思うなよと思いながら。

「朋子ちゃん、だよね?一緒に帰る?」

さすがにこの男たちの中に女の子を一人残して行くのはどうかと思い、璃子の友人であろう女の子に声をかけた。

「は、はい!帰ります!」

声をかけるまで信じられないものを見るような目で俺を見ていた朋子ちゃんは、驚いたように返事をして、ぎこちない動きで後をついてきた。

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