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プロローグ〜さんすうの問題
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『夏凪のことが好きなの』
伊桜里にだけは隠しておきたくないんだと燈子は秘密を打ち明けてくれた。
幼稚園から中学1年の今まで、私たち3人はずっと一緒にいた。
どんな時でもかっこいい燈子とフンワリしているようで状況判断の早い夏凪。
幼稚園、小学校、中学校。
周りが変わっていっても私たちの関係はこのままずっと続くと疑うことをしなかった。
居心地が良くて毎日が楽しい。そんなふたりと出会えたことを神様に感謝したくらいだ。
橙子の真っ直ぐな気持ちは夏凪にちゃんと届くはずだ。
女の子から好意を向けられた時は、関心がなさそうだったけれど、橙子は夏凪の特別な人になれる。
私だけ仲間からはずされるわけじゃない。
それはわかっているのに、関係性の変化がこわくなる。
橙子の一番は夏凪で、夏凪の一番は橙子になる。
だったら、あまってしまう私はどうなるんだろう。ふたりと離れるのはもっともっと先のことだと思ってた。
胸が苦しくなって、じわりと温かいものが瞳からにじんでくる。
3人じゃなければよかった。
4人なら、5人なら、一人残される可能性は低くなる。
私によりそってくれる誰かが他にいてくれたらよかったのに。
願掛けの鈴が結びつけられ彩られた鈴緒には、たくさん人の祈りがこめられている。
ピンクは恋愛、グリーンは健康、イエローは財運。
みんなの願いごとはひとつの色にかたよらず想いは混じり合っている。
一人でたくさん結んだ人もいるのかもしれない。その状況を想像すると少しだけ心が軽くなった。
橙子と夏凪がうまくいくことを願ってる。
邪魔なんてしないから、もう少しだけ一緒の時間を過ごしてほしい。
そんな気持ちでカラフルな鈴緒を見つめていたら、耳のすぐそばでチリンと鈴の音が鳴った。
参道を行き交う人の声や足音が急に消えて、澄んだ鈴の音がもう一度響く。
チリン──。
私だけ別の空間に入りこんでしまったような不思議な感覚。驚いて振り向こうとしたのに身体は動かない。
恐ろしくなって目をふせると、圧倒的な力をひそめた低い声に呼びかけられる。
「わたしがそこへはいろう。よいな?」
あなたは、だれ?
質問をさせてくれない誰かは、おそらく人のかたちをしていたと思う。
そうして、しばらく経ってから、音であふれた日常が戻ってくる。
数秒の出来事が現実だったと示すように、私はその場へ崩れるように倒れこんだ。
伊桜里にだけは隠しておきたくないんだと燈子は秘密を打ち明けてくれた。
幼稚園から中学1年の今まで、私たち3人はずっと一緒にいた。
どんな時でもかっこいい燈子とフンワリしているようで状況判断の早い夏凪。
幼稚園、小学校、中学校。
周りが変わっていっても私たちの関係はこのままずっと続くと疑うことをしなかった。
居心地が良くて毎日が楽しい。そんなふたりと出会えたことを神様に感謝したくらいだ。
橙子の真っ直ぐな気持ちは夏凪にちゃんと届くはずだ。
女の子から好意を向けられた時は、関心がなさそうだったけれど、橙子は夏凪の特別な人になれる。
私だけ仲間からはずされるわけじゃない。
それはわかっているのに、関係性の変化がこわくなる。
橙子の一番は夏凪で、夏凪の一番は橙子になる。
だったら、あまってしまう私はどうなるんだろう。ふたりと離れるのはもっともっと先のことだと思ってた。
胸が苦しくなって、じわりと温かいものが瞳からにじんでくる。
3人じゃなければよかった。
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チリン──。
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質問をさせてくれない誰かは、おそらく人のかたちをしていたと思う。
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