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姉妹喧嘩

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 突然のサラの言葉に、アリスが大きく目を開く。

「旦那!?
 サラ姉が結婚してたなんて、私そんなの聞いてないわよ!!」

「まぁ、そうだろうね。
 ボクも言ったのは初めてだよ」

 ちなみにだが、俺も初めて聞いた。

「はぁ!? どういうことよ?」

 アリスが混乱するのも無理はない。
 たぶん俺が1番混乱していると思う。

「それと結婚はまだ先の話だよ。
 婚約相手って言葉が正しいのかな」

「余計に意味わかんないわよ。
 サラ姉、アリスのことバカにしてるでしょ?」

「いやバカになどするはずがないよ。
 彼は、ボクが異世界より召喚した勇者様なんだ。この国を救って貰うことを快諾してもらったため、ボクは彼の妻になることを決めたって流れだね」

 おい、勇者様って、それも初めて聞いたぞ。

 俺、快諾したか?
 結構渋々だった気がするんだがな。

 まぁ、やるからには精一杯やるとは言ったが……。

「はぁ? 勇者様ってあの御伽話に出てくる勇者様?
 それを召喚って……。でも、サラ姉なら、やりかねないけど……」

 口元に手を当てたアリスが、コテリと首を傾げた。

「残念ながら証拠はないのだが、ボクが着ている服や、彼、そして、彼の妹が着ている服を見て貰えばわかると思うよ。
 どれもこの国では想像すらしない服じゃないかい?」

「…………たしかに、珍しい服は着てるけど」

 さらに深々と頭を抱え込んでしまった。

 そんなアリスにむけて、サラが別の話を投げかける。

「そういえば、慌てていたようだが、用事はいいのかい?」

「っ!! そうよ。アリスは、サラ姉に文句を言いにきたんだから!!
 クーデターをするなんて、やめてよ。何でアリスまで一緒に参加するみたいなことになってんのよ!!」

 悩み事など一瞬で吹き飛んだようで、弾き出された玉のように、淀みなく強い言葉がアリスの口から放たれた。

「アリスが言いたい事は確認出来たのだが、今の状態では会話が困難だね。すこしだけ落ち着いた方が良いと提言させてもらうよ。
 ほら、大きく深呼吸をしてごらん」

「そ、そうね。すー……」

 サラのタイミングにあわせて、アリスが息を吸って吐いて、吸って吐いてを繰り返す。

 予想以上に素直で良い子だった。

「理由は何となく把握しているが、アリスが持つ情報を整理したいんだ。詳しく話して貰えないかい?」

「詳しくって……、なにを話せばいいのよ?」

「そうだね。誰から、何を聞いたのか。その情報が必要だね」

 そうして、アリスが持っていた情報を洗いざらい聞き出した。

 アリス曰く、平民を中心にサラとアリスが国の転覆を狙っている、という噂が流れているそうだ。

『ねぇ、ここだけの話なんだけどさ。
 どうも、サラ様がクーデターを準備してるらしいわよ』

『え? 私は、アリス様が、奴隷を買いあさって、ついでに防御性に優れた服も買ってるって聞いたわよ?
 クーデターって言うなら、サラ様より、アリス様の方が怪しいんじゃないの?』

『えー? そうなの? 
 あ、もしかすると、アリス様も、サラ様もクーデターを計画してるんじゃないの?』

『そうなのかしら。けど、2人で同時期にっておかしくない?』

『たしかにそうね。ってことは、2人で一緒に氾濫を起すんじゃないかしら。そうよ、絶対そうだわ。
 あ、お隣の奥さん、丁度良いところに、聞きました? なんでも、サラ様とアリス様が――」

 と、いった感じだろう。

 まぁ、アリスに関しては、俺が動き回った結果なんだが……。

「まずは誤解を解こう。ボクはクーデターなんて考えていない。……いや、正確に言うならば、考えていなかった、になるね。

 クーデター騒ぎは兄たちがボクを殺そうとして作った罠だよ。ボクは生き残るために勇者を召喚して、兄達から身を守ることにしたというわけだね」

「……罠? ってか、身を守るって、兄達に反抗するってことでしょ? 結局、クーデターやるんじゃない」

「たしかに結果から見ればそうなるんだが、罪の所在の問題だよ。それにアリスが関与している話しは、初耳なんだ。
 文句を言うなら、兄達にしてほしいね」

「そうかもだけど…………。
 けど……、ん……、そうよね……」

 難しい顔をしたアリスが、視線を落とした。
 そこに先ほどまでの勢いはない。

 どうやら、うまく丸め込めたようだ。 
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