落ちこぼれ“占い師”が造る 最強ギルド! ~個性豊かな仲間や年下王女に頼られる“ 立派なギルマス”になってました~

薄味メロン

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〈17〉念願の、飯の時間だ!!!!

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 支払いは冒険者ギルドで済ませたので、受付では鍵だけを貰って奥へと進む。

 部屋は、1階の8号室。

 上に行くほど賊が入り難くて安全らしいけど、橋の下と比べたら雲泥の差だろう。

 当たり前の話だけど、上の方が値段も高いしね。

 そんな事を思いながら、ドアノブに手伸ばす。

「あっ、私が!」

「大丈夫だよ。気を使わなくても。ごめんね、ひと部屋しか用意出来なくて」

「いっ、いえ……。私は大丈夫なのですが、えっと……」

 頬を赤らめたリリが顔を俯かせて、胸の前でギュッと手を握り締めている。

「ここまできて別々は……、寂しい、と言うか、なんと言うか……。もし捨てられたら……、じゃなくて! ……、えっと……」

 もちゃもちゃと言葉を紡いでいるが、色々と思うところがあるのだろう。

 年頃の女の子だから部屋も分けた方がいいんだろけど、さすがにそこまでの資金はないからね。

 今はリリの優しさに甘えさせてもらって、彼女には少しだけ我慢してもらうしかない。

「それじゃぁ、入ろうか」

「はっ、はい……」

 ギュッと目を瞑るリリの髪をポンポンと撫でて、ドアをギィーと開いていく。

 垂れ下がる尻尾を横目に見ながら、部屋の中へと入って行った。

「おっ、すごいな。灯りまであるのか」

 壁にあった魔石に手を触れて、部屋全体に光を灯す。

 入口には小さなテーブルがあって、その奥に衝立で分けられたベッドが2つ。

 ただそれだけの小さな部屋だ。

 それでも、しっかりとしたドアと壁があるのは、素直に嬉しく思う。

「これで3000ルネンなら悪くないかな。……ん?」

 ふと背後を見ると、なぜかまだ廊下にいるリリの姿が見えた。

 自分の胸に手を当てて、大きく深呼吸をしているようにも見えるが、いったい なにを?

「リリ? 入らないのか?」

「ふぇっ……!? はっ、入ります! 大丈夫です!」

「????」

 ギクシャクとした感じで近付いて来たリリを部屋の中に招き入れて、ドアを閉める。

 堅くなった彼女の態度を不思議に思いながら鍵を回すと、ガチャリと特有の音がした。

「ひぅ……」

 ビクンとリリの肩が跳ねて、可愛らしい声が漏れる。

 鍵がかかったドアを見詰めた彼女が、ゴクリと息を飲んでいた。

 もしかすると、宿に泊まるのも初めてで、緊張しているのかも知れない。

 そんな事を思いながらリリの側を離れて、テーブルの上に透明な袋をドサリと載せる。

「早速だけど食べようか」

「ひゃっ、ひゃい!」

 どうにも落ち着かないらしい。

 そんなリリを後目に、自分の前と対面に粥を置いて、串から外した肉を目の前にある粥の上に載せた。

 残りの半分は串のまま、リリの粥の上に載せてやる。

「2本買いたかったんだけど、リリも肉は久しぶりみたいだから、今日は半分こな」

 本当なら粥だけにして様子を見た方がいいのだろうが、肉も食べたい!

 どうしても、食べたい!!

 わかってはいるんだけどさ、肉の誘惑には抗えないよな。

 なんて心の中で誰かに言い訳をしながら、透明なスプーンに手を伸ばす。

 さぁ、本当に、飯の時間だ!!

 ゴクリと喉を鳴らして粥を持ち上げると、きゅるるる となにやら可愛らしい音がした。

「ぁぅぅ……」

 上げた視線の先に見えたのは、壁際に立ったままのリリの姿。

 猫の耳をペタンと倒した彼女が、頬を赤らめてお腹を押さえていた。

「どうしたんだ? 食べないのか?」

 何気なくかけた声に、リリが不思議そうに目を開く。

 そしてなぜか周囲に目を向けて、コテリと首を傾げて見せた。

「今って、夜、ですよね……?」

「え……? あ、あぁ。窓がないから外は見えないけど、間違いなく夜だと思うぞ?」

「そうですよね? ……夜なのに、私のごはん?」

 ん……?

 あー、なるほど。

 そういえば、店では朝しか食べられなかったって、言ってたな。

「いいんだよ。リリのために買ったんだから。お金も、リリがスライムを倒してもらったものだからな」

 それにあれだ。

 目の前で誰かが飯を食ってるのに、自分だけ飯が食えないとか酷すぎるしな。

「リリは奴隷って言うよりも、ギルドの大切な仲間だからな」

 飯を独り占めにするとか、そんな酷い男じゃないぞ?

 まぁ、奪っていい相手なら、遠慮はしないけど。

 可愛い部下だからな。

「それともあれか? 麦粥、食べたくない?」

「いっ、いえ、食べたい、です……」

「うん、なら食べたらいいよ。というか、一緒に食べよう。これは命令だから」

 苦笑いを噛み殺しながら、それらしく言ってみる。

 俺の顔と、麦粥との間で視線を彷徨わせたリリが、戸惑いながらも、彼女の席に座ってくれた。

「……ありがとうございます」

 ふわりと微笑んで、透明なスプーンを握り締める。

 互いに目と目でタイミングを計って、一緒に頬張る。

 ひさしぶりに感じる、穀物の甘さ。

 食べ物の温かさ。

「おいしいです……。すっごく、おいしいです……」

 もぐもぐとゴックンと口を動かしたリリが、呆然としながらも、幸せそうな笑みを見せてくれた。

 肉から流れ出した旨みが体に染み渡り、頬が自然と緩んでいく。

「私、すっごく幸せです」

「そっか、それは良かった」

 猫の耳はピンと張りながらも、尻尾が優雅に揺れていた。
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