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〈55〉スライム狩りじゃー!
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「押されてる……? いや、攻撃が効いてないのか?」
見たところ、巨大なスライムの犠牲になった天幕は5つ。
たった今、6つ目を食べ始めた所らしい。
「ご主人様。あれって、放置したら危険ですよね?」
「たぶんな」
盾の隙間から巨大なスライムを覗き見たリリの猫耳が、ペタリと倒れていた。
けどまぁ、その気持ちも良くわかる。
日除けの布や繋ぎ合わせる糸だけじゃなくて、鉄の骨組みまで溶かしてるように見えるからな。
人間なんて、骨も残さずペロリだろう。
いつの間にか側に来ていたメリアも、俺の背中に隠れながらゴクリと喉を鳴らしている。
「バケモノですわね」
「あの勢いで食い続けたら、森も街も更地になるな」
「私もそう思いますわ……」
スライムがズルズル動いた後の地面は、雑草1つ残ってないしな。
斬り掛かった騎士の剣も、そのまま飲み込まれて、ボロボロに溶かされている。
目に付いた物は、すべて食ってやるぜ!
そんな感じだ。
「なぁ、彩葉。王都の周辺って、あんなバケモノが良く出るのか?」
「そんな訳ないじゃん。……と言うか、お兄さんさぁ。わかって聞いない?」
まぁ、現実逃避に言ってみただけだからな。
どう考えても異常事態だろ。
わかってる、わかってる。
「あの、ご主人様。あのおっきなスライムって、今まで何処に隠れていたと思いますか?」
「ん?」
どこに、隠れる?
「どこにって、そりゃぁ、この辺は森しかないから、森の奥なんかに……」
居たんだと思うけど、
もしそうなら、西の森が食い尽くされていてもおかしくないよな?
「あれだけ大きかったら、すっごく頑張らないと隠れられませんよね?」
「……そうだな」
森に入った300人全員が、あの巨体を見逃した?
不自然に食われた木の痕跡も気付かなかった?
絶対にないとは言い切れないけど、さすがに不自然だ。
「不自然と言えば、あの男たちもだよな?」
「はい……。騒ぎが起きてから、ここに来るまでの時間が速すぎでした。スライムの動きを気にする素振りもなかったように思います」
「だよな。ヤツらがどこまで想定していたかはわからないけど、」
「--ちょっ、ちょっと待ってくださいませ。それではまるで、あの男たちがスライムを使役していたかのように聞こえるのですが……」
残念ながら、そう言っている。
「確証はないけど、それが1番しっくりくるんだよな……」
ヤツらが暗殺の準備を済ませた時に、たまたま巨大なスライムが現れた。
討伐に向かった部隊の火力がたまたま足りなくて、ヤツらに時間の猶予が与えられた。
「たまたまで済ませるには無理が有りすぎる。少なくとも、巨大スライムの存在くらいは知っていたと思うぞ?」
どう考えてもな。
「!!!! 捕まえた男たちに聞き取りを! 急いでくださいませ!」
「はっ!」
--やめとけ。人員の無駄だ。
なんて言う気はないけど、望み薄だろうな。
組織で動いていたヤツらが、真っ先に捕まりそうな実働部隊に、重要な情報を持たせるとは思えない。
「さて、どうするか……」
このままここに居ても、俺に出来る事はないんだよな。
『私も西の森に出向きますわ。ほんの少しでも良いので、危険を分かち合いたいのです』
そう言っていたメリアには悪いけど、彼女の安全が最優先だ。
万が一にも、彼女とボンさんが同時に死ぬ、なんて事になれば、俺は文字通り干上がるからな。
それだけは断固阻止だ。
--そう思った矢先、
「……火の玉、ですか?」
「魔法使いだな」
何もなかった視線の先に、見上げるほどの巨大な炎が浮かび上がっていた。
背後に隠れていたメリアも、その身を乗り出すようにして、炎を見詰めている。
「ご主人様! 太陽が3つあるように見えますよ!」
「確かにな」
「さすがはサトリですわね」
「……なんだ? メリアの知り合いか?」
と言うか、サトリって、さっきの センサービビビ女だよな?
あいつ、騎士の格好をしていたけど、魔法使いだったのか。
「私直属の部下なのです。優秀な副隊長ですわ」
「へぇー。あいつがねぇ」
まぁ、語彙力以外は普通だったからな、そういうこともあるか……。
そんな事を思っている間にも、炎の玉がさらにデカくなり、ついには巨大なスライムを越えた。
遠く離れているのに、流れてくる風が熱く感じる。
剣や槍を振り回していた騎士たちも、慌てて退避してるな。
--何はともあれ、あれで決まりだろ。
火力は十分。
むしろ、巨大なスライムが可哀想に見えるほどだ。
なんて、思っていた矢先、
「えっ!?」
「消えた!?」
巨大な炎がスライムにぶつかり、炎の方が跡形もなく消え去った。
スライムに苦しんでいるような素振りはない。
何事もなかったかのように、天幕を食べ続けている。
「……お兄さま。今のは、なんですの……?」
「わからんな」
炎がスライムにぶつかって、消え去った。
そう見えた。
「炎も、食われたのか……?」
あり得なくはない。
だけど、食われたと言うよりも、一瞬で消えたような、そんな感じだった。
「ご主人様。魔法がぶつかる直前に、何か丸い物が光りませんでしたか?」
「丸いもの?」
「はい。あの大きなスライムの、背中の方に……」
「背中……? それって、上? 横?」
「えっとえっと……。あの辺りです」
斜め上方向を指差してくれたけど、どうにもわからん。
と言うか、どっちが前でどっちが後ろだ?
「彩葉とメリアは? 何か見えたか?」
「ぜんぜんダメ。光とか、そんなのあったかな?」
「私も確認出来ませんでしたわ」
「そうか……」
護衛に残った騎士や、アンナさんにも視線を向けて見たけど、全員が首を横に振るだけ。
俺たちがそんな話をしている間に、今度は小さな炎が宙に浮かんでいだ。
その炎が2個に分かれて、2個が4個になって、4個が8個になって……。
気が付けば、数え切れない数の炎が、スライムの周囲を取り囲んでいた。
--デカいのがダメなら、数でやってやるわよ!
そんな幻聴が聞こえたけど、無意味っぽい。
増える側からスライムにぶつかった炎が、跡形もなく消えて去っていた。
「やっぱり光ってます。……見えませんか?」
「あぁ、俺には何も……」
ちらりと周囲に目を向けるけど、全員がダメ。
「けど、何かあるんだろ?」
「はっ、はい! たぶん、ですけど……」
リリが嘘を付くとは思えないし、嘘を言う意味もないからな。
いつの間にか、あれだけあった炎が消え去っていて、ズルズルと動くスライムの音だけが聞こえてくた。
見たところ、巨大なスライムの犠牲になった天幕は5つ。
たった今、6つ目を食べ始めた所らしい。
「ご主人様。あれって、放置したら危険ですよね?」
「たぶんな」
盾の隙間から巨大なスライムを覗き見たリリの猫耳が、ペタリと倒れていた。
けどまぁ、その気持ちも良くわかる。
日除けの布や繋ぎ合わせる糸だけじゃなくて、鉄の骨組みまで溶かしてるように見えるからな。
人間なんて、骨も残さずペロリだろう。
いつの間にか側に来ていたメリアも、俺の背中に隠れながらゴクリと喉を鳴らしている。
「バケモノですわね」
「あの勢いで食い続けたら、森も街も更地になるな」
「私もそう思いますわ……」
スライムがズルズル動いた後の地面は、雑草1つ残ってないしな。
斬り掛かった騎士の剣も、そのまま飲み込まれて、ボロボロに溶かされている。
目に付いた物は、すべて食ってやるぜ!
そんな感じだ。
「なぁ、彩葉。王都の周辺って、あんなバケモノが良く出るのか?」
「そんな訳ないじゃん。……と言うか、お兄さんさぁ。わかって聞いない?」
まぁ、現実逃避に言ってみただけだからな。
どう考えても異常事態だろ。
わかってる、わかってる。
「あの、ご主人様。あのおっきなスライムって、今まで何処に隠れていたと思いますか?」
「ん?」
どこに、隠れる?
「どこにって、そりゃぁ、この辺は森しかないから、森の奥なんかに……」
居たんだと思うけど、
もしそうなら、西の森が食い尽くされていてもおかしくないよな?
「あれだけ大きかったら、すっごく頑張らないと隠れられませんよね?」
「……そうだな」
森に入った300人全員が、あの巨体を見逃した?
不自然に食われた木の痕跡も気付かなかった?
絶対にないとは言い切れないけど、さすがに不自然だ。
「不自然と言えば、あの男たちもだよな?」
「はい……。騒ぎが起きてから、ここに来るまでの時間が速すぎでした。スライムの動きを気にする素振りもなかったように思います」
「だよな。ヤツらがどこまで想定していたかはわからないけど、」
「--ちょっ、ちょっと待ってくださいませ。それではまるで、あの男たちがスライムを使役していたかのように聞こえるのですが……」
残念ながら、そう言っている。
「確証はないけど、それが1番しっくりくるんだよな……」
ヤツらが暗殺の準備を済ませた時に、たまたま巨大なスライムが現れた。
討伐に向かった部隊の火力がたまたま足りなくて、ヤツらに時間の猶予が与えられた。
「たまたまで済ませるには無理が有りすぎる。少なくとも、巨大スライムの存在くらいは知っていたと思うぞ?」
どう考えてもな。
「!!!! 捕まえた男たちに聞き取りを! 急いでくださいませ!」
「はっ!」
--やめとけ。人員の無駄だ。
なんて言う気はないけど、望み薄だろうな。
組織で動いていたヤツらが、真っ先に捕まりそうな実働部隊に、重要な情報を持たせるとは思えない。
「さて、どうするか……」
このままここに居ても、俺に出来る事はないんだよな。
『私も西の森に出向きますわ。ほんの少しでも良いので、危険を分かち合いたいのです』
そう言っていたメリアには悪いけど、彼女の安全が最優先だ。
万が一にも、彼女とボンさんが同時に死ぬ、なんて事になれば、俺は文字通り干上がるからな。
それだけは断固阻止だ。
--そう思った矢先、
「……火の玉、ですか?」
「魔法使いだな」
何もなかった視線の先に、見上げるほどの巨大な炎が浮かび上がっていた。
背後に隠れていたメリアも、その身を乗り出すようにして、炎を見詰めている。
「ご主人様! 太陽が3つあるように見えますよ!」
「確かにな」
「さすがはサトリですわね」
「……なんだ? メリアの知り合いか?」
と言うか、サトリって、さっきの センサービビビ女だよな?
あいつ、騎士の格好をしていたけど、魔法使いだったのか。
「私直属の部下なのです。優秀な副隊長ですわ」
「へぇー。あいつがねぇ」
まぁ、語彙力以外は普通だったからな、そういうこともあるか……。
そんな事を思っている間にも、炎の玉がさらにデカくなり、ついには巨大なスライムを越えた。
遠く離れているのに、流れてくる風が熱く感じる。
剣や槍を振り回していた騎士たちも、慌てて退避してるな。
--何はともあれ、あれで決まりだろ。
火力は十分。
むしろ、巨大なスライムが可哀想に見えるほどだ。
なんて、思っていた矢先、
「えっ!?」
「消えた!?」
巨大な炎がスライムにぶつかり、炎の方が跡形もなく消え去った。
スライムに苦しんでいるような素振りはない。
何事もなかったかのように、天幕を食べ続けている。
「……お兄さま。今のは、なんですの……?」
「わからんな」
炎がスライムにぶつかって、消え去った。
そう見えた。
「炎も、食われたのか……?」
あり得なくはない。
だけど、食われたと言うよりも、一瞬で消えたような、そんな感じだった。
「ご主人様。魔法がぶつかる直前に、何か丸い物が光りませんでしたか?」
「丸いもの?」
「はい。あの大きなスライムの、背中の方に……」
「背中……? それって、上? 横?」
「えっとえっと……。あの辺りです」
斜め上方向を指差してくれたけど、どうにもわからん。
と言うか、どっちが前でどっちが後ろだ?
「彩葉とメリアは? 何か見えたか?」
「ぜんぜんダメ。光とか、そんなのあったかな?」
「私も確認出来ませんでしたわ」
「そうか……」
護衛に残った騎士や、アンナさんにも視線を向けて見たけど、全員が首を横に振るだけ。
俺たちがそんな話をしている間に、今度は小さな炎が宙に浮かんでいだ。
その炎が2個に分かれて、2個が4個になって、4個が8個になって……。
気が付けば、数え切れない数の炎が、スライムの周囲を取り囲んでいた。
--デカいのがダメなら、数でやってやるわよ!
そんな幻聴が聞こえたけど、無意味っぽい。
増える側からスライムにぶつかった炎が、跡形もなく消えて去っていた。
「やっぱり光ってます。……見えませんか?」
「あぁ、俺には何も……」
ちらりと周囲に目を向けるけど、全員がダメ。
「けど、何かあるんだろ?」
「はっ、はい! たぶん、ですけど……」
リリが嘘を付くとは思えないし、嘘を言う意味もないからな。
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