BLOOD RESISTANCE〜血の抵抗

間広 雪

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vol.1 血の覚醒

一滴目 血の覚醒

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私、冬風 雹ふゆかぜ ひょうは妖明高校2年生の女子生徒だ、雹は教室で読書に耽っているとそれを遮るようにクラスメイトの笑い声がかぶさってくる。
ねえねえこのリップちょー可愛くない? ほんと!かわいい! ねぇお揃いにしちゃおうよ!!
お前数学の宿題やってきたか? え!今日提出かあれ! またかよお前そろそろ本気で怒られるぞ~ やっべー!!
クラスメイトは朝からとても元気だ
そういえば知ってる?最近化け物事件とか狼男事件って言われているのがあるの 化け物?狼男?何それ あんた知らないの?元は通り魔事件なんだけど、事件現場に大きな爪で引っ掻いた痕や牙で噛み砕かれたような物があって、コンクリートなんかも抉られてるんだって、電柱とか壁もめちゃくちゃらしいよ 爪痕とかあるから、化け物や狼男ってこと?いるわけないじゃんーそんなの えーでもさー

最近噂になっている通り魔事件らしい、狼男、、くだらない、化け物?狼男?いるわけない、いるわけないじゃない
雹が本に思考を戻して、暫くすると教室のドアが開き教師が入ってきた
「おらー席につけー、うう今日も寒いなーお前ら風邪ひくなよー連絡するの俺なんだから、めんどくさい」
それでも教師かよー 連絡くらいしろー
クラスメイトのヤジが教師に飛んでいた
「うるせ、とにかく体調に気をつけろよー」
ほんと最近寒いよねー ねえねえ氷女なのせいじゃない あー氷女ね ほんとイケすかないのよねあの子、何時もクールぶっちゃって可愛くない そう言えば、アンタが気になっていた先輩あの子に告白してたもんね、あんた妬み入ってる? う、うるさいわね、気味が悪いのよ何考えてるか分からないし、そんな態度取るから周りも寒くなっちゃうんじゃない?
一部のクラスメイトはコソコソと雹の陰口を聞こえるかどうかの声で話している
静かにしろー、教師のもう一言でやっと授業が始まった
本当にくだらない、、、

放課後、雹は委員会の仕事を片付け帰路についた
「はぁはぁ、遅くなっちゃった、もうこんな時間、早く帰ってつららにご飯あげないと」
つららとは私の愛猫だ、普段学校に行っている間は、自動投入でご飯をあげているが、朝夜は設定していないので私がいないとご飯抜きになってしまう
「つらら、怒っちゃうかな、今度は朝夜も設定しておこう」
私は足を早めて家に向かった、しかし曲がり角で男に声をかけられた
「こんばんは、お嬢さん」
雹は無視して進もうとしたが、回り込まれてしまった
「んんんん~お嬢さん~無視しないでくださいよ~」
「、、、誰ですかあなた」
「これはこれは、申し遅れました、わたくし狐松こまつと申します」
狐松と名乗った男は、灰色のスーツ姿に痩せ型の高身長、そして何処か不気味な印象だった
「、、、何かようですか」
「んんん~わたくしとお話してくれるんですね~嬉しいですね~それではあなたも急いでいるようなので手短に要件をお伝えしますね、あなたを食べさせてください」
「、、、え?」
気づいた時には、男は私に襲いかかる所だった、私は反射的に背を向けて逃げようとした
「どこに行くんですか~!!お嬢さん!!」
体に衝撃が走り、気づくと私は地面に倒れ込んでいた、起き上がろうとすると背中に痛みを感じる、血が足元まで流れてきていた、痛い痛い痛い、う、動けない、、、
「んんん、勿体無い血が垂れてしまう、あなたが逃げるからですよ」
「!!!」
雹が男を見ると、男の雰囲気が変わっていた、上背が盛り上がり鼻先が伸び耳が頭から生えその姿はまるで、狐のようだった、その鋭くなった爪で私の背中を裂いたのだろう、爪から滴る血を舐め回している
「なんですかあなたは!、なんですか私を食べるって!」
「んんん~そのままの意味ですよ、私は人間を食べないと生きていけないので、あなたは、お前はわたくしの食事です、、、だがらおどなじぐ、だべざぜろ!!!!おんなぁぁぁ!!」
私は咄嗟に手を前に翳した、すると空気を殺すような冷気が襲いかかった、いや襲われたのは男の方だった
「っっ!!な、なんだごれば!おんなぁ!!まさか、末裔の力を持っているのか!!」
狼狽えている男を見てみると、その狐の顔の鼻先が少し凍っていた
「何?なんの話?」
男は、私の両腕を掴み壁に押しつけた、背中の傷がコンクリートの壁に擦れ、掴まれた腕には爪が食い込む
「痛い、、やめて、、、この化け物!!」
「んんん~化け物ですか、それを言うなら、あなたもですね」
「、、え?」
「あなた今わたくしの鼻を凍らせてくれましたね、そんな人間がいますか?これは末裔の力、わたくしが化け狐のように、あなたも何かの化け物なのですよ、人間じゃないんですよ!!!」
化け物、、私も?この男といいしょの化け物?人間じゃない、、、氷女、、そっか元々私は人間じゃなかったのか、、化け物なのか、、、
私は、体に力を込めるのを辞めた、もうどうでもいい、この男に食べられて終わるなら、もうそれでもいい、、、つららご飯あげられなくてごめんね、お父さんこんな親不孝な娘でごめんなさい、、お母さん今逝くね、、、
「んんん、諦めてくれましたか!末裔の血入り!!なぁんてご馳走だ!!では、食べさせて頂きましょうかぁぁ!!!」
私は目を開けることも辞めた

ぎゃぁぁぁ!!
悲鳴が聞こえた、、私のじゃない、誰の??
目を開けると男が顔を覆って蹲っている
「は、鼻が、私の鼻が、、、誰だ、わたくしの食事を邪魔するクソ野郎はぁ!」
???「今からお前を倒す、化け物だよ」
雹の前に、別の男が立っていた
「綺麗な毛並み、、、」
思わず声に出てしまった、満月の月明かりに照らされて輝いている、銀色の毛並み、あらゆる物を破壊でそうな爪と横から覗く牙、何物をも組み伏せる事ができそうな大きな体躯、、噂の狼男、、、
狼は首を掻きながら私を見下ろす
「、、、あなたも私を食べにきたんですか?」
狼は罰が悪そうな顔をして、顔を背け狐に目を向ける
「ゔゔゔ、ぐぞう、わたくしの食事の邪魔をしやがって。許さんぞ!犬っころ風情が!」
狐は先程とは比べ物にならない速さで、狼に襲いかかっていた、私を切り裂いた爪で狼の命を刈り取るように
「おせぇ」
狼は狐の速さなぞ意に返していなかった、いとも簡単に襲いかかった狐の腕を掴み、爪を受け止めていた
「!?!?」
「お前だろ?近頃この辺りで人間狩りしている末裔人まつえいびとは、こんな安い爪と牙が俺と勘違いされているのか」
「くそ!!くそ、離せ!このクソ犬がぁぁ!!」
「教えてやるよ、化け狐」
狼の威圧感が増した
「末裔人はなぁ、自分の血に呑まれたら終わりなんだよ」
「ウルサイ!!お前に何がわかる!わたくしはもう人間の味を知ったんだ!だからその女ぁよこせ!!」
「知るかよ、爪斬狼そうざんろう
その鋭爪は周囲の空気を、狐の体を抉り裂き、狐の体を吹き飛ばした
「ぐ、ぐぞゔ、犬っころ風情が、何者だお前はぁ、、」
「言ったろ、お前を倒す、狼だよ」
あ、もう倒したか、そう呟いた狼は満月に佇んでいた、月明かりに照らされて、銀毛と赤く濡れた鋭爪がとても綺麗に見えた
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