愛情不信聖女と魔術ばか王子のまったり研究ライフ

ゆるゆる堂

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第11話 アイラの父とトールの関係

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 そのあと可能であれば血を調べさせてほしい、と言われたので、アイラは快諾した。

「どれくらいでもいるだけ取ってください」という言葉に、ディックが慌てて「ほんのちょっとで大丈夫だからね!?」と返す。そして、準備があるから、と一旦部屋を出ていき、ビアンカとアルトも別の用事があるからと退出したので、今日最初に担当だといった三人が残った。

「なあ」

 三人になって、じゃあ一旦休憩でお茶でも飲もうとミィとリリーが準備しに行ったところで、トールが鞄の中にしまい直した写真を指さして、「少しだけ見せてくれねぇ?」と頼んできた。
 トールが写真を乱暴に扱うとは思えなかったので「どうぞ」と渡すと、しばらく写真を眺めた後、アイラに写真を返しながら、「アイラの父親って、ウィルスさん、だよな?」と言った。
 父親の名前を突然言われて、きょとん、と瞬きをしたアイラに「あれ、違ったか?」とトールが少し慌てたので、「いえ、あってます」と返す。

「やっぱりだよな。うん。資料で名前見た時にもしかして…とは思ったんだけどさ」
「父が、なにか…?」

 トールがうんうん頷く様子に、アイラが首を傾げると、トールは左腕の肘のあたりまで袖を捲って見せた。
 そこには、大きな古い傷跡があった。

「さっき、上級魔法使ってもらった経験があるっていっただろ?」
「はい」
「俺、昔は魔法騎士団に配属されてたんだ。で、その時に大型の魔獣との戦闘になって、危うく左腕引きちぎられかけてな」

 魔法騎士団は、魔法庁の管轄にある、魔法と剣をどちらも使用するエリートである。主に、大型の魔獣の討伐や、大きな災害の復興に魔法が必要な時などに活躍する。

「で、その引きちぎられかけたぶらぶらの腕を引っ付けてくれた癒し手がいたんだけど、それが、アイラのお父上だったんだなーと思って」

 アイラにとってはかなり幼い頃の記憶だが、大きな戦いがあるから癒し手として参加する、と父が出かけたことがあった。もしかしたら、その時の話なのかもしれない。

「魔物の牙でやられた傷って、治りが遅い上に高確率で毒で死ぬってのは、アイラは知ってるか?」
「はい。父から教えてもらったので」
「じゃあ、それをくっつけた上で動くようにできるってのがどれくらいすごいことかも?」
「わかります」

 そこまで言ったあとに、トールはニカッと笑って見せた。

「あの時は意識朦朧としてたから、ちゃんとお礼言えなくてさ。解毒薬まで処方してもらってたってのに」
「父も、討伐が終わった後はすぐ引き上げたと言ってましたから」

 上級治癒魔法で治したと言っても、それは完治ではないから、安静期はしばらく続く。毒による衰弱の危険があるならなおさらだ。
 しかし、ウィルスはウィルスで、地元に残してきた患者を、いくら妻が居るとはいえ、いつまでも放っておくことはできなかった。

「動けるようになってからも、騎士団から研究室に移る関係でバタバタしててさ。そのうちに、亡くなったって噂だけは聞いてた。…だから、写真に向かってではあるけど」

 トールはアイラの手にある写真に向かって頭を下げる。

「命を救っていただき、ありがとうございました」

 父が繋いだ命が、罪を償うためにやってきたはず場所で、いま目の前に在る。
 その不思議な縁に、アイラの目にはまた、じわりと涙が浮かんだ。
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