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第12話 リリーからも感謝を
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血液の検査はすぐに行われるはずだったのだが、どうやらそれを調べる魔道具の調子が悪いということで、午後はもう一度加護の検査(何度やっても変わらず「ごめんなさい」と出た)をし、その次の日はフリーディとなった。
フリーといって部屋から出られるわけではないので、アイラは運んでもらった朝食を食べてから、ベッドの上で転がっていた。
魅了を使っていたとわかってから、環境が目まぐるしく変化し続けていて、そのせいなのか、すこし「すぐに死ぬほうがいい」という思考が遠のいている気がする。
それが良いこととは思えないが、どうしても、癒し手になるという目標をあきらめきれないのだ、ということにも気がついてしまった。
とくに、トールが父によって助けられた、と聞いたあたりから。
「この部屋は、部屋から外に魅了の効果がでないための魔封じの部屋。部屋に来た人にかかける魅了を弾くことはできない」
つまり、例えば治療院に魔封じをしたとしても、中でアイラが治療をおこなっているときに魅了を使用してしまったら、結局いつも通りの結果を引き起こすだろう。
魔封じの部屋と、魔封じの加護は効くのに、魔封じの魔道具は効かない、というのが良くわからない。魔封じの魔道具さえうまくハマれば、と考えてみるものの、治癒魔法は魔法なのだから、魔封じをされたら使えないのでは、と思う。いや、精神系魔法のみって言ってたな、そうなら治癒魔法だけなら使えるのか。
「アイラって結構いろいろ考えるタイプなんだねー」
「きゃあ⁉︎」
部屋に一人でいたはずなのに、いつのまにかベッドの横にはリリーがいて、思わず悲鳴をあげてしまった。
「あ、ごめん、ノックしても返事なかったから……。驚かせちゃった?」
「い、いえ…すみません」
「あはは、なんでアイラが謝るの?」
横に座っていいか、と聞かれたので、アイラはどうぞ、と少し場所を開ける。
よいしょ、と座ってから、リリーは僕にも、写真見せてくれない?と尋ねる。断る理由もなかったので、どうぞとアイラが渡すと、リリーはしばらくその写真を見つめたまま、「この人かぁ」と呟いた。
「あの…?」
「ああ、ええと。僕さ、ちょっと変でしょ?」
「ええと…?」
唐突の自分は変発言にアイラは戸惑って言葉を探す。
「あはは、ごめんごめん!困らせたかった分けじゃなくってさ。僕ってさ、自分の性ことを、あんまり女として自覚してないんだよね。だからと言って男だとも思ってないんだけど」
リリーはいつも男女兼用の洋服を着ているし、一人称が「僕」であることから、なんとなくそんな気がしていたアイラは曖昧に頷く。
「弱小だけど貴族の家に僕らは生まれたからさ、僕にとってはそれなりに窮屈で。でも、トールがいたから僕は僕のまま息ができたんだ。だから、トールは大事な兄弟であり、大事な恩人でもあるんだけど」
リリーは写真に視線を戻す。
「一回、失いかけたんだよね」
「魔獣との戦いのことですか?」
「そうそう。さっきさ、そのとき救ってくれたのがアイラのお父上だってトールから聞いて、僕も写真にお礼を言いたくなってさ。うん。ありがとうございました」
リリーは、先日のトールと同じように、写真に向かって深く頭を下げた。
「で、だ!」
頭を上げた後、リリーはパッと表情を変えて、アイラに笑った。
「僕にとって、君は恩人の恩人の娘なんだなーって思ったら、俄然やる気でちゃったわけ!それに、僕の研究テーマである『加護』とはなにか、ってこともなんか言及できそうな感じだし、むしろそっちがメインなんだけど、あ、いや、恩を感じてないわけではないんだよ、これはほんと!」
どっちも本音だから!と強調するリリーに、アイラは思わず、くす、と笑ってしまった。
「あ、笑ったね。いい感じ!」
リリーはそう親指を立てて、そうそう、これあげる、とアイラにアンクレットを一つ渡した。
「精神支配系の魔法に、かかってるかかかってないか、判断する魔道具だよ。かかってるか心配な相手に向けてみて。ここの真珠みたいなのが赤くなったらかかってるってこと。変わらなかったら、かかってないってこと。百パーセントの精度とまではいかないけれど、君の学園で魅了にかかった人を探すのに使った魔道具だから、結果は信じて大丈夫なはずだよ」
ほら、僕に向けてみてくれる?とリリーがいうので、アンクレットを腕にはめてそっとリリーに向けてみる。
色は、変わらなかった。
「ちょっとは、安心できるでしょ?」
「…ありがとうございます」
ここの研究員の人は、アイラの「自分の意志ではなかった」という言葉を、可能性を、少しずつ証明してくれようとしている。
そう思うと、少しだけ前を向いても許されるような、そんな気持ちになった。
フリーといって部屋から出られるわけではないので、アイラは運んでもらった朝食を食べてから、ベッドの上で転がっていた。
魅了を使っていたとわかってから、環境が目まぐるしく変化し続けていて、そのせいなのか、すこし「すぐに死ぬほうがいい」という思考が遠のいている気がする。
それが良いこととは思えないが、どうしても、癒し手になるという目標をあきらめきれないのだ、ということにも気がついてしまった。
とくに、トールが父によって助けられた、と聞いたあたりから。
「この部屋は、部屋から外に魅了の効果がでないための魔封じの部屋。部屋に来た人にかかける魅了を弾くことはできない」
つまり、例えば治療院に魔封じをしたとしても、中でアイラが治療をおこなっているときに魅了を使用してしまったら、結局いつも通りの結果を引き起こすだろう。
魔封じの部屋と、魔封じの加護は効くのに、魔封じの魔道具は効かない、というのが良くわからない。魔封じの魔道具さえうまくハマれば、と考えてみるものの、治癒魔法は魔法なのだから、魔封じをされたら使えないのでは、と思う。いや、精神系魔法のみって言ってたな、そうなら治癒魔法だけなら使えるのか。
「アイラって結構いろいろ考えるタイプなんだねー」
「きゃあ⁉︎」
部屋に一人でいたはずなのに、いつのまにかベッドの横にはリリーがいて、思わず悲鳴をあげてしまった。
「あ、ごめん、ノックしても返事なかったから……。驚かせちゃった?」
「い、いえ…すみません」
「あはは、なんでアイラが謝るの?」
横に座っていいか、と聞かれたので、アイラはどうぞ、と少し場所を開ける。
よいしょ、と座ってから、リリーは僕にも、写真見せてくれない?と尋ねる。断る理由もなかったので、どうぞとアイラが渡すと、リリーはしばらくその写真を見つめたまま、「この人かぁ」と呟いた。
「あの…?」
「ああ、ええと。僕さ、ちょっと変でしょ?」
「ええと…?」
唐突の自分は変発言にアイラは戸惑って言葉を探す。
「あはは、ごめんごめん!困らせたかった分けじゃなくってさ。僕ってさ、自分の性ことを、あんまり女として自覚してないんだよね。だからと言って男だとも思ってないんだけど」
リリーはいつも男女兼用の洋服を着ているし、一人称が「僕」であることから、なんとなくそんな気がしていたアイラは曖昧に頷く。
「弱小だけど貴族の家に僕らは生まれたからさ、僕にとってはそれなりに窮屈で。でも、トールがいたから僕は僕のまま息ができたんだ。だから、トールは大事な兄弟であり、大事な恩人でもあるんだけど」
リリーは写真に視線を戻す。
「一回、失いかけたんだよね」
「魔獣との戦いのことですか?」
「そうそう。さっきさ、そのとき救ってくれたのがアイラのお父上だってトールから聞いて、僕も写真にお礼を言いたくなってさ。うん。ありがとうございました」
リリーは、先日のトールと同じように、写真に向かって深く頭を下げた。
「で、だ!」
頭を上げた後、リリーはパッと表情を変えて、アイラに笑った。
「僕にとって、君は恩人の恩人の娘なんだなーって思ったら、俄然やる気でちゃったわけ!それに、僕の研究テーマである『加護』とはなにか、ってこともなんか言及できそうな感じだし、むしろそっちがメインなんだけど、あ、いや、恩を感じてないわけではないんだよ、これはほんと!」
どっちも本音だから!と強調するリリーに、アイラは思わず、くす、と笑ってしまった。
「あ、笑ったね。いい感じ!」
リリーはそう親指を立てて、そうそう、これあげる、とアイラにアンクレットを一つ渡した。
「精神支配系の魔法に、かかってるかかかってないか、判断する魔道具だよ。かかってるか心配な相手に向けてみて。ここの真珠みたいなのが赤くなったらかかってるってこと。変わらなかったら、かかってないってこと。百パーセントの精度とまではいかないけれど、君の学園で魅了にかかった人を探すのに使った魔道具だから、結果は信じて大丈夫なはずだよ」
ほら、僕に向けてみてくれる?とリリーがいうので、アンクレットを腕にはめてそっとリリーに向けてみる。
色は、変わらなかった。
「ちょっとは、安心できるでしょ?」
「…ありがとうございます」
ここの研究員の人は、アイラの「自分の意志ではなかった」という言葉を、可能性を、少しずつ証明してくれようとしている。
そう思うと、少しだけ前を向いても許されるような、そんな気持ちになった。
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