愛情不信聖女と魔術ばか王子のまったり研究ライフ

ゆるゆる堂

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第13話 血中魔力濃度の確認と、魅了にかかった人リストのチェック

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 次の日になって、魔道具が直ったというので、アイラの血液に含まれる検査が行われた。
 今日の担当は、ディックとミィ。

「血中魔力濃度は魔力量の割には普通だねぇ」

 数値をみながら、ディックはうーん、と唸る。数値を覗き込んだミィも、そうねぇ、と頷く。

「まあ、自分の血液や体液で魔法を使うっていうのは本当に特殊な例だもんねぇ。あ、でも魔法使ってる時だとまた違うのかな。今日はもう血をもらっちゃったから、今度また改めて魔法使用時の血液取らせてもらってもいい?」
「今でも大丈夫ですけれど…」

 血を取られたといっても、ほんの少しの傷を作ってポタポタと数滴垂らしただけだ。その傷も、ミィがかけてくれた治癒魔法でもう治っている。
 アイラはそういうが、だめだめ、とディックは首を横に振った。

「人の体に傷をつける実験を、一日に何度もするなんて、非人道的なことは、僕たちの流儀に反します」

 でも、私は罪人で、それを償うためにここにいるのだから、少しくらい…と口に出す前に顔に出ていたらしい。
 ミィが「アイラちゃん」と少し低い声で呼んだ。

「あなたが罪を犯したという事実に基づいてここにいるということと、あなたを人として扱わないということは、別の事よ。私たち魔法研究員は、自分のため、そして人のために研究をしているの。誰かを害するためじゃなくて、守るために。…その、ハッスルしちゃってびっくりさせちゃうことは、あるだろうけど」

 最後は少しおちゃらけてミィが笑って、ディックも頷く。
 腕のアンクレットの宝石は、白いままだ。
 ちら、とそれを見たアイラに、ディックとミィは心の中だけで苦笑するが、その確認でアイラの心が落ち着くなら、必要なことだろう。

「さて、じゃあ今からの時間は、魅了にかかった人たちの共通項について、考えていきたいと思います!」

 そう言って、ディックは、彼が持っていた大きなかばんから、紙の束を取り出した。「それは…?」

「現時点で確認できている、アイラの魅了にかかった人たちのリストだよ」

 一枚一人だとしても、その紙の束の厚みに、アイラはゾッとした。これだけの人の人格を、私は狂わせていたのか。

「すごい数に思えるかもしれないけど、これは、魅了のかかり具合がすごく軽度だった人も含めてるから、そこまで引かなくていいよ。隔離が必要だったくらい重度の症状だった人のはね、これくらい」

 あらかじめ分けてあったのだろう、ディックが紙の束の一部を机に置いた。
 それでも、そこそこの厚みがある。
 自分で把握してるだけで、学園で八組、両親が亡くなるまでに一組の婚約破棄を引き起こしているのだ。当然と言えば当然なのかもしれない。

「でも、不思議なのよねぇ」

 ミィが言う。

「アイラは、最初は優しくしてくれた人が自分を崇拝していく、って言っていたじゃない?」
「そう、ですね」
「でもね、この数。特に軽度だった人たちなんだけど、アイラとの接点がない人も多いのよ」

 アイラは目を開く。

「ちょっとだけ、見せてもらっても大丈夫ですか?」
「もちろん。一緒に確認するために持ってきたからね」

 アイラはまず、隔離されるほど重度だった、という人の束をぱらぱらとめくる。
 そこにはビアンカの婚約者、テオをはじめ、確かに自分に「愛している」と言ってきた人の名前が多く書いてあった。孤児院時代の人たちもいた。
 次に、中度がこれ、とディックに渡された紙の束を捲る。アイラと同じクラスだったり、寮が同じだったり。挨拶を交わせる距離にいたけれどそこまで関わりのなかった、辛うじて名前はなんとなく知っている。そう言う人たちがいた。

「じゃあ、最後は軽度な人たちのぶんだね」
「ありがとうございます」

 ぱらり、とめくる。
 書いてある簡易プロフィールのおかげで同じ学園に通っていた、もしくはアイラが時々出かけたことのある町や場所の近くに住んでいる、といったことがわかる程度の、名前も顔もわからない人たちがいた。

「アイラが行ったことのある場所、という共通項はあるんだけどさ」

 ディックが言う。

「たとえば学園ね。アイラの寮の隣のひと、シンシア嬢って覚えてる?」
「はい、よく気にかけてくださっていたので」
「そう。アイラとよく喋っていたはずの彼女、かかってないんだよ。魅了に」
「え?」

 そういえば、シンシアの名前はなかった、とアイラは紙の束へ視線を落とす。

「同じく、同じクラスの隣の席、オルガスくん。彼もかかってない。つまり、アイラと喋ったことがある、とか、常に近くにいる、ということが発動条件ではないんだ。たぶんね」
「シンシア様や、オルガス様が魔封じの何かを持っていたとかではなく、ですか?」

 アイラの疑問に、ディックとミィが同時に頷いた。

「そこ、僕らも気になったから調べて見たけど、彼女たちは魔封じの加護も持ってないし、魔封じに関する魔道具も持ってない。魅了に関係する魔法を持つ祖先や親族がいるわけでもなかった」

 いつの間にきたのか、突然後ろから声がして振り向くと、そこにはアルトが立っていた。

「だからさ、僕思うんだ。アイラの魅了って、常に無意識に発動してるものじゃなくて、無意識は無意識でもやっぱり発動条件があるんじゃないかなって!」

 キラキラした目をしながら急に近づかれて、アイラはびくり、と体をそらした。

「アルト様、今日は缶詰めの予定じゃなかったんですか?」
「ふふーん!僕、実は有能だからね。ちゃんと全部終わらせてきたよ!ゼクトからもちゃーんと許可もらってここにいます!」

 アルトが胸を張る。
 ゼクト、というのは魔法庁の次長、いつもアルト様に書類仕事押し付けられてる方よ、とミィがアイラにこっそり補足した。

「だってさ、ずるいじゃない。僕がアイラの魅了を調べることが国のためになるって陛下説得して研究室に呼んだのに、基礎研究とか聞き取りの部分、僕以外で進めちゃってさ。僕、加護の「ごめんなさい」のあたりしか関われてないでしょ」

 いや、結構顔出しに来てた気がするよというディックの言葉は無視して、アルトはアイラに向き直す。

「で、さっきの話だけど。僕の仮説聞いてくれない?」
「は、はい」

 アイラが頷いたのを確認してから、アルトにニコニコ続けた。
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