振り向けば君がいた

和之

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第三十三話

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(33)
 三人は細川ガラシャの記念碑から駐車場に戻った。
「お母さんの思い出はこれくらいにしてせっかくここまで来たのですから天橋立に行きたいわね」
 希美子は申し訳なさそうに佳乃に声を掛ける。
「そんな顔しなくても大丈夫ですよ、今日は母から好きなところへ連れて行ってたげてと言われてますから」
 だから存分にどうぞ、と佳乃はちゃっめ気に車へ招く。
  車は味土野から天橋立へ向かった。それは車一台が通れるほどの曲がりくねった道だ。そんなバスも車の往来も無い一本の山道がずっと続いている。これで対向車が来れば終わりのカーブや離合出来ない坂道が続くまるで秘境だ。こんなに山奥に僅かな侍女だけで隠棲していれば気が滅入り神経衰弱になりそうだ。よほど気丈な人だったんだろう、そこが希美子と通じるところかも知れない。
「随分と不便なところだ、ガラシャは此処にどれくらい居たんだろう」
 雪が薄っすらと積もる杉木立を見て野村が言った。
「二年ぐらいかしら」
 それぐらいでも辛いわねと希美子の言葉に佳乃も合わせる。標高が四百メートルもあるからもう春までは来られるか分からないらしい。
「実家が滅びて先が読めず、秀吉から許されるまで此処に居たのですから心細いでしょうね、それも当時は許されるかも分かりませんから」
 佳乃の言葉を聞く内に希美子が熊本でガラシャの墓を案内してくれたのを想い出した。ふとその意味を探ろうと顔を伺ったが彼女からは何も読み取れなかった。それどころか佳乃さんからのガラシャ伝を聞いても絶えず愁いを帯びる事はなかった。どれぐらい走っただろかやっと木立の間から海が見えると気分も幾らか和らいだ。
 
 
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