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就業の合図でデスクに広がる書類を片付け始めた。下を向いた拍子にはらりと頬にかかる髪を無造作にかきあげ。
「伸びたわね…」
そう呟くと胸の痛みと共に懐かしい思い出が、心臓を締め付ける。
忘れようとしても今でも忘れられない、昔の恋人。
今よりもずっと長かった黒髪を綺麗だと言い。それに触れるのが好きだと言っていた人……。
別れた後は、反発するように髪をショートにして色も茶色に染めた。黒髪でなければなんでも良かった。それからは、彼が好きだと言ったものは全て止めた。
そんな事をしても虚しさは変わらないのに。彼と別れてからそんな事を5年、29歳になったというのに未だに続けていた。
「寺澤せーんぱいっ!」
仕事の後片付け中の夏希にスキップするように近づき、甘えた声で呼ばれる。この子が甘えた声で呼ぶ時はろくなことが無い。
「加奈ちゃん……。で、今日は何?」
加奈は、一昨年入社した時に私が、教育係を担当していた子だ。この社1番の可愛さを誇る後輩に何故か教育係を終了しても懐かれ食事だ遊びだと連れ回されていた。なんだかんだで一人っ子の自分に妹が出来たようで単純に嬉しかった。
「もう!先輩冷たい!かわい後輩のお願い聞いてくだいよ」
ふんわりしたパステルカラーの服が良く似合う可愛らし女の子。素直で愛嬌もありこの子がいると雰囲気が和む。羨ましく思ってしまうが、私には到底真似も出来ない。精々、頼りになる先輩を無理矢理演じるしかない。
「はいはい。そのかわいい後輩のお願いって? 悪い予感しかしないけど。一応、聞いてあげる」
「さっすが、先輩!話が早い!今日なんですけど。営業の人とお食事会セッティングしたんで。ほらっ、行きますよ」
男ならコロッと騙されそうな天使のほほえみを浮かべ。逃げないように腕を絡めてくる。更にトドメに小首をかしげて上目遣いで見つめる。この顔は、もう逃げられない……。
あぁ、やっぱり…、ろくな事じゃなかった。
「私は、この後予定が……」
絡められた腕を外しながらどうにか逃げ出せないかと試してみる。
「先輩!嘘はダメですよ。もう調べはついてます。今日は帰るだけって。長野さんから証言取ってます!」
「エッ?長野君?」
そう言われれば、確かに長野とそんな話を休憩中にした記憶がある。
グルッと振り返り後ろのデスクにいるはずの彼を見ると両手を合わせ拝むように謝りながら部屋から逃げ出す長野の姿があった。
「先輩。残念ながら逃げても更衣室にも捕獲隊を待機させてますので」
あ、下のロビーにも待機してます。と要らぬ情報までついてきた。
やられた。
そう思っても先手を取られてしまって逃げるに逃げれない。
「分かったわよ。取り敢えず行きゃいいんでしょ?」
「やった!今日、絶対に先輩連れてくるって約束したんですよね」
「約束って。私が行った所でなんの特典もないわよ」
「もう!先輩!気づいてないんですか?私がセッティングするやつみんな先輩狙いですからね!」
「物好きね…」
ため息がでてくる。賭けでもしているんだろう。いつも声をかけてもスルーする私を誰が落とすのか。そんなくだらないゲームに付き合わされるなんてたまったもんじゃない。
もう、昔のあんな思いはしたくない。恋愛なんてろくなもんじゃない。
「伸びたわね…」
そう呟くと胸の痛みと共に懐かしい思い出が、心臓を締め付ける。
忘れようとしても今でも忘れられない、昔の恋人。
今よりもずっと長かった黒髪を綺麗だと言い。それに触れるのが好きだと言っていた人……。
別れた後は、反発するように髪をショートにして色も茶色に染めた。黒髪でなければなんでも良かった。それからは、彼が好きだと言ったものは全て止めた。
そんな事をしても虚しさは変わらないのに。彼と別れてからそんな事を5年、29歳になったというのに未だに続けていた。
「寺澤せーんぱいっ!」
仕事の後片付け中の夏希にスキップするように近づき、甘えた声で呼ばれる。この子が甘えた声で呼ぶ時はろくなことが無い。
「加奈ちゃん……。で、今日は何?」
加奈は、一昨年入社した時に私が、教育係を担当していた子だ。この社1番の可愛さを誇る後輩に何故か教育係を終了しても懐かれ食事だ遊びだと連れ回されていた。なんだかんだで一人っ子の自分に妹が出来たようで単純に嬉しかった。
「もう!先輩冷たい!かわい後輩のお願い聞いてくだいよ」
ふんわりしたパステルカラーの服が良く似合う可愛らし女の子。素直で愛嬌もありこの子がいると雰囲気が和む。羨ましく思ってしまうが、私には到底真似も出来ない。精々、頼りになる先輩を無理矢理演じるしかない。
「はいはい。そのかわいい後輩のお願いって? 悪い予感しかしないけど。一応、聞いてあげる」
「さっすが、先輩!話が早い!今日なんですけど。営業の人とお食事会セッティングしたんで。ほらっ、行きますよ」
男ならコロッと騙されそうな天使のほほえみを浮かべ。逃げないように腕を絡めてくる。更にトドメに小首をかしげて上目遣いで見つめる。この顔は、もう逃げられない……。
あぁ、やっぱり…、ろくな事じゃなかった。
「私は、この後予定が……」
絡められた腕を外しながらどうにか逃げ出せないかと試してみる。
「先輩!嘘はダメですよ。もう調べはついてます。今日は帰るだけって。長野さんから証言取ってます!」
「エッ?長野君?」
そう言われれば、確かに長野とそんな話を休憩中にした記憶がある。
グルッと振り返り後ろのデスクにいるはずの彼を見ると両手を合わせ拝むように謝りながら部屋から逃げ出す長野の姿があった。
「先輩。残念ながら逃げても更衣室にも捕獲隊を待機させてますので」
あ、下のロビーにも待機してます。と要らぬ情報までついてきた。
やられた。
そう思っても先手を取られてしまって逃げるに逃げれない。
「分かったわよ。取り敢えず行きゃいいんでしょ?」
「やった!今日、絶対に先輩連れてくるって約束したんですよね」
「約束って。私が行った所でなんの特典もないわよ」
「もう!先輩!気づいてないんですか?私がセッティングするやつみんな先輩狙いですからね!」
「物好きね…」
ため息がでてくる。賭けでもしているんだろう。いつも声をかけてもスルーする私を誰が落とすのか。そんなくだらないゲームに付き合わされるなんてたまったもんじゃない。
もう、昔のあんな思いはしたくない。恋愛なんてろくなもんじゃない。
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