雨の降る街

Shuhei

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霧雨

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「聞いてくれ また落ちたよ」
その言葉を発したと共に僕の顔は泣きそうになっていた
しかし彼は何故か共感し慰めるような感じはなく 
どこか嬉しそうな顔していた
スッと音を立て 彼に落選の紙を見せる
彼は紙の文章を読みもせず言った
「良いじゃないか」
「え?」
「俺は君の作品が好きだからね 独り占めの気分さ」
その言葉を聞いてから僕は、その後の会話をあまり覚えていない

「独り占めの気分か… まさかそんな風に思っていたなんて」
僕はよく分からない感情になり家に帰った
ガチャ…という音を立てて僕は静かに家に入る靴を脱ぎ手を洗う
これは僕のルーティンワーク、これが無いと僕は作品の制作に移れない
パソコンの前に座りカタカタと音を立て文字を打つ
しかし1時間経っても良いアイディアは浮かばなかった
アルコール中毒者のようにコーヒーを飲み彼の事を思った
「独り占め…僕はリスナーの為に作品を書いているんだ」
僕は彼の為に作品を書いているのでは無い
心の中では分かっているのに僕はそう口に出した
今日は雨だ
彼に会った後に降り出した雨
僕はこの雨を涙と捉えたりはしない、僕はこの雨を何かに例えたりはしない
僕は涙を流しながら雨を眺めていた

僕は何故あんな事を言ったのか分からなかった
「独り占め気分か…失礼な話だ」
彼はみんなの為に作品を書いている、僕は彼を縛り付けてもいけないのだ
雨の降る街を僕は歩く、彼もこの雨を見てるのだろうか
彼はまた僕に会ってくれるだろうか
「あんなに失礼な事を言ったんだ」
絶交されるかもしれない、恐ろしくなり口に出してしまった
僕は泣いていた
午後3時に僕は泣いていた
でも誰も僕の涙には気づかない雨が降っているのだから

誰も僕の涙には気づかない
何故なら僕は部屋に1人だからだ

僕の涙は誰にも見せない
僕の涙は誰にも気づかれない
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