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幕間劇その肆
レトロモダンのレモンタルト
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鴉という鳥は、その羽の色と、狡猾さを以て、多く人間に忌み嫌われている。中には、その知能の高さに、特別な意味を見出し、神の使いだとするような、考えもあるにはあるようだが。大勢では、ごみ捨て場を荒らす、厄介者という意見が、妥当だろう。
鴉というと、大抵は、かの黒い鳥を、連想するだろうが、人間の身近にいたせいか、様々な意味を持つ。
玄人のくろ、という音にかけ、技に熟達する者を鴉と言い、別の意味では意地汚い者も、鴉と言われる。
使われ方に大分、幅のある言葉だが、それだけ人間に馴染んだ鳥だということが分かる。
多くの生物が、ホモサピエンスの台頭により、住処を奪われ、数を減らし、少なくない種が絶滅してきたというのに、鴉という鳥ほど、人間の生活に順応した野生生物は珍しい。
だが、俺は鴉が嫌いだ。その理由が、今朝フンをひっかけられて、家に引き返すことになったから、だなんてことは説明しなくてもいいだろう。羽の色だけで嫌うような人間もいるのだから。
今朝のことを思い出して、ぶるぶると身を震わせていたところ、
「太郎見てよ。琵琶湖だよ!」
と雄清に肩を叩かれた。
神宮高校一年生一行は、その日、長浜に向かうバスに乗っていた。秀吉が築城したとされる、滋賀の長浜城の城下町に向かっていたのだ。
皆大好き、遠足である。そんな日に、悲劇に見舞われる俺は、チャップリンも仰天するほどの喜劇王になれるかもしれない。
隣に座る雄清は、窓に顔を貼り付け、外の景色を見ては興奮している。……小学生かよ。
「やっぱ、智代の服、超かわいい」
通路を挟んだ隣の席から、そんな声が聞こえてくる。見ると、いかにも女子女子している格好の、女子生徒が座っていた。……へー、この子、智代って言うんだ。今知ったね。名字なんだっけ?
遠足は例外として、服装が自由だ。女子の中には気合を入れた装いをしてきているものも多数。
何気なく、一瞥をくれるが、俺の趣味ではない。派手すぎる。あれに何が入るんだ、と思うような、小さな鞄には、ジャラジャラと、アクセサリーが付けられていた。
……どうでもいいけど。
大変ありがたいことに、自律を校訓の一つに掲げる、神宮高校の遠足では、グループ決めなんて言う、公開処刑は存在しない。文字通り、好きな人と組めるわけだ。
思うに、あれはぼっちの燻り出し作業としか思えない。
なんだよ好きな人って。なめてんのか。
封印されし、悪夢が蘇ってくる。
「ちょっと男子ぃー。深山君を仲間外れにしないの」
「そんなに言うなら、委員長の班に入れてやれよ」
「……いやー、それはさすがに無理っていうかぁー」
わお。アニメとか、漫画とかで出てきそうな会話だね。誰だよ深山って。かわいそうな奴。
……俺でした。……別に平気だし。泣いてないし。
まあ、今年のクラスには雄清がいるので、かの残酷な刑が執行されたとしても、俺は耐えられただろうが。
閑話休題。
そういうわけで、長浜城の城下町であり、レトロモダンの街とも呼ばれる、滋賀の長浜を雄清とぶらり、男旅をしている次第だ。
「なんかー、色気ないなー」
食い歩きをしていた、雄清はそんなことを言う。
「何が」
「華だよ。華がない」
「花屋ならそこにあるぞ」
「だーかーら、男二人で散歩したってつまらないじゃないか」
「俺は楽しいけどな」
「そりゃ、太郎はそうだろうさ」
なんなら、俺は一人でも楽しめる自信が、大いにある。
「お前、だからと言ってクラスの女子とつるんでいるところ、佐藤にでも見られてみろ。俺まで半殺しの目にあわされる。監督不行き届きだなんだと言って」
「太郎は僕の保護者なのかい?」
「知るか。そんなに女子が欲しいなら、佐藤に連絡すればいいだろう」
「そりゃ、できたらそうするさ。何なら綿貫さんだって呼べる。でも、クラスの子たちと一緒だろうから、迷惑はかけられないよ」
「まあ、そうか」
佐藤は、一緒に歩くような、友達もいるだろうが、綿貫はどうなのだろう。皆気後れして、話しかけにくそうな感じではある。実際、名古屋駅のデパートで出会った、グループの女子みたく、綿貫のことを快く思っていないような、奴もいるらしい。心配だ。いじめられていないだろうか。
俺のそんな心配はさておき、城でも見に行くか、という話になって、琵琶湖の湖畔に向かって歩いていた時、雄清のスマートフォンが鳴った。
「おっと、ぶるった」
とかなんとか、大げさな、反応をして、雄清はスマートフォンを取り出し(遠足では例外的に携帯電話の使用が許可されている)、電話に出た。
「あっ、もしもし。留奈? どうしたの?」
どうやら佐藤が電話を掛けてきたらしい。
電話口の向こうは、かなり大きな声で、がなり立てている。
「えっ。そんなの聞いてないけど」
『早く来なさいっ』
なんだ? 呼び出しか?
「どうした」
スマートフォンをしまった雄清に俺は尋ねた。
「……太郎。留奈から聞いてないかい」
雄清は胡乱げに俺のことを見る。
「何が」
「遠足当日は山岳部で回ろうって話」
「はあ? そんな話……そんな話……。あっ」
雄清はやれやれと溜息を吐いた。
そういえば、二、三日前、部室で俺が本を読んでいた時、佐藤が遠足の話をしていた。綿貫にも話して、部員四人で回るから、とかなんとか言っていたのだが、本を読む俺の耳には、馬耳東風。ほとんど意識に登っていなかった。
家に帰ってから、そういえば佐藤が何か言っていたな、何だっけ? と少し考えたのだが、思い出すのも、電話で確認するのも面倒になったので、大事なことなら、あとでまた言われるだろうと、そのまま放っておいたのだ。
俺の優秀な頭は、無駄なデータをすぐに排斥し、今の今まで、雄清に言われるまで、ごみ箱ファイルで、完全削除を待つまでになっていた。
二人を待たせているので、雄清からのお説教は後にして、すぐに待ち合わせ場所へと向かった。
「おそい!」
女子二人は、カフェにいた。店名はワイクロと言う。首相のお膝元、山口発の衣料品店ではない。
店の標章に、鳥の絵が使われている。
綿貫のお嬢様然とした私服は、その店のレトロな雰囲気によく似合っていて、まるで映画のワンシーンを切り取ったかのように見えた。
「まあ、そう怒るな。レトロモダンの香りを、ゆっくり楽しめたろう」
「はあ? レモンタルトなんか頼んでないわよ」
何をのたまうか。
哀しいかな、現代日本で意思疎通のできない、状況に陥るとは。……危うく失笑。
「あんたたち何やってたのよ」
笑いをこらえるのに必死な俺をよそに、佐藤は眉を吊り上げる。
「いやあ、ごめんごめん。道に迷っちゃって」
武士の情けで、雄清は俺がポカをやらかしたことを佐藤に伏せてくれるらしい。
しかし、佐藤という女は、こういう時に限って、嫌に鼻が利く。
綿貫の私服を見て、目眩いていた俺の袖を そっと、綿貫と雄清に気づかれないように、引っ張り、
「あんた、何やってんのよ」
と低い声で問い詰めてきた。とても堅気の世界の、女の子とは思えない。……怖いよ。
「……俺は何もしてないぞ」
「それが、問題でしょうが!」
「……はい、すみません」
俺はとっさに謝ってしまった。……まあ、悪いのは俺なんだが。
「つーか、こっちゃん見て、よだれ垂らすなし」
えっ、嘘。やべ。
「どうなさいました?」
綿貫が俺たちの様子を不審に思ったのか、席から立ち上がり、声をかけてきた。
「なんでもないよ、こっちゃん気にしないで」
ほう。声のトーンの違いというのは、ここまで印象を変えるのか。勉強になる。
「まったく。もっとしっかりしなさいよ。はい」
そういって佐藤は、紙袋を俺に渡してきた。
「なんだこれは?」
「罰ゲームよ。荷物持ちなさい」
畜生。この女。
「そっちのポシェットも貸せよ。それあれだろ」
「ちっ、違うし。今日はまだ。……念のために持ってきただけだし」
「我慢しなくていいぞ。……痛いから、俺に荷物持たせたいんだろ」
俺、マジ紳士。少女漫画で言えば、今のシーンは、キラキラトーンが貼ってあるところだ。
「この変態!」
はい。殴られる。例え、多い日でも平常運転である。……まったく、俺が何をしたというのやら。
……やっぱり、何もしてないよな。
長浜のレトロモダンの街の、象徴とも言える、黒壁スクエア、及びこの街の景観は、観光地化するため、第三セクター「黒壁」が立ち上がり、昭和後期から平成初頭にかけ、街を前近代風に整備したことに始まる。
ガラス工芸品を取り入れ、長浜城や、姉川の戦いの古戦場を始め、歴史的に縁のある、ここ長浜を、立派な観光地に仕上げた。琵琶湖に面し、山々の見下ろすこの街は、観光地化するにはうってつけだったのかもしれない。
まあ、発情期真っ盛りの、高校生にとって、そんな歴史がどうとか、ガラスがどうとか言われても、いまいちピンとは来ないだろうが。……低俗な奴らめ。
「深山さーん。こっちですよー」
おっと、俺の綿貫が、呼んでるぜ。行かねば。
俺達は、ガラスのアートギャラリーへと来ていた。
「綺麗ね」
作品を見ていた佐藤が、誰に言うでもなく言った。周りには俺の他、誰もいない。
「お前の方が綺麗だぜ」
はい、棒読み。
「……あんたね」
佐藤は心底呆れた顔で、俺を見た。
「知っているか、ガラスが何でできているか」
「えっと。ダイアモンド?」
「……お前は馬鹿なのか?」
「う、うっさい」
「はあ。……広く普及しているガラスは、ソーダ石灰ガラスと言ってだな、二酸化ケイ素を主成分に、ナトリウムイオンやカルシウムイオンを含んでいる。ガラスには数種類あるんだが、どれも主な元素はケイ素、つまりシリコンだ。覚えておけ」
「っ……。偉そうに。癪に障るんですけど」
「フッ。お馬鹿さんめ。なんとでも言え」
佐藤は頬を膨らませ、いかにも不機嫌な顔をしていたが、俺は放っておいて、向こうへといった。
鴉というと、大抵は、かの黒い鳥を、連想するだろうが、人間の身近にいたせいか、様々な意味を持つ。
玄人のくろ、という音にかけ、技に熟達する者を鴉と言い、別の意味では意地汚い者も、鴉と言われる。
使われ方に大分、幅のある言葉だが、それだけ人間に馴染んだ鳥だということが分かる。
多くの生物が、ホモサピエンスの台頭により、住処を奪われ、数を減らし、少なくない種が絶滅してきたというのに、鴉という鳥ほど、人間の生活に順応した野生生物は珍しい。
だが、俺は鴉が嫌いだ。その理由が、今朝フンをひっかけられて、家に引き返すことになったから、だなんてことは説明しなくてもいいだろう。羽の色だけで嫌うような人間もいるのだから。
今朝のことを思い出して、ぶるぶると身を震わせていたところ、
「太郎見てよ。琵琶湖だよ!」
と雄清に肩を叩かれた。
神宮高校一年生一行は、その日、長浜に向かうバスに乗っていた。秀吉が築城したとされる、滋賀の長浜城の城下町に向かっていたのだ。
皆大好き、遠足である。そんな日に、悲劇に見舞われる俺は、チャップリンも仰天するほどの喜劇王になれるかもしれない。
隣に座る雄清は、窓に顔を貼り付け、外の景色を見ては興奮している。……小学生かよ。
「やっぱ、智代の服、超かわいい」
通路を挟んだ隣の席から、そんな声が聞こえてくる。見ると、いかにも女子女子している格好の、女子生徒が座っていた。……へー、この子、智代って言うんだ。今知ったね。名字なんだっけ?
遠足は例外として、服装が自由だ。女子の中には気合を入れた装いをしてきているものも多数。
何気なく、一瞥をくれるが、俺の趣味ではない。派手すぎる。あれに何が入るんだ、と思うような、小さな鞄には、ジャラジャラと、アクセサリーが付けられていた。
……どうでもいいけど。
大変ありがたいことに、自律を校訓の一つに掲げる、神宮高校の遠足では、グループ決めなんて言う、公開処刑は存在しない。文字通り、好きな人と組めるわけだ。
思うに、あれはぼっちの燻り出し作業としか思えない。
なんだよ好きな人って。なめてんのか。
封印されし、悪夢が蘇ってくる。
「ちょっと男子ぃー。深山君を仲間外れにしないの」
「そんなに言うなら、委員長の班に入れてやれよ」
「……いやー、それはさすがに無理っていうかぁー」
わお。アニメとか、漫画とかで出てきそうな会話だね。誰だよ深山って。かわいそうな奴。
……俺でした。……別に平気だし。泣いてないし。
まあ、今年のクラスには雄清がいるので、かの残酷な刑が執行されたとしても、俺は耐えられただろうが。
閑話休題。
そういうわけで、長浜城の城下町であり、レトロモダンの街とも呼ばれる、滋賀の長浜を雄清とぶらり、男旅をしている次第だ。
「なんかー、色気ないなー」
食い歩きをしていた、雄清はそんなことを言う。
「何が」
「華だよ。華がない」
「花屋ならそこにあるぞ」
「だーかーら、男二人で散歩したってつまらないじゃないか」
「俺は楽しいけどな」
「そりゃ、太郎はそうだろうさ」
なんなら、俺は一人でも楽しめる自信が、大いにある。
「お前、だからと言ってクラスの女子とつるんでいるところ、佐藤にでも見られてみろ。俺まで半殺しの目にあわされる。監督不行き届きだなんだと言って」
「太郎は僕の保護者なのかい?」
「知るか。そんなに女子が欲しいなら、佐藤に連絡すればいいだろう」
「そりゃ、できたらそうするさ。何なら綿貫さんだって呼べる。でも、クラスの子たちと一緒だろうから、迷惑はかけられないよ」
「まあ、そうか」
佐藤は、一緒に歩くような、友達もいるだろうが、綿貫はどうなのだろう。皆気後れして、話しかけにくそうな感じではある。実際、名古屋駅のデパートで出会った、グループの女子みたく、綿貫のことを快く思っていないような、奴もいるらしい。心配だ。いじめられていないだろうか。
俺のそんな心配はさておき、城でも見に行くか、という話になって、琵琶湖の湖畔に向かって歩いていた時、雄清のスマートフォンが鳴った。
「おっと、ぶるった」
とかなんとか、大げさな、反応をして、雄清はスマートフォンを取り出し(遠足では例外的に携帯電話の使用が許可されている)、電話に出た。
「あっ、もしもし。留奈? どうしたの?」
どうやら佐藤が電話を掛けてきたらしい。
電話口の向こうは、かなり大きな声で、がなり立てている。
「えっ。そんなの聞いてないけど」
『早く来なさいっ』
なんだ? 呼び出しか?
「どうした」
スマートフォンをしまった雄清に俺は尋ねた。
「……太郎。留奈から聞いてないかい」
雄清は胡乱げに俺のことを見る。
「何が」
「遠足当日は山岳部で回ろうって話」
「はあ? そんな話……そんな話……。あっ」
雄清はやれやれと溜息を吐いた。
そういえば、二、三日前、部室で俺が本を読んでいた時、佐藤が遠足の話をしていた。綿貫にも話して、部員四人で回るから、とかなんとか言っていたのだが、本を読む俺の耳には、馬耳東風。ほとんど意識に登っていなかった。
家に帰ってから、そういえば佐藤が何か言っていたな、何だっけ? と少し考えたのだが、思い出すのも、電話で確認するのも面倒になったので、大事なことなら、あとでまた言われるだろうと、そのまま放っておいたのだ。
俺の優秀な頭は、無駄なデータをすぐに排斥し、今の今まで、雄清に言われるまで、ごみ箱ファイルで、完全削除を待つまでになっていた。
二人を待たせているので、雄清からのお説教は後にして、すぐに待ち合わせ場所へと向かった。
「おそい!」
女子二人は、カフェにいた。店名はワイクロと言う。首相のお膝元、山口発の衣料品店ではない。
店の標章に、鳥の絵が使われている。
綿貫のお嬢様然とした私服は、その店のレトロな雰囲気によく似合っていて、まるで映画のワンシーンを切り取ったかのように見えた。
「まあ、そう怒るな。レトロモダンの香りを、ゆっくり楽しめたろう」
「はあ? レモンタルトなんか頼んでないわよ」
何をのたまうか。
哀しいかな、現代日本で意思疎通のできない、状況に陥るとは。……危うく失笑。
「あんたたち何やってたのよ」
笑いをこらえるのに必死な俺をよそに、佐藤は眉を吊り上げる。
「いやあ、ごめんごめん。道に迷っちゃって」
武士の情けで、雄清は俺がポカをやらかしたことを佐藤に伏せてくれるらしい。
しかし、佐藤という女は、こういう時に限って、嫌に鼻が利く。
綿貫の私服を見て、目眩いていた俺の袖を そっと、綿貫と雄清に気づかれないように、引っ張り、
「あんた、何やってんのよ」
と低い声で問い詰めてきた。とても堅気の世界の、女の子とは思えない。……怖いよ。
「……俺は何もしてないぞ」
「それが、問題でしょうが!」
「……はい、すみません」
俺はとっさに謝ってしまった。……まあ、悪いのは俺なんだが。
「つーか、こっちゃん見て、よだれ垂らすなし」
えっ、嘘。やべ。
「どうなさいました?」
綿貫が俺たちの様子を不審に思ったのか、席から立ち上がり、声をかけてきた。
「なんでもないよ、こっちゃん気にしないで」
ほう。声のトーンの違いというのは、ここまで印象を変えるのか。勉強になる。
「まったく。もっとしっかりしなさいよ。はい」
そういって佐藤は、紙袋を俺に渡してきた。
「なんだこれは?」
「罰ゲームよ。荷物持ちなさい」
畜生。この女。
「そっちのポシェットも貸せよ。それあれだろ」
「ちっ、違うし。今日はまだ。……念のために持ってきただけだし」
「我慢しなくていいぞ。……痛いから、俺に荷物持たせたいんだろ」
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「この変態!」
はい。殴られる。例え、多い日でも平常運転である。……まったく、俺が何をしたというのやら。
……やっぱり、何もしてないよな。
長浜のレトロモダンの街の、象徴とも言える、黒壁スクエア、及びこの街の景観は、観光地化するため、第三セクター「黒壁」が立ち上がり、昭和後期から平成初頭にかけ、街を前近代風に整備したことに始まる。
ガラス工芸品を取り入れ、長浜城や、姉川の戦いの古戦場を始め、歴史的に縁のある、ここ長浜を、立派な観光地に仕上げた。琵琶湖に面し、山々の見下ろすこの街は、観光地化するにはうってつけだったのかもしれない。
まあ、発情期真っ盛りの、高校生にとって、そんな歴史がどうとか、ガラスがどうとか言われても、いまいちピンとは来ないだろうが。……低俗な奴らめ。
「深山さーん。こっちですよー」
おっと、俺の綿貫が、呼んでるぜ。行かねば。
俺達は、ガラスのアートギャラリーへと来ていた。
「綺麗ね」
作品を見ていた佐藤が、誰に言うでもなく言った。周りには俺の他、誰もいない。
「お前の方が綺麗だぜ」
はい、棒読み。
「……あんたね」
佐藤は心底呆れた顔で、俺を見た。
「知っているか、ガラスが何でできているか」
「えっと。ダイアモンド?」
「……お前は馬鹿なのか?」
「う、うっさい」
「はあ。……広く普及しているガラスは、ソーダ石灰ガラスと言ってだな、二酸化ケイ素を主成分に、ナトリウムイオンやカルシウムイオンを含んでいる。ガラスには数種類あるんだが、どれも主な元素はケイ素、つまりシリコンだ。覚えておけ」
「っ……。偉そうに。癪に障るんですけど」
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