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第1章.始まり

21.理由

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 私はそんなシステムの声を聞く。
 すごい色々習得したみたい。でも今は、

 私はあの子に話しかけた。
「貴方は…あの地下室でずっと懺悔してたの?」


(うん。僕は皆んなに謝りたかったんだ。僕の勝手な行いで皆んなを死なせてしまった…許してもらおうなんて思ってなかった。でも…)

(さっき君に許すって言われて、まるで心の枷が外れた様な気持ちだった。ありがとう。)
 そう言うとこの子は上下に動く。


 礼をしたのかな?可愛い。

「いいよ、気にしないで。そうだ! まだ自己紹介がまだだったね。私の名前はスプリング。よろしくね!」

(僕の名前はソーマだよ! よろしく! スプリングさん!)
 ソーマは私の頭の周りを飛ぶ。


 私はソーマとの自己紹介を終えると、ソーマのステータスを開いた。



 名前: ソーマ
 種族: 魂
 レベル: 1
 体力: 30
 SP:100

 ステータス:
 力: 0 防御: 0 敏捷: 30    魔力: 50 幸運: 0

 状態: 普通

 親交度:5

 スキル
 【浮遊】Lv1 
 【火魔術】Lv1
 【誘引】Lv1

 加護
 魔の加護



 ソーマのステータスはベリアルと同じ魔力特化。ベリアルよりも偏っているそのステータスは私の目を留めた。


 ソーマのステータスはベリアルに似てるけど、それよりも尖っている感じだね。力と防御、幸運が0なんて…。私よりも多い。それよりも…


「ソーマ。この【浮遊】と【誘引】っていうスキルってどういうのなの?」


(あぁ。そのスキル?【浮遊】は僕の身体を浮かしているスキルで、【誘引】は相手の視線を僕に誘導する事ができるんだ。所謂、引きつけ役だね。)


 なるほど…。実はソーマってすごいパートナー?ソーマ引きつけてる隙に攻撃できたら強くない?そんな事を考えていると、






 声が聞こえた。


(まだだ…。)


 !?
 私達は周りの警戒を強める。ソーマは私と背中合わせとなって警戒する。

 今の声は何!?

 冷たい声だった。その声は私の身体中から虫が這いずり回る様な、そんな不気味さを兼ねそろえていた。



(まだ逃さん…!)
 そう言うと全方向から黒いモヤが迫る。



 その瞬間、私の影の中からドプンと言う声が聞こえた。
 狭まっていく視界の中で最後に聞こえたのは



(覚えてろ…!いつか絶対


 そこで声が途切れ、私達は影に飲み込まれた。











「ーーーーー!」


 なんだろう。誰か叫んでる?誰?



「ーーーーーーーんだい!」



 どこがで聞いた事がある様な語尾…。



「いつまで寝てるんだい!」
 目の前で私の顔に唾を飛ばして、叫んでいたのは


「あれ?ソフィアさん…。ここは。」
 私はベッドの上にいた。


(スプリングさん。大丈夫?)
 ソーマも周りを飛んでいる。


「はぁ。私の家だよ。」
 ソフィアさんはベッドの横に置いてあった椅子に腰掛ける。家の中はどこか散らかっており、ソフィアさんの額から汗が流れる。


「えっと、私は街にいて…」
 何がなんだか分からない私は言葉が詰まる。


「私はまず魔術を使ってアンタをある所へ送った。それは分かるね?」
 ソフィアさんは神妙な面持ちになって、手を組む。


「はい。何か周りが霧に覆われた街でした。でも普通の霧とは違って、木もなんか黒くて、えーと、」
 私は色々な事がありすぎて話がまとまらない。


「ゆっくりでいいよ。全部話しな。」
 ソフィアさんがそう言うと、私はゆっくりと街での出来事を話した。
 民家の家の地下での黒いモヤと出会った事。そこでその子に教えてもらって教会に行ったこと。そこで『混沌の宝玉』に触れてその街の過去の光景を見たこと。過去から戻ると黒いモヤが様子がおかしくなって私達に襲いかかってきたこと。勝ったと油断してベリアルを死なせてしまったこと。最後に【光魔術】を習得して倒した事。




「すまないね。」
 ソフィアさんはベッドで上体を起こしている私に対して、いきなり謝って頭を下げる。


「え?なんで謝るんですか?」


「…」
 何処か私に後ろめたさがあるのか、ソフィアさんの頭は中々上がることはなかった。
 数秒後、頭を上げる。


「…私の師匠には500人の弟子がいた。」
 ソフィアさんはポツリポツリと話し始める。


「私もその中の1人だったんだがね…」
 ソフィアさんの目は閉じ、附いている。


「この修業を受けて、半分が死んじまった。」


 え。


「また次の魔術を覚えた時には半分。そのまた次も半分って言った風にね。」
 ソフィアさんはその人達のことを考えているのか、虚空を見上げる。

「幻術師の元の数は他の魔術師と変わらない。だが幻術師の職業である者達は魔術を覚える際、その修行を乗り越えないと覚えれないのさ。その者に対して1番キツイ所に連れてかれる場所でね…」
 少し間を置いて言う。

「もう、人がいなくなるのは嫌なんだよ。」
 そう言うとソフィアさんは俯いた。


「それが弟子を1人だけとる理由ですか。」
 私はベッドから降りて立ち上がり、ソフィアさんのすぐ横まで行く。


「そうだ。だが今回あの子を死なせてしまった。生き返るとはいえ、悪いことをしたよ。殴るならここに頼むよ。」
 ソフィアさんは自分の頬にチョンと触れ、目を閉じる。


「…」
 私は手を握る。


(スプリングさん…)
 ソーマが戸惑いの声を上げる。おそらく止めたいんだろう、でも自分が暴走してではあるが、ベリアルを殺している。そこを気にして言い出しづらいんだろうね。私は気にしてないんだけどね。
 私はソーマを流し目で見ながら、ソフィアさんの肩に手を置く。


「…そんな事しませんよ。ベリアルが死んだのは私の油断のせい。私がもっと強かったら良かったんです。気にしないでください。」


「…いいのかい? またあの子が死ぬ様な修行をしなければならないんだよ?」
 ソフィアさんはまだ目を瞑っている。私に殴られる覚悟をしているみたいだ。


「もう死なせません!!」
 私の声は空間に響いた。


「…そうかい。」
 ソフィアさんは目を開け立ち上がり、私の横を通り過ぎてキッチンへ向かった。その顔は何処か嬉しい様な、悲しい様なそんな顔をしていた。師匠の立場としては嬉しい、けど弟子の立場となっては酷いことをさせるとでも思っているのだろうか。




 いや、今はそれよりも…




「ベリアルは生き返れるんですよね!!何処に行けばいいんですか!?」


「……はっ!」


 その声は先程の声よりも響き渡った。振り返ったソフィアさんの顔は驚愕に染められていたが、間を置いて吹き出す様に笑った。
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