いつの間にか、獣人の子供が俺の家に住み着いていた。

ゆうらしあ

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第1話 出会いⅠ

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 ーーあぁ、また無い。

 俺、ルサルカは冷蔵庫の中へと溜息を吐き捨てた。

 俺は何処にでも居る一介の冒険者である。まぁ、冒険者と言ってもこの街『ホクト』に定住して、偶に街の依頼を片付ける程度で細々と暮らしている26歳独身男な訳だが……部屋にある冷蔵庫の中、そこにはもう食料が入っていないのだ。

 俺は数日分の食べ物を買い溜めして、金が無くなるまでは依頼を受けずに、この湖のほとりにあるこの家でゆっくりと過ごしている。
 そんな訳で、食料は昨日市場で買って来たばかりなのだが……食料が無い。

 もしかしたら家に穴が開いて魔物が入り込んで来ているとか?
 いや、それだとしたら冷蔵庫の中にある食料だけが綺麗に無くなる事は無いだろう。

「……はぁ、前に1回家の中も見回ったんだけどな。もう一回見て回るか」

 俺は家の中を見て回る。
 台所の戸棚の中、リビングのテーブル下、物置にある薪の裏まで見て回るが、何の痕跡も無い。

「あ~……取り敢えずまた買い物に行くか」

『ホクト』の兵士にいつの間にか食料が無くなっているんだと告げた所で、「ルサルカさんが食べ過ぎただけじゃないですか?」と鼻で笑われるのは目に見えている。

 街までは10分程で着く事だしと、小屋から出るとある物が目に入る。

「……何でこんな所に肉が落ちてる?」

 道の真ん中には、紐で縛られたボンレスハムが丸々一塊で落ちている。拾ってみれば、俺が買い溜めした『ホクト』の街屈指の精肉店『とんがり帽子』の高級ボンレスハムである。

「落とした、のか……ん?」

 道から少し外れた場所には、ツマミにしようと買った筈のポテトが落ちている。その奥にはデザートにと買ったケーキまで落ちている始末だ。

 それはまるで道標の様で……?

「まさか?」

 草木を掻き分けて奥へと進んで行くと、そこには頭から白い獣耳を生やした少女が俺が最近買ったであろう食料達の残骸と共に眠りこけっていた。
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