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第6章 (1)アカリside
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しおりを挟む……それに。
お仕事が忙しい時期に妊娠なんて、ヴァロンはどう思うんだろう?
きっと私が妊娠していないと思ったから長期任務を決めたに違いない。
それなのに今更、赤ちゃんが出来てたなんて……。
喜んでくれるどころか、彼の負担になってしまうかも知れない。
「……なんで、っ……。
妊娠しちゃったんだろう……っ」
涙がポタポタと頬を伝う。
こんな事になるなら……。
赤ちゃんなんて、いらなかった。
不安が押し寄せて、思わず脳裏に浮かぶ気持ち。
……。
「っ……。
嘘、だよ。ごめんね」
一瞬でも赤ちゃんに当たった自分が嫌だ。
私は首を横に振りながらそっと自分のお腹に触れた。
ヴァロンの赤ちゃん。
ヴァロンと愛し合って出来た大切な命。
私がしっかりしなきゃ。
私が守ってあげなくちゃ……。
「……弱いママで、ごめんね」
私は涙を拭い、なんとか吐き気が落ち着いた時を見計らってゆっくり立ち上がるとダイニングキッチンへ足を進める。
……すると。
私の目に映ったのは、食事のテーブルの上に置かれた林檎。
お皿の上で、器用に皮を剥かれて兎の形。
「……。可愛い」
幼い時に母に作ってもらったのを思い出す。
……でも、違う。
今私にこんな事をしてくれるのは、彼しかいない。
「っ……ヴァロン」
涙が溢れてきた。
あんなに酷い事言ったのに……。
私は彼を、傷付けたのに……。
私は買い物で林檎を買ってきていた覚えなんてない。
昨日あれから、夜中に買いに行ってくれたんだ。
”気分が悪いの!もう放っておいてっ……!!”。
ベッドに閉じこもってあれ以上ヴァロンの話を聞こうとしなかった私が言った言葉。
何も食べずに寝てしまった私を心配して、彼が用意してくれた兎の形に切られた林檎。
その横には、メモ書きが添えられていた。
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