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第1章 (1)出逢い

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今思うと、不思議な出会い。


”目の前で、人が死ぬのはもう見たくない。”

その想いが、私の気持ちを変えたの。
死のうと思っていた私が、貴方を救いたいって思ったんだよね。


「っ……」

気付くと……。
私は彼の唇に自分の唇を重ねて、ゆっくりと息を吹き込んでいた。


……お願い。

息をして。
っ……お願い!

初めてで不慣れな人工呼吸。
昔本で読んだ知識を必死に思い起こしながら、何度か繰り返して、息を吹き込んだ。

すると……。


「っ……ケホッ!」

彼の身体がビクッと揺れたと思うと、ケホッケホッと咳き込み顔を歪めた。


!……意識が、もどった?


「だ、大丈夫ですかっ?」

ハッとして顔を覗き込むと、彼がゆっくりと瞳を開ける。
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