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第5章 (4)バロンの観察日記
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そんな私の涙は、彼の行動で一瞬にして引っ込むの。
「……なんで?
僕の為に作ってくれたんじゃないの?」
掴まれていた手をあっという間に引き寄せられたと思ったら……。
いつになく優しい声を響かせる彼に、気付いたら私はギュッと抱き締められていた。
一瞬、何が起きたのか分からない。
さっきまでの熱が一気に消え去って、今度はフリーズ。
そして……。
「すっごく、嬉しいんだけど……。貰っちゃ駄目なの?」
「っ……!」
くすぐったい、囁くような口調で耳元で尋ねられて、また私の熱は一気にボンッと高まる。
自分の状況を把握して、心臓が爆発しそう。
「可愛いね。猫の形のクッキーだ。
これ、アイシングクッキーって言うんだっけ?」
「え?う、うん。バロン、詳しいね」
アイシングクッキー。
粉砂糖や卵白を混ぜて作った焼き菓子を覆う甘いクリーム状のペーストで、表面をデコレーションしたクッキーの事だ。
ワタワタと慌ててしまいそうな私だったが、大好きなお菓子作りの質問には何とか答える事が出来た。
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