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第6章 (4)父を求めて-前半-
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しおりを挟む暫く、動けなかった。
『僕よりも、好き?』
確かに聞こえたその言葉が、私の心に切なく響き渡ってリピートする。
「……っ、バロンッ!」
ハッと我に返ると、彼が去った方を見つめた。
けど、バロンの姿は見えない。
慌てて辺りを見渡すが、見付からない。
「っ……。
貴方より、好きな人なんて……いないよっ」
ようやく私の口から出た小さな叫びは、ザワザワした店内にかき消されてしまう。
なんで、すぐに答えられなかったんだろう。
ヴァロンへの好きと、バロンへの好きは、意味が違うよっ!
自分の中でハッキリと分かった気持ち。
伝えたくて、伝えたくて……。
考えるより先に身体が動いてた私は、『ここ、動いちゃ駄目だからね』と言ったバロンの言葉を、破ってしまった。
その場を駆け出し、必死に店内を見渡しながら走る。
確か、バロンは洗面所に行くと言っていた。
その言葉を頼りに彷徨っているとーー。
ワアァァーーッ……!!
と言う歓声と共に、ものすごい人溜まりを見付けた。
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