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第9章 (1)最後の想い出
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しおりを挟む「受け取ってくれないの?」
ただじっと鮮やかな赤を瞳に映している私を促すように、彼が「ん?」と顔を覗き込んでくる。
私はそっと、両手で受け取った。
「……ありがとう」
お互いの気持ちを口に出来ないから、せめて態度で示してくれてるんだよね。
バロンらしい、想いの伝え方。
「……綺麗」
嬉しくて、私は笑顔で手の中のバラを見つめた。
……けど。
笑みが溢れた直後に、バロンの言った言葉が気になった。
『僕の育った地方では。
今日は男性が女性に花を贈る日なんだよね』
彼は確かに、そう言った。
……。
まさか……。
「……バロン?
貴方、もしかして……。記憶、戻ってるの?」
私はゆっくり、彼を見上げた。
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