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(2)リディアside

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【船/船室】

何でこんな事になったのかしら……。

私はさっき買った、雨に濡れた少年の髪や身体をタオルで拭きながら考えた。

白金バッジになって、初仕事で手に入れた高額の報酬。
全て、こんな子供に使ってしまった。

自分と血も繋がらない子供に。
しかも、今は子供だけど……大嫌いな男。
この少年だっていつか、男になる。


でも、この子の瞳を見ると。
そんな後悔の思いや、自分の汚い心が洗われるような気になる。

私と似た境遇でありながら、誰を恨む事ない綺麗な心が瞳を輝かせてた。


生意気そうな眼差し。
それなのに、私は少年を見ると微笑んでしまう。
もっとその瞳で貫いて欲しくて、堪らなくなる。


船室のベッドで眠る少年を、私は一晩中見ていても飽きなかった。
自分が産んであげられなかった我が子に、少年の年齢が近かったせいもあったのかも知れない。

……そっか。
そういう事、よね。

少年との出逢いに運命を感じた事を、私はそう解釈する事にした。

自分の嫌いな男も、我が子と思えば可愛く思えて当たり前。
そう自分に言い聞かせて、私は少年と生きていく事を……。決めた。


……。

翌朝。
雨上がりの空を一緒に眺めた。

虹を初めて見たのか、少年は目を見開いて驚いていた。


大好きな景色を、一緒に眺めてくれる人がいる。

それだけで、私の心は暖かくなっていた。
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