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第5章(3)紫夕side
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しおりを挟む思い出してもらう為に一緒に居た筈が、いつの間にか、"サクヤに好きになってもらう為"に頑張っている自分が居たんだ。
笑顔になってくれると嬉しくて、泣いたら慰めてやりたくて、ワガママ言われても構いたくなって……。怒ったり、拗ねたりされて困らせられる時もあるけど、今はそれすらも愛おしい。
「可愛いんだ、今のアイツが。
だから、今は……サクヤが俺の事を、俺と同じ気持ちで好きになってくれたらな、って思うよ」
サクヤからしたら俺はオッサンで、恋人や兄貴を通り越してきっと"お父さん"だろう。
懐いて、慕って、笑ってくれるのは恋愛感情じゃなくて家族愛だ。
サクラさんが居なくなってしまったし、橘は幼いサクヤに父親として認識させていなかったようだから……きっと、サクヤは父親の存在が恋しかっただけだ。
抱きついてきたり、甘えてくれるのは俺を父親みたいに見てるから……。俺は、そう思っていた。
「……相思相愛、じゃないですか」
「ん?」
「いえ、何でもありません。
羨ましいですね、そんな風に誰かを真っ直ぐに想えるなんて……」
俺の言葉を聞いた後に、そんな意味深な事を呟く朝日。
コイツは橘の一味だ。変に仲良くなったり、深入りするつもりはない。
けど、この時の朝日の憂いを帯びた瞳を見たら、俺はつい、質問を返してた。
「……アンタは?」
「え?」
「アンタは、その……大切な人とか、いねぇのか?」
初めは年齢的に「結婚は?」って聞こうと思ったが、奴の左手に視線を落とすと薬指に指ははまっていない。仕事中だから着けてない、って事もあり得たが、俺はあえて「大切な人」って言葉を使った。
すると朝日は、静かに答える。
「大好きな、初恋の人がいました。
けど、私は当時彼女よりも仕事と地位が大切で……。ただ、傷付けて、終わったんです」
そう言って、朝日は苦笑いのような、引き攣った微笑みをした。
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