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第5章(3)紫夕side
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しおりを挟む俺は奴のその表情を見て、何だか自分と重なった気がした。
失ってから気付く大切なものーー。
俺には朝日が、本当はそうしたくてそうしたのではない、って想いがある気がしたんだ。
本人にしか分からない葛藤があって、悩んで、考えて……。その時は最善の答えだと思って選んだ人生。
でも、結果が出て、後から振り返ると、色々色々……様々な想いがまた、浮かんでくるんだ。
「……大切にしてあげて下さい」
「!……え?」
「サク君の事、大切にしてあげて下さい」
気持ちが分かるような気がしながらも、上手く言葉を掛けられない俺に、朝日が言った。
「私の口からは、そうとしか言えない。サク君の健康状態を診てあげる事しか出来ません」
「……」
「これから先、サク君と居るという事は貴方にとって"普通ではない事"がたくさん起こってくるでしょう。
その様々な事態から目を逸らさず、失いたくないのなら、しっかりと向き合って下さい」
その言葉は、妙に、真剣みを帯びていて、俺はただ聞いていた。
少し前なら、「そんな事お前に言われなくても!」って、絶対に楯突いていた筈なのに……。俺はなぜか、素直に聞いてしまっていたんだ。
俺が、この言葉の本当の意味を知るのは、もう少し後の事ーー……。
「橘さんが、貴方とサク君を一緒にーー……」
ーーピリリリリ……ッ。
まるで、朝日の言葉を遮るように、通信機が鳴った。
その音に朝日はハッとして言葉を口籠ると、胸ポケットから取り出した通信機の音をピッと切って、立ち上がった。
「……。
長居しました。帰ります」
「っ、……。ああ……」
ついさっきまでの雰囲気から、一気に仕事モードに戻ったような朝日。その態度を見て、引き止めて、これ以上深く聞いてはいけない気がした。
だから朝日の言い掛けた言葉が気になったが、俺は奴を引き止めず帰したんだ。
……
…………。
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